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 ガドラは相模湾へ去った。

 ガドラが通過した跡は

川崎、横浜などは見る影もない。

 ビルは倒れ、火災を起こし

道路は溶け未だ高熱を発している。

 隆二たちは自衛隊のヘリで堆沢宅-----

例のガドラの産みの親宅-----

へと向かっていた。

 ガドラ騒動の後 

マスコミはどこで手に入れたのか

こぞって例のビデをを流し始めた。

 量対りょうつい大学の大木の研究室へも

押しかけてきたらしい。

 ヘリは近くの空き地へ着陸。

 堆沢邸はマスコミであふれていた。

 「大木教授だ」誰かが。

 マイクの砲列が大木に。

 「大木先生。

 今回のガドラ騒ぎに対して何か」

 「堆沢光一とは友人という事ですが」

 「あのビデオの映像は

本物なんですか」

 自衛隊員と警官がそれを押しのけ

大木たちを中へ。

 編集長の多末の姿も見える。

 何か言っているが聞こえない。

 隆二がそれを目ざとく見つけた。

 「チョットあの人」

 近くにいた自衛隊員に。

 多末が自衛隊員とともに。

 「編集長。例の件は」隆二。

 「あれだけマスコミが。

 もう関係ないだろう」多末は残念そうに。

 「警察に押収されて

出て来なくなるかと思っていたんだが」大木。

 「いえ、先生。

 そのあたりから流出したようです」多末。

 先を越されたわけだ。

 「まあとにかく」大木。

 「しかしえらいことに」多末。

 「それでこれから」隆二も。

 「それは-----それより私も」

 強引に隆二たちの中に加わろうとする。

 自衛官は妙な顔をしたが

何も言わなかった。

 隆二たちは堆沢邸へ。

 「県警の暁風ぎょうかぜです」

 なじみの宿付もいる。

 「それで中へは」隆二。

 “中”とはもちろん空洞内の事。

 「いえ、それはまだ」

 「我々にはそのような装備もありませんし。

 自衛隊の協力を得る手はずに」

 家宅捜査は今始まったばかりのようだ。

 「堆沢はいませんか」大木。

 「どうも逃げたようですな」宿付。

 「こう言ってはなんですが。

 先生がもう少し早く

我々に全てをおっしゃって下されば

堆沢の身柄を」

 「-----」大木は無言。

 「先生。これ。

 このファイル」

 隆二が例のガドラの絵入りのファイルを。

 分厚いファイル数冊が本棚に。

 隆二がそれを目ざとく見つけたのだ。

 スマフォでそれを撮影している。

 ここは堆沢の書斎だったのだろう。

 机が一つ。

 周囲にはパソコン。

 DVD。

 本で埋め尽くされていた。

 「何かわかりますか」陸幕の幕僚が。陸峰が。

 自衛隊からのお目付け役だ。

 他にも海空の幕僚が何人も。

 ビデオやカメラを手にした自衛隊員も

何人もいる。

 空洞内の調査は三自協同でするらしい。

 サキはスマフォでファイルを。

 DVDのデーターも

持参のパソコンに入れていく。

 多末も。

 「これを見てください。

 堆沢の奴」大木が陸峰たちに。

 「こんな事が」空雲。

 「堆沢は天才だ」大木。

 「先生。どういう」隆二たちも覗き込んだ。

 「彼は第二周期を第五周期に置き換えるだけでは

飽き足らず-----。

 遷移元素に」

 「どういう事ですか」

 宿付も陸峰たちもさっぱりわからない。

 「つまり-----。

 我々の身体は第二周期。

 炭素、窒素、酸素を主成分としてできています。

 それを第五周期。

 スズ、アンチモン、テルルに置き換えたのが」

 「ガドラというわけですか」宿付。

 大木はニヤリ。

 「そうです」

 「それで」陸峰。

 「堆沢はそれでは飽き足らず。

 遷移元素に。

 炭素、窒素、酸素を

例えば鉄やチタンなどの物質に

置き換える研究もしていたようです」

 「しかし、先生。

 そんな事が」隆二。

