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「先生。すみません」
隆二は大木を認めるなり頭を深々と。
「星村君か-----。
こうなってはもう仕方ないよ」
自衛隊の中央指令室。
隆二とサキは例のデーターとともに
ここへ案内されて来た。
宿付によって。
そこに大木がいた。
彼もまた。
モニター越しに首相や閣僚たちの顔も見える。
宿付も緊張気味。
自衛隊による護衛艦による防衛線は
もろくも破れ。
ガドラの上陸は目前に迫っている。
「さっそくデーターを見せてくれたまえ」
オンラインで首相たちも同じものを見られる。
要点のみを。
大木の説明も入る。
「第五周期生物」
「白亜紀あたりの恐竜のDNAを置き換えてか」
「それでその科学者。
エーーー」陸山。
「堆沢光一です」宿付。
「そう。その堆沢。
身柄は」
「今。県警が向かっております。
警視庁も」
「そうか」
「大木-----先生」今度は城岡が。
録画。そして隆二の写した
例のファイルの写真をもとに
一通り説明を終えた大木に城岡は礼を述べた。
「もう一匹。
ニュースでご存知かと思いますが
心当たりはありませんか」陸山。
「ガドラの方は海上に姿を現しましたので。
それに先日陸上でも。
しかしもう一頭の方は」
「それは、私にも」大木。
「そうですか」
「何せ相手は海中に潜ったまま
逃走しましたので
姿を確認できませんでした」
「それで見失ったのですか」大木。
「いえ、それは。
海自の対潜哨戒機がマークしています。
ご心配なく。
現在九十九里浜沖を北へ」中海。
「そうですか。
しかし思い当たると言いましても。
我々が見たのは-----データーにあった奴だけですから」
「はあ。
あのティラノサウルス、イグアノドン。
トリケラトプス、ステゴサウルス。
あとは-----。
まあいいですか。
とにかくそれだけだと」
「はい」大木。
「とすると、その中のどれかとも
考えられますか」陸山。
「同類という事も」城岡。
「ガドラが二匹いると」陸山の表情が。
「いえ。それは。
ガドラはもう一方を追っていた。
そして海中で争っていたとなると-----
同類とは」大木。
「星村君。例のファイルを」
隆二がファイルを。
コンピューターのモニターに。
何か思い当る事があるらしい。
“確か、ファイルにあったような”
隆二はファイルの画像を。
ちょうどファイルの
プリントアウトが終わったらしい。
それがここにいる全員に配られる。
首相官邸の方はまだのようだ。
全員それに目を遣る。
「例えば、ガドラは肉食恐竜ですし。
肉食恐竜同士は
現在いる肉食獣を例に考えても
そのように執拗に相手を追いかけたり
そこまで争ったりはしないはずですが。
どうでしょう」陸峰が口をはさんだ。
「すると相手は」陸山も納得したように。
「草食恐竜と考えた方が。
草食恐竜を追って
あの地下の空洞から出て来たと考えた方が。
まあ特殊な事情があれば別ですが。
何せ相手は恐竜です。
それも人間の-----」陸峰。口ごもって。
「人の手で改良がくわえられています。
確証があるわけではありませんが。
どうでしょうか。先生。
ソナーによる画像を見た限りでも
明らかに同類ではないようですし。
四足歩行のようですので」
「ンーーー。
そう言われれば-----そうも見えるが。
そう考えれば奴が出て来た理由も
説明がつきますか」陸山。
もう一方が草食かも知れないという事で
わずかながらも。
これなら対策も取りやすい。
「確かに四足歩行のようにも。
ガドラは腹をすかしているわけか」城岡。
「それならば-----例のサソリの例もあります。
エサを与えなければそのうち」
「どうやって」城岡。
「もう一頭を向こうへ追いやる」
「しかし君。
それは-----さっきガドラで。
攻撃しようものなら向かってきたじゃないか」
「はい。ガドラの場合は。
ですが相手が草食恐竜ならば」
「肉食恐竜でなければ
脅かせば逃げるとでも」
「はい」
