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 「誰なんでしょう-----先輩」

 大木教授と書かれた部屋の入ると

サキは切り出した。

 「さあ。

 さっぱり。

 それより君。君も先生の」

 「はい。私も驚きました。

 私は今年の卒業生です」

 「知らなかったなあ。

 それならそうと。

 しかし変だな。

 今年というと。

 去年、君ここにいた。

 ウチの仕事柄。

 ここには何度も来ているんだが。

 見かけなかったけど」

 サキはクスリと笑みを。

 「私はここには。

 向こうの研究所の方へ

行っていましたから」

 「向こう。

 ああ、あれ」 

 iPSやらヒトゲノムやらで

数年前に造られた研究所で

研究していたらしい。

 そちらは担当外。

 どうりで見かけなかったはずだ。

 そこへ大木教授が。

 「よう。お待たせ。

 いや、まいったよ」開口一番。

 隆二もサキも腰を上げ。

 「今回もよろしくお願いします」

 「先生。お久しぶりです」

 「まあ、掛けたまえ」

 大木はドカリと腰を沈めた。

 「はい」隆二たちも。

 「今の二人。

 刑事さんたちだよ」

 「刑事」

 “なぜ、ここに警察が。

 マサカ?何か大学で不祥事でも”

 「先生どうしてですか。

 また」サキ。

 大木は一息入れた。

 「例の件だ。

 例のサソリ」

 隆二もここへ来る前に

大木に電話で

巨大サソリについてコメントしてもらおうと、

一言断っておいたのだ。

 「それで。

 そういう事か」

 「これは内緒だよ。

 口止めされてね。

 彼らに。

 今のところ極秘になっているそうだ」

 「はい」

 「そのサソリの件で

私に意見を求めてきたんだ。

 君に電話をもらってから

インターネットやテレビを見て。

 情報を集めようとしたんだがね。

 こんな事は初めてなモノで」

 「それで、先生のご意見は」

 「私も-----はっきりとしたことは

現段階では言えないんだが-----。

 本当に内緒だよ。

 まだ書かないでくれよ」

 「はい、もちろん。

 それに先生に書いていただくつもりですから」

 隆二はニコリと笑みを。

 「なるほどね」大木もホッと。続けた。

 「遺伝子の異常でも

そんなに巨大化することは考えられない。

 染色体を三倍体にするにしても

あそこまでは。

 刑事さんたちにも

そう答えたんだが」

 「はい。怪獣映画じゃあるまいし。

 現実にはそんな事

あり得るはずが」隆二。

 サキも去年までの研究生。

 不思議な面持ちで大木の表情を。

 「何せ腹部だけで3メートル。

 どう考えてもそんな事が

あり得るわけはないし-----。

 しかし、実際に。

 巨大サソリはいるわけだし。

 それにだ。

 これは極秘情報なんだが-----。

 放射能も検出されたらしい。

 それも大・量・に」

 サキも隆二も思わず吹き出した。

 「それじゃあ。せんせい。

 マサカ」 

 「サソリが放射能を浴びて

巨大化した何ておっしゃるんじゃあ」

 「笑い話にもならんよ。

 放射能を浴びて遺伝子がかね。

 生物の大きさを決める部分の遺伝子が

変化してかね。

 そんなに都合よく放射能があたって

その部分が変化するなら苦労はしないよ。

 サソリが象並みの大きさにだからね」大木。

 サソリと象。

 大きさの違いはどこから来るのだろう。

 まあ-----いいか。

 「調べた警察の方でも

まさかと思ったらしいんだが。

 念のためという事で調べたようだ。

 放射能を。

 この手の話が出て来ると

どうしてもしれ部たくなるらしい」

 「それで」サキも。

 「そうしたら、あったらしい」

 それには隆二が食いついた。

 「しかし先生。

 放射能と言っても。

 実際今まで方々の研究所で

その種の

放射線が生物に与える影響に関する実験は

行われていますが-----

巨大化したなどという例は。

 それはあくまで空想上の産物でしか」

 「はい。

 白血病やガンが増えるとか。

 奇形が増えるとかは聞いていますが」サキ。

 「私も放射能を浴びて巨大化するなんて話は-----

信じられないね。

 それで刑事さんにも巨大化と放射能とは

別じゃないかと言っておいたんだが。

 まあとにかく

そのサソリの細胞なり、

体液のサンプルさえ手に入れば、

マトモなサソリと遺伝子配列を比較して。

 そうすれば何かわかるかも知れないと言って

帰ってもらったんだがね」

 「-----」

 「どうなるかわからんが

上手くいけば手に入るかも知れない」大木。

 「それは先生」隆二。

 「それでは先生。

 先生はやはり遺伝子だと。

