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 エレベーターは地下へ。

 そこは完全に破壊されている。

 「コンピューターのデーターは」大木。

 「全て消されています。

 復元も不可能です」

 分子合成装置や電子顕微鏡を見る。

 「肝心なところは外してある。

 その後で火薬を使って」

 「そうですね。

 ここにあった部分が」

 爆破と言っても小さなもの。

 機械を壊す程度。

 「しかし、先生」隆二。

 「何だね」

 「はい。

 ここにある数台の装置だけで-----

本当にあれだけの数の生物のDNAを-----

調べて合成までできるモノでしょうか」

 「私もそれを考えていた。

 これだけではとても。

 我々のDNA解析の経験からいっても

とても無理だ。

 ヒトゲノムの解析だけでも

いったい何人の学者が何年何十年かけて。

 まあ今はスピードも上がってはいるが。

 それでも」

 「とおっしゃいますと。

 他にもこれと同じような施設があると」陸峰。

 「それでわかった」宿付が。

 「本庁の方でもその購入先を

調べたのですが。

 ほとんどが市販品に

改良を加えたものという事です。

 電子顕微鏡も全て」

 「それで」

 「まだ全部ではないでしょうが。

 現在わかっているだけで

電子顕微鏡が数十台。

 それも方々から購入しています」

 「それではやはり。

 空洞内をどうしても

調べてみる必要がありますな」陸峰。

 指揮は第一師団の岡口師団長がとるらしい。

 既に部下とともに中に入っている。

 「しかし空洞内は放射能の-----。

 あのようなところではとても長時間は。

 ましてや研究などは」

 「例の脇道。先生」サキ。

 「あそこしかないか。

 堆沢は発電機があると言っていたが」

 陸峰も。隆二が撮った

スマフォの映像を思い出した。

 エレベーターでさらに地下へ。

 そこで全員、自衛隊の用意した放射線防護服を。

 防毒マスクを使用するタイプではなく。

 全身を外気から遮断し

酸素ボンベを使うタイプのモノだ。

 その上に着けたプロテクターは

堆沢のモノ。

 数は百数十ほどしかなかった。

 これがなければ中へは入れない。

 つまり一度に入れるのはこの数のみ。

 地下室からはプラスチックの成形機のようなモノと

糸を紡ぐ紡績機なども発見されている。 

 もちろん第五周期の元素を使って造るのだろう。

 壊されていて詳しいことは分からない。

 サキも多末もスマフォ片手に。

 分厚い鉄製の扉が前に。

 「実は先生」陸峰が口を切った。

 「この向こうのトンネル。

 トンネルの上からパワーシャベルを使って

今縦穴を掘っているところです。

 もうそろそろ終わるころです」

 時計を見ながら。

 時間はだいぶ経っている。

 「どうしてそんな事を」隆二。

 「ここからでは重装備を運び込めませんので」

 鉄製の扉が開かれた。

 明るい陽射しが目に入る。

 空が見える。

 「ホー」大木も感心もしきり。

 「よくこんな短時間で」

 ゆるい傾斜のスロープまでつけてある。

 自衛隊自慢の車両も数両。

 トンネルはそれが入れるほど広い。

 自然の洞窟をそのまま利用したもののようだが。

 もともと広かったのだろう。

 そして狭いところには手が加わっている。

 「警部。このトンネルの工事を-----

線路をひいた業者の方は」隆二。

 「調べてはいるんだがなかなか。

 いい加減なのも多いから。

 中小の業者の中には。

 とおの昔につぶれているようだし

その時の工事に携わった連中も

どうしているか。

 名簿も何も残っているわけもないだろうし」

 「そうですか」

 車両に分乗してトンネルを。

 軌道車は使わない。

 大型のトラックにパワーシャベルまで載せてある。

 隆二の撮った映像をもとに

必要な装備を検討したらしい。

 後で攻撃ヘリや偵察ヘリ。

 輸送ヘリも持ち込むつもりらしいが。

 ところどころトンネルの天井や壁がつかえて

入らないところがあるらしい。

 そこを広げて中へ入れる準備も進んでいる。

 しかしヘリを飛ばして大丈夫か。

 中はあのガドラやゾドスのような

怪獣の棲家。

 そのため用意された数は少ない。

 「どういう風に探すつもりですか。