「ちょっと待ってください」
今まで黙っていた大木が。
「まだ草食恐竜と決まったわけでは。
それの草食恐竜の中にも
攻撃すれば向かって来るモノもいます。
ファイルの中に確か-----何かあったような。
今調べてもらっています」
大木は隆二を。
全員-----。
隆二は。
「見てください」
コンピューターの画面を。
大木へ。
「何」城岡。
「ここを。
やはり肉食恐竜同士でも争うようです」
「まさか」城岡。
コンピューターの画面が職員の手を借りて
大画面に映し出される。
首相官邸を含め、全員の持つパソコン画面にも。
「草食恐竜は小さいモノが多いようです。
空洞内では。
大きいのは皆食べられて。
ですから弱い奴は
肉食でも危ないようです」
「それは-----そういう事か。
こういう議論はあまり意味がないわけか」
まあ、どちらかわからない以上は両面で。
「ガドラをエサから遠ざけるという手は」
「どうすれば」
「もう一頭の方は手探りで-----」
「それしかないか」
「一度攻撃して。その反応待ちか」小声で。
「-----」城岡。
「とにかくガドラから遠ざけなければ」
「ガドラ。
ガドラはどうする」城岡は思い出したように。
「奴は真っ直ぐ東京湾に
向かってきております。
間もなく浦賀水道に」
大画面のモニターに。
すでに東京沿岸一帯には避難勧告が出、
船舶の出入港も禁止されていた。
「どこへ来るつもりだ」隆二。
「都市部への上陸は」大木。
「我々も全力を尽くすつもりです」城岡。
「自衛隊の配備は。
何としても東京上陸だけは」
南岡陸幕長の指示で
陸幕の幕僚陸峰が説明をはじめた。
現在陸自の地対艦誘導弾部隊が
東京湾周辺に展開中との事。
ガドラが浮上し次第
三方から集中攻撃を開始する手はずになっていた。
さらに空幕の幕僚空雲も加わり、
空からは空対艦ミサイル
さらにはナパームによる攻撃を掛ける。
海自は東京湾外から。
陸山にしても
各幕僚長にしても
この攻撃に絶対の自信を持っていた。
目標を完全に包囲したうえで
圧倒的火力をもって。
東京湾に入りさえすれば。
「第五周期生物だか何だか知りませんが
お任せ下さい。
これだけの火力を集中すれば
いかなる敵でも制圧-----。
いえ、仕留められないわけはありません」
枠空空幕長。
城岡も大きくうなずいた。
「しかし-----海上では」隆二。
「ミサイルの集中攻撃でも」大木。
警察署内でテレビを。
刑事が自白を促そうと見せていたらしい。
陸山は笑みを。
「あれは-----。
先ほどとは集中の度合いが違います。
今回は奴も海へ逃げることもできませんし
さらに火力を増加してあります。
浅瀬に足を取られて
動けないガドラを
四方から集中的に攻撃するのですから」中海海幕長。
ガドラは浦賀水道を抜け湾内に。
陸山たちはしめたという表情。
マサカ自分から底なしの沼へ入ってきてくれるとは。
これでガドラも。
「それでもし-----。
もしもだよ。
うまく仕留められなかったときは」城岡も不安になったのか。
陸山もニヤリ。
「ご安心ください。
そのような事はないとは思いますが。
君」
「はい。東京、横浜、千葉などの都市部には
戦車中隊を」南岡。
「都市部での戦闘は避けたいが」城岡大臣。
「ですが、上陸されれば」
「そんな事は言っておれんか」
「それに大臣。
都市部湾岸のここ。
それとこことここには
最新鋭の自走榴弾砲部隊を。
奴がうまくこの網にかかれば-----
直接照準で徹甲弾を」陸峰。
「いかに奴でも155ミリを受ければ。
ただ-----」
「ただ。なんだね」
「数が限られていますので-----
上手くそこへ突っ込んできてくれませんと」
「そうか。それは-----」城岡は大木の顔を。
「うまくそこへ誘い込めれば」
「はい。そうなれば-----。
対戦車ヘリ等をもって
誘導いたしたいと考えております」
榴弾砲も使用するつもりだ。
充分引き付けた上で
徹甲弾を。
しかし気になるのは奴の体高だ。
何メートルあるのか。
先日現れた時のビデオを参考にすると