 原因は」サキ。

 「三倍体にすれば巨大化はしますが」

 「しかし、ねえ。

 3メートルだよ。

 そこまではねえ」大木。

 「はあ-----」

 隆二も全くわからないといった表情。

 「人間はねえ。

 みんなわからないことがあると。

 やれ放射能だ。

 遺伝子だなどというけどね。

 実際調べてみるとなかなかねえ。

 そうはならないからねえ。

 だから今度の事も-----。

 あそこまでデカくなるとなると。

 放射能とは考えられないし-----。

 遺伝子としか。

 それの放射能と言っても

大きさを決める遺伝子を変化させる。

 という事だしね」

 大木は腕組みをし

考え込んでしまった。

 「アッ!そうそう」

 思い出したようにポケットから

写真を取り出した。

 「先生。これは」

 それは紛れもなく

あの巨大サソリの死体。

 ハサミの片方と特徴的な尻尾の毒針が。

 「警察の鑑識が撮ったモノだ。

 その。ここを見てくれ」

 「食べられてますね。

 先生」サキ。

 「報道の通りだ」隆二。

 「うん。明らかにね」

 「まさかとは思いましたが。

 しかし-----こんな化け物を

食べる相手となると-----

これは」

 「ああ。大変な事になる。

 それに-----刑事さんによると-----。

 内緒だよ。

 絶対に。

 例の殺人事件。

 知ってるね」

 「例の?」隆二。

 「例のと言われますと、先生。

 あの連続殺人事件」

 「そう、あの-----。

 その犯人がこいつらしいんだ。

 子のサソリが死んでいた

すぐそばに例の穴があったらしい。

 それも五つも。

 状況も同じらしい。

 それにこれ。

 このハサミ。 

 例の殺人事件現場に残された死体には

何かに圧迫されたというか

巨大な何かにはさまれたというか。

 それによって身体が

切断されていたらしいんだ。

 鑑識でも当初、

凶器が何か特定できなかったらしいが。

 どうもこれのようなんだ。

 それの被害者の身体に

食べられたような跡もあるらしい。

 尻尾の毒針で刺された跡も」

 隆二もそれには目を通している。

 何か鋭利な?刃物で身体をバラバラにされ

身体中に刺し傷が。

 強力な酸のようなモノにより

溶かされ。

 さらに巨大な顎で

食いちぎられたような痕跡。

 熊か。

 熊ではあのようには。

 しかも犯人は一口食べただけで

獲物に興味をなくしたのか

よほどまずかったのか。

 ミンチ状になった肉を

その場に吐き捨てていくという事だ。

 このサソリの死体が出て

マスコミもその事をチラホラと。

 「ですが、先生。

 こいつが犯人としますと」

 「そうだ。

 マサカとは思うがね」

 「それで、先生。

 ご依頼した原稿の方は」

 隆二はますます乗り気になっていた。

 「現行-----。

 原稿ね」大木も困ったよう。

 「後、一週間でかね」

 「ぜひお願いしたいのですが」

 「しかし、この件に関しては何もわからんよ。

 まだ。

 調べてみなければ」

 「もちろん承知しております。

 ですから考えられる可能性とかを」

 大木はにやり。

 「わかったよ。

 できるだけ努力しよう」

 「そうですか。

 安心しました。

 先生にそう言っていただけると」

 「それでこれからどうするね」大木。

 「はい」

 “考えて”

 「現場に行ってみようかと思いますが」隆二。

 大木は目を輝かせた。

 「そうだね。

 その手があったか。

 気が付かなかったよ。

 後の予定は。

 授業はないと。

 大丈夫だな。

 私も一緒に行ってみようか」

 隆二の顔が輝いた。

 「ぜひ」

 「でも先生。

 中には入れないんじゃ」サキ。

 「何故?」

 「警察の検証が。

 それに放射能まで出て来たのでは」

 「放射能か」

 “これは完全に封鎖されているな”隆二の脳裏に。

 「心配ないよ。

 残留放射能はたいした事なかったらしい。

 調べたようだ。

 放射能と聞いてね。

 私も刑事さんに聞いたんだが。

 残留放射能。

 人体には影響のない程度らしい。

 それに現場検証ももう終わっているよ。

 きっと。

 何せ、たかがサソリの死骸一匹。

 ちょっと大きすぎるがね。

 向こうも扱いに困っているよ。

 ただ。

 例の殺人事件に関係しているらしいし。

 それの放射能があったというので

保管しているらしい」

 大木はゆっくりとした口調で話した。

 「とにかく行ってみよう。

 場所は分かるかね」

 「はい」

 そのくらいの事は下調べしてある。




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