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輸送ヘリへ乗り込む。
大急ぎでトンネルの入り口へ。
「どうすれば奴を倒せるんだ」
「さっきのアイデア。どうでしょう」隆二。
「何?」陸峰。
「空洞内に埋めるというのは」
「天井を撃ってかね」
「はい」
「いい考えかも知れんな。
とにかくトンネル内へ。
向こうの研究所へ戻ろう」
統幕会議へ報告する。
空洞を埋めるとなると-----
陸峰たちの一存ではできない。
司令部への連絡も忘れない。
許可が下りた時のため
一応用意だけはしておかなければ。
重砲部隊の準備と
全部隊の撤退。
天井を崩す作戦の提案。
対戦車ヘリを使って
ガドラに天井を撃たせることも
考えているらしい。
ガドラの足を止めるための要請も。
しかし要請された師団としても
出来ることと言えば
戦車隊に迎撃させるくらい。
「この輸送ヘリ。
大丈夫ですか。
もしガドラの眼にでも止まれば」宿付。
今までずっと黙ったままだった。
堆沢を逮捕できなかったことを気にしている。
「一瞬にして終わりでしょうな。
しかし今のガドラの位置からでは
見えないでしょう。
丘や林を盾にして
超低空飛行で帰るように
指示しておきましょう」陸峰。
他の幕僚、隊員もまじえ。
「ここからこう入って
こう行く。
行けるかな」
ドローンの撮った写真を見比べながら。
「何とか」
「そうか」
司令部への連絡も忘れない。
他の隊も大部分そうしているようだ。
「しかし-----超低空を飛んで-----
大丈夫ですか」多末。
「それは-----。
しかしガドラに発見されれば」空雲。
「もちろんそうですが」
大きな木をかすめるように。
生きた心地がしない。
もしヘリの回転翼が
風圧で舞い上がった
木の葉にでも当たれば。
ヘリのローターが破損すれば。
せめてもの救いは
第五周期の木の葉の重さのみ。
「ここからだと十分ほどですか」
ガドラは眼につく
人間が-----堆沢が造ったと思われる
構造物はすべて破壊して回っている。
大木にも隆二にもサキにも
その十分が永遠にも感じられた。
「ですが-----ここを埋めてしまうんですか」宿付。
思い出したように。
「他に方法が」陸峰。
「証拠が-----現場保存を-----
残しておいてもらわないと」
「それはありますか」隆二。
「何か出て来るかも」
「堆沢の生涯の研究ですからね」大木。
「しかし奴をあのままにしておけないでしょう。
今は奴の足を止めることが。
先決です」
「やはり無理ですか」宿付も。
ガドラの-----思い出して。
「奴がまた外へ出て
暴れるようなことになれば。
我々には打つ手がありません。
どうしてもここで決着をつけなければ」
「わかっています」
後は統幕会議の。
「それにガドラのいるあたりの天井だけを
崩すつもりですので」
「そんなにうまくいきますか」
陸峰も詰まった。
ガドラの生物レーザーにより
方々で天井が。
空洞全体が今にも崩れそう。
「それは-----」
「また掘り出すしか」崎風。
「それしかないか」陸峰。
宿付もあきらめ顔。
数機の対戦車ヘリが
ガドラの足を止めるために。
ガドラを反対方向へ誘うような飛び方をした。
ロケット弾を撃ちながら。
しかし-----あっという間に蒸発。
舞い上がった木の葉がローターに引っ掛かり-----。
ローターが千切れて飛んだ-----。
落ちていくものもいる。
「ガドラの奴」
無線による連絡を受け
陸峰が呻いた。
これ以上の損害は後の作戦に響く。
トンネルの入り口が見えて来た時には-----。
モニター室へ駆け込んだ。
第一師団師団長の岡口陸将。
それに警察庁のお偉方がいる。
「どうなっています」陸峰。
「はい。ガドラは現在ここです。
戦車隊も引き上げて来ています。
対戦車ヘリと重砲隊の
準備はすでに完了しております」師団幕僚の峰山。
統幕会議の許可もすでに出ていた。
またガドラに暴れられては。
「部隊の撤退は」
「すでにほとんどがトンネル内を外へ」
「ここのトンネルも崩れるんじゃあ」宿付。
「その可能性は充分にあります」陸峰。
「ヘリの部隊と重砲隊を残して
トンネルの外へ撤退命令が出ています。
残っているのは我々と。
戦車隊ぐらいのモノです」
陸峰たちが帰って来たと同時に
重砲隊とヘリを使って
ガドラを生き埋めにする
手はずになっていたのだが。
もう少しかかりそうだ。
ガドラはその間にもこちらへ。
引上げ中の戦車隊が発見された。
戦車砲がうなる。