 空洞内は広いですし-----

マトモに入って我々が生きて帰れる保証は。

 怪獣の巣ですから。

 せめて堆沢さんの使っていた

高圧電流を出す拳銃の弾丸でもあれば」

 「ご心配なく」陸峰がニヤリ。

 宿付に目配せを。

 「家宅捜査の時に発見した弾丸がここに。

 拳銃用とライフル用のが。

 自衛隊員も我々も

それで武装しています。

 無反動砲用、バズーカ砲用の弾丸も

何発かありました。

 ガドラやゾドスのような

大型恐竜には効果はないようですが-----

堆沢の書き残したメモによりますと-----

小型の奴を追い払うくらいは」

 「そうですか」大木。

 「無反動砲-----。

 そんなものどうやって」隆二。

 「さあ。どこかの国の横流し品を

改造したようです」

 「いったい-----どういう」言葉にならない。

 陸峰も苦笑したのみ。

 「あなた方も-----これを」

 そういうと隆二たちにピストルを。

 「それに空洞内ですが

ラジコンのドローンを使うつもりです。 

 大型のドローンを使って

内部の様子を充分に調査したうえで

入らなければ危険ですので」

 「ええ、堆沢のいそうな場所をあらかじめ。

 その上でそこへ」宿付。

 車両は例の分岐点へ。 

 「左の発電設備の方から調べます」陸峰。

 「何か手がかりがつかめるかもしれませんし。

 堆沢自身、そこに居る可能性もあります」

 十分も行っただろうか。

 トンネルが広々と開けた。

 大型の発電機らしいものが数台並んでいる。

 車が止まった。

 自衛隊員たちが降りる。

 捜査員たちも。

 「行きましょう」陸峰が。

 発電機のタービンが

うなりをあげる中を

大木たちは進んだ。

 何かわけのわからない装置もあるが

破壊されている。

 表示には元素記号がずらりと。

 「放射能は?」大木が自衛隊員に。

 「たいしてありません」

 目盛りを指しながら。

 自衛隊員がドアを開く。

 通常どこにでもある金属製のドアだ。

 「堆沢の奴。

 まさか撃って来るという事もないでしょう」大木。

 周囲の物々しさに。

 「しかし、事件が事件ですから。

 念のためです」陸峰。

 ドアを抜け中へ。

 「相当厚そうですね。

 ここのコンクリート」隆二。

 「一種の核シェルターのようなものだね。

 ここで研究していれば

放射能の影響も少ないだろう」

 何もない部屋がいくつか。

 そこを抜けると巨大な扉が。

 「開けろ」

 自衛隊員が解錠にかかる。

 音もなくそれは開いた。

 まず自衛隊員。

 そして警官。

 大木たちが続く。

 シャワー室。放射能の洗浄用だ。

 防護服用のロッカーもある。

 大木たちは全員防護服のまま進んだ。

 もう一つ大きな鉄製の扉が。

 「ここで放射能を洗い落として中へか」宿付。

 「いますかねえ。

 堆沢の奴」当庭。

 逮捕状を確認するように

宿付がポケットに手を。

 “しまった。

 防護服を着ける時に

防護服のポケットに移し忘れていた。

 これじゃあ、防護服を脱がない事には。

 仕方ないか。

 少しくらいなら放射能も”

 扉が開き中へ。

 通路になっている。

 「いったい誰がこんなモノを造ったんだ」

 とても日曜大工でできるモノじゃあない。

 「役所の建築確認も受けずに

内緒でこんな物作ってくれる業者って

そんなに多いんですか」大木。

 「我々も全てつかんでいるわけではないですが-----。

 そんなに多くはないでしょう。

 しかし危険ですよ。

 そういうのを使うのは」

 放射能もここまではほとんど届かない。

 “まあ、金持ちが核シェルターでも作ると言えば-----

ここは核シェルターそのものだから。

 しかしここは-----他人の土地だろう。

 よくまあ”

 寝室も台所もある。

 そして。

 「ダメだ」

 数十台並ぶ電子顕微鏡も分子合成装置も。

 他の何やらわからぬ装置類も

すべて破壊されている。

 「ここでDNAを」

 「そのようですね。

 よく一人でこれだけの設備を」大木も感心もしきり。

 「これで先生。

 いったいどのくらいの数の怪獣を

造ったんでしょうか」空雲。

 「それは-----この装置の性能が分からないので

何とも-----。

 しかし我々のヒトゲノム解析からしても」

 “あまりあてにはならんか”