 「そうだね。

 同じ族の元素は

化学的性質が似ているから

そのまま置き換えが可能だったかもしれないが。

 それを。

 遷移元素-----金属元素-----となると

全く性質が。

 そのまま置き換えるわけには

いかないだろうに。 

 金属生物を造るつもりか」

 「全身メタリックの-----

金属人間か」空雲。

 「人造石油についてもあります」隆二。

 「人造石油。

 そんなものもうすでに」陸峰。

 「いえ。第二周期の石油ではなく

第五周期、遷移元素の。

 それを使って金属および第五周期の

高分子を合成して。

 繊維を。

 我々でいうナイロンやビニロン、プラスチックを

造るつもりのようです」

 「ハイペロン(重核子)族についても

研究していたようだ。

 いや-----我々の言うハイペロン。

 ラムダ粒子やシグマ粒子じゃないな。

 はるかに重い。

 通常の陽子や中性子よりもね。

 “超重核子”とでも言おうか。

 その超重核子の中でも

安定でしかも原子同士の結びつきが強いモノを選んで

それを使って新しい原子を造り

生物を造ると

第五周期よりも強力になる。

 しかし重くなるわけか。

 質量が電子の数千倍、数万倍もあるのか。

 その重陽子や重中性子。

 重力子、反重力子の双極子理論を使って

軽くする必要がある-----。

 全く訳が分からないな。

 研究中のようだ。

 これは。

 見てみたまえ」大木。

 隆二がファイルを横から覗き込むように。

 「物質というモノは重力子と反重力子の

双極子でできていると仮定する。

 電場における誘電体と同じように。

 そうすれば、多くの重力現象を

説明できる-----か」隆二。

 「全く-----。

 堆沢も」大木。

 「こんな説。訊いたことも」サキ。

 「誘電分極と同じように

誘電物質同士を近づけると

プラスとプラス、マイナスとマイナスは

反発しますから、当然遠ざかる。

 プラスとマイナスは距離が近くなる。

 全体として引力が生じる-----か。

 それと同じように重力子の場合も

重力子と重力子、反重力子と反重力子同士は

反発し。

 重力子と反重力子は引き合う。

 そう考えると二つの物質同士を近づけると

分極を起こし

重力子と反重力子の方向がそろい

引力が生じる-----か。

 従来の考え方では

重力物質同士は引き合い

重力物質と反重力物質とでは反発しあうと

考えられていたが

そうではなく

重力子、反重力子という微細な粒子を想定し

その重力子、反重力子が双極子状に

存在していると考える。

 ごくわずかな距離をもって。

 双極子状に」隆二。

 「仮説を立てるのは自由だろうが」大木。

 「堆沢さんはそれが引力の原因だと」サキ。

 「まだ-----研究段階らしい。

 この資料によると」

 「重力子と反重力子がもし仮に自然界に

同時に存在していたとする。

 双極子のような形でくっついた状態で。

 そうなれば少し離れれば

見た目の質量はゼロ。

 もし仮に存在していたとしても

現在の科学レベルでは

検出は難しい。

 重力推進というのもあるな」

 「本当にそんな事を考えていたのでしょうか」隆二。

 「そんな話」陸峰。

 「堆沢はこんな研究ばかり」大木。

 「現代の物理学から言っても」隆二。

 「そうだね」大木も。

 「電子と陽電子は」多末が。

 「近づけると対消滅を起こすと従来は考えられていた。

 しかし対消滅などせず

双極子の形で存在していると仮定する-----か。

 電子と陽電子の双極子か。

 そんなもの我々の周りにあったとしても

現在の我々の力では検出はできない-----か」多末。

 「重力波レーザーというのもあるな」

 「それらをDNAに組み込んでガドラを。

 いえ-----。

 恐竜全てを飛べるように

するつもりだったんでしょうか」空雲。

 ファイルには。