しかし-----次の瞬間には生物レーザーで。
「戻れなかったか」陸峰。
「やはり車両を残してヘリで-----」峰山。
それもやっているが
ヘリが少ない。
そしてそのヘリもガドラに。
「撤退を急がせろ。
先生たちも早く。
ここも危険です」岡口。
ここから車両がトンネル内を
堆沢の家の方へ。
何台も引き上げて行く。
「研究資料の運び出しは」大木。
「それももう終わっています。
今頃は外に」
「先生。早く。
我々も」隆二。
「いや。
私はガドラの最後を
この目で見ておきたい。
君たちは外へ」
「先生がそうおっしゃるなら」
サキの顔を。
うなずき合う。
「私たちもここで」
最後の車両が外へ。
向こうへ着いたようだ。
「始めるぞ。
うまくかわせよ」岡口。
対戦車ヘリが数機。
大型のドローンも使っている。
ガドラに見つからぬように低空を。
ガドラに接近。
「ドローンをガドラの背後からあげて-----
頭の真上あたりを旋回させます。
ヘリはそれらに紛れさせて
攻撃させます。
このトンネルが崩れてはお仕舞です。
彼らも帰れません。
ですからできる限り
こちらからガドラを離すように
指示してあります」師団幕僚の峰山が。
「天井が地表まで
抜けないだろうなあ」大木。
「それは-----いくらなんでも。
数百メートルはありますから」峰山。
「ガドラを倒すのには好都合なんだが。
地上にいる人間が」岡口。
ヘリが数機舞い上がった。
ドローンも多数。
背後からガドラの頭上へ。
アクロバットそのもののように。
決して真っ直ぐなど飛びはしない。
ガドラの攻撃を誘いながら
ロケット弾を。
ドローンに紛れ
ドローンに関心を持たせるように。
ガドラがヘリをドローンをめがけ
生物レーザー。
天井部分の岩盤が溶け、崩れる。
「一度にやらなければだめです。
天井を撃てば生き埋めになる事が
ガドラにしれればもう」陸峰。
「全機、一斉にかからせろ」岡口。
重砲も天井へ向け発砲を続けている。
トンネルから少し離れたあたりから。
しかしこの空洞を埋めるほどの落盤を
重砲ではたして起こせるか。
ドローンが十数機。
それに紛れて対戦車ヘリが。
機銃を。ロケット弾が。
ガドラは怒り狂ったようにヘリを。
ドローンを。
生物レーザーで。
うまくかわすヘリもいる。
バラバラと岩が。
崩れ落ちてくる。
この近くにも生物レーザーが。
トンネル内が。
この周囲の壁がバラバラと。
「クソ。ダメだ」隆二。
「もっとドローンを接近させろ」
一機また一機と減っていく。
重砲隊もガドラに捕まった。
生物レーザー。
岩に埋まるモノもいる。
落盤は起きない。
ガドラの足元を埋めたくらい。
その程度では
ガドラが気にするはずはない。
「あれが最後か」岡口。
「最後です」峰山。
重砲隊はすでに全滅。
ドローン数機がガドラへ。
それも一瞬。
ヘリももう-----。
ガドラは満足したように周囲を。
「ダメだ」
ガドラはこちらへ向かって来る。
まるで以前から
ここを知っていたように。
堆沢の姿を。
ここから出入りするところを
見ていたのかも知れない。
急に天井が。
亀裂が走った。
地鳴りを発して地上へ。
「やった」
「ガドラの最後だ」
ガドラが埋まっていく。
何を勘違いしたのか
苦しまぎれに生物レーザーを
天井に向け吐き続けるが
火に油を注ぐようなモノ。
天井を撃てばどうなるか
知らなかったのか。
天井の崩れはもう止めようもない。
完全に埋まっていく。
やっと気づいたのか
生物レーザーを吐くのをやめたが-----。
天井が大きく崩れた。
巨大な岩の塊がガドラの頭上へ。
空洞内が震えた。
数人の自衛隊員たちがかけて来る。
岩が彼らを襲った。
重砲隊の者たちだ。
大木たちの周囲も。
「先生。もう」陸峰。
空洞内にいた者は-----。
「わかっている。
出よう」
岡口師団長たちも。
モニター室を後に。
振り返るとモニターに。
ガドラのいた所には
岩がうず高く。
空洞全体が埋もれていく。
大木たちは装甲車に。
「行くぞ」
最後の一両だ。
モニター室が崩れた。
電気も消えた。
研究所も発電所もやられたのだろう。
落盤が激しい。
すぐ後ろから落盤が迫って来る。
生きた心地がしない。
「星村さん」サキが隆二の手をしっかりと。
「危なかったなあ」隆二。
「まさに間一髪でしたな」陸峰。
トンネル内を外へ。
すでに落盤はおさまっている。
しかしまたいつ崩れるか。
外の光が見えて来た時には
本当にホッとした。
何日くらいあの中にいたのだろう。
隆二たちはジッと
トンネルの入り口を見つめ続けた。