 「そう多くは」大木。

 「コンピューターの方は」陸峰。

 そちらが専門の捜査員に。

 「ダメです。

 全て消されています。

 復元も不可能です」

 「そうか」陸峰もがっかり。

 「警部。

 部屋はくまなく捜索しましたが

堆沢はいません」警官が報告した。

 防護服で誰が誰だかよくわからないため

胸に名札がついている。

 「この研究に関する論文はなかったかね。

 書斎とか本棚とかは」大木。

 「それは今、鑑識の者が。

 ご覧になりますか」

 別の部屋へ。

 鑑識課員が数人。

 ファイルをくっている。

 「何か見つかったか」宿付。

 大木も隆二もサキもファイルを。

 多末もいる。

 「ダメだ。どれもこれも」

 例のダイジェスト版と変わらない。

 DVDのデーターも同様。

 「量も少ないです」

 「とすると他にもこのような部屋が」

 「はい。それは隣にも-----。

 それと先生、あれを」警官。

 本棚のいくつかが。

 広い部屋の壁一面に当たるくらいの量が

空になっている。

 「せれに隣の部屋の本棚は全て」

 「処分したのか」大木。

 「そのようです」

 「先生。これを」隆二。

 「何だね」

 「堆沢さんは第五周期元素のタンパク質の

ガンマー線に対する分解特性も

研究していたようです」

 「エッ?」

 「つまり-----第二周期。

 我々の身体を構成するタンパク質が

紫外線で分解するのと同じように、

第五周期のタンパク質は

どの波長の光で分解するかを」

 「そうか。その波長の光をあてれば」陸峰も。

 「しかし紫外線。

 いや、ガンマー線をあてるといっても

そんなものどうやって。

 しかも相当強力なモノを長時間」大木。

 「無理か」

 「いえ、違います。

 堆沢さんはガドラを。

 いえ、第五周期生物を完全な。

 いかなる環境ででも活動できるように

したかったようです。

 もともと第五周期の生物は

そういうモノに対して耐性があるようですが。

 それで紫外線でタンパク質が

分解するのと同じ様な事がないように。

 ガンマー線に対して保護されるような物質で 

全身を、というより個々の細胞を覆うような機構を

造るよう、DNAに組み込んだようです。

 タンパク質と言いますか

アミノ酸の分子構造もだいぶ違いますか。

 我々の身近にも生物の種類によって

極端に太陽光に弱いモノ。

 光の届かない海底や地下で

暮らしているモノの中には

そういうモノも。

 そういうモノと紫外線に強いモノとを比較して。

 それを応用したようです」

 「つまり核の放射能に対しても

事実上耐えられるわけか」海川。

 「いえ、それどころか-----核兵器の放射能は

奴にとっては心地よい太陽光のようなモノです。

 それ以上の波長のガンマー線にも

耐えられるようになっています」隆二。

 「さらに、熱に対する特性も。

 ご存知のように第二周期のタンパク質は

数十度で変質します。

 それで第五周期のタンパク質が

そのような事がないように。

 熱で変質しないように

分子構造をいじったようです。

 ガンマー線に対する耐性も上がったようです。

 それも狙ったようです。

 堆沢さん。

 それもDNAに組み込んで。

 どの程度の温度まで変質しないのかの

データーはありませんが。

 さっきの防御機構と組み合わせれば」

 「事実上、無敵なわけか」大木。

 「しかし研究室で調べた時は

我々のタンパク構造と変わらなかったはず。

 置き換わっているだけで。

 いや、サソリとは別のタンパク質を

使っているのか」

 「それでは、どうやって奴を」陸峰。

 「これはどうしても堆沢を」宿付。

 「それで、もし奴らが逃げ出した時

どうするかなどの研究はないですか」陸峰。

 「はい。それを捜しているのですが。

 今のところ」大木も。

 ファイルの目次をざっとあたっても。

 パソコンのデーターにも。

 「先生コレを見てください。

 「元素転換。

 空洞内には第五周期生物に必要な

スズ、アンチモン、テルルなどが少ないため。

 それを合成する装置」

 「はい。あの発電機の横にあった装置」

 「あれか」 

 「ですが-----こんな事。

 信じられません」

 「先生。ここにはもう」陸峰。

 「またガドラがいつ現れるかも。

 時間が」

 「そうだね」大木。

 「空洞内を調べてみませんと」

 全員同意。

 「ここの資料は全て運び出します。

 その上で」陸峰。

 ファイルも何も、

目を通したモノから段ボールに詰め込み、

既に運び出しも始まっている。

 大木たちもファイルには心が残った。

 相当な量をカメラに収めてはいたが

何せ量が多い。

 DVDのコピーは終わっている。

 DVDの内容はファイルと

ほぼ一致しているようだが

中には-----。

 「季崎君は残って残りを」

 「先生。私も中へ」サキ。

 「しかし-----危険だよ」大木。

 サキの意志は固い。

 「仕方ないか」大木。



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