 「まさか」

 「いくらなんでも。

 そこまでは」

 そのような研究もしていたようだ。

 「いくら堆沢さんでも。

 そこまでは」多末。

 「-----」大木は無言。

 「それに-----。

 異種生物間の合成。

 つまりキメラを造る。

 白血球、HLAの型が合うか。

 どうすれば会うかが問題か。

 さらにそれを発展させ

生物の姿、形は何によって

決定されるのか。

 その謎を調べ想像上の生物を造る。

 意のままの姿形の生物を造る」

 それが本当にできれば世界は

キメラであふれてしまう」隆二。

 「あのゾドスがそうでは」サキ。

 「それは-----」大木もわからない。

 「これは-----早く本人を」宿付。寒気が。

 「それより先生。

 何かガドラを倒すヒントになるようなモノは。

 例えば第五周期生物に効果のあるような

毒物の合成法とか」

 陸峰たちはそのために来ていた。

 大木もその事は城岡大臣から託されていた。

 そのため警察の現場検証以前に。

 「他には-----」

 ファイルを一枚づつ。

 DVDないのデーターも。

 体内に第五または第六周期元素の

ガソリン様物質の合成機能を持たせ

それを酸素様物質とともに吐き出す。

 「怪獣が火を吐くわけか」隆二。

 「エッ」

 「いえ。なんでも」ついつい見入ってしまう。

 ファイルを次々に。

 時間をかけて。

 「ありませんねえ」

 「そうですか。

 やはり奴を倒すには

窒息を待つしかないですか」陸峰たちもがっくり。

 「これで全てですか」大木は宿付に。

 「はい、先生。全部です」

 「先生。これは」隆二。

 「これは全部-----

論文のダイジェスト版のようなモノです。

 研究論文発表用の。

 学会などで発表する場合

紙数に制限がありますので。

 肝心なところは全て-----

省略と言いますか-----されています」

 「では何もわからないと」陸峰。

 「いえ、そうでは。

 これは持ち帰って研究してみませんと。

 これをもとに。

 それもその場合-----何年かかりますか」

 「そうですね。

 例の電子顕微鏡。

 堆沢さんの作った。

 それと分子合成装置を使って」隆二。

 「それが先生。

 その装置」

 「エッ」

 「あの装置は-----」

 「まさか壊したんじゃあ」

 「いえ、我々は。

 我々が来たときには既に

破壊されていましたので」

 「そうですか」大木も愕然と。

 「ですが先生。

 堆沢さんを捜し出せれば。

 この研究の資料も全て

どこか別のところにあるのでは」隆二。

 「研究資料を全て焼却して

証拠隠滅を計ったんじゃあ。

 それで少ないのではないですか」宿付。

 「それならこんなもの残していくわけが」

 「忘れていた。とも」宿付。

 「そうとも考えられるか。

 時間がなかったのか。

 それとも残しておきたかったのか」大木。

 「あれだけの研究ですから」隆二。

 「それで君。

 堆沢の立ち回り先は」陸峰。

 「それが-----今、調べています。

 通いの家政婦にも聞いているんですが。

 堆沢本人はほとんど例の地下室に

こもりっきりだったようです。

 いつ来ても本人は姿を見せず

インターフォン越しに。

 掃除と食事の用意だけして帰ったことも

 しばしばあったと」

 「家族は-----奥さんがいたのですが

五年前に死別しています。

 子供はいません。

 他に使用人の女性がいたらしいのですが

彼女も高齢ですでに」

 「つまり身寄りはいないと」

 「はい」

 「地下の空洞に潜伏している事も」陸峰。

 「今のところはそこしか」宿付。

 大木たちの顔を見回す。

 気があせる。

 陸峰を先頭にエレベーターに乗り込んだ。




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