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03

 翌日。

 月刊科学雑誌“ATGC”編集部。

 星村隆二は某有名大学教授との

インタビュー原稿を書き上げたところだった。

 ここしばらく雑誌の締め切りに合わせ

掲載記事の依頼。

 そのあとはお決まりの

夜討ち朝駆けに追われる毎日。

 先日などは急きょ決まったインタビュー。

 雑誌の誌面の都合で

来月の予定を今月号に繰り上げ。

 そんなこんなで大童おおわらわ

 出来上がった原稿に目を通す

編集長を横目で見ながら

ホッと一息ついていた。

 「星村君。ちょっと」

 気難しそうに眉をゆがめたいつもの表情で

編集長が言った。

 目は原稿から離れていない。

 自分の席の戻っていた隆二は

素早く立ち上がった。

 足早に編集長のもとへ。

 この時の気分はいつもながら

小学生が試験の答案を返してもらうようなモノだ。

 「星村君。

 これなかなかいいよ」

 隆二はパソコンのモニターに映る

原稿をチラリと。

 「そこでだ。

 次の仕事だ」

 ニヤリと笑みを。

 いつもの事だ。

 パソコンのマウスをクリック。

 画像が数枚。

 ニュース配信サイトだ。

 「今度はこれだ」

 そこには昨日起きた

不気味な事件の事が載っていた。

 「これですか」

 星村の眼が光った。

 「しかし、これは-----。

 本当なんですか」

 隆二自身、

このサイトはチェックしている。

 そこには。

 巨大サソリ。

 路上放棄。

 付近に巨大な亀裂!

 の文字が。

 “このサイトは確か〇〇〇が配信もとで。

 こんな記事を載せるはずがないんだが。

 ニュースの配信サイトにもいろいろある。

 だがここがどうしてこんな記事を”

 そう思って首をかしげたものだが。

 しかし。

 頭の部分は何ものかに食べられたのか無く-----

残った腹部だけで3メートルあると聞けば。

 そこには人と同時に写された動画までもが。

 確かにそのくらいはある。

 「俺もそう思ってな。

 方々、当たったんだが。

 本当だそうだ。

 今朝、テレビでもやってたぞ。

 見てないのか」

 「エッ!イエ」

 “朝からそんな暇はない”

 「まあいい。

 それでだ。

 ウチでもこれを取り上げようと思う」

 「ですが-----。

 映画の撮影用の着ぐるみか何かを

誰かが落としたとかでは。

 この前もそんな話が」

 まだ信じられないといった表情の隆二。

 あの時は大変だった。

 編集長はもうノリノリで。

 「それはない。

 本物だそうだ。

 何度も確認した」編集長。 

 「腹部だけで3メートル。

 10センチの間違いじゃあ。

 どこかの国の怪獣映画じゃあるまいし、

放射能を浴びた〇○が巨大化して

人を襲うなどというネタは-----。

 ウチの扱うモノでは-----。

 最近は核実験と言っても-----たいして。

 原発から放射能が海に漏れたにしても

マサカ巨大化などと」

 「そんな心配はせんでいい。

 それのサソリは陸に棲んどるんだ。

 陸に。

 海じゃない。

 お前。

 大学は生物が専攻だろう。

 確・か・。

 そんな事もわからんのか。

 いったい大学で何をやってたんだ」

 「はい、それは。

 そのくらいは-----。

 一応、研究室では遺伝子工学を。

 人の遺伝子を主に。

 次に昆虫、クモ類の塩基配列を。

 バッタ、カマキリ、甲虫、クモ。

 それに-----サソリ。

 手当たり次第に」

 もっとも生態については

あまり良くは知らないが。

 そんなものは分からなくても-----。

 編集長の多末はまじまじと。

 一瞬の沈黙。

 「スマン」

 ペコリと頭を下げた。





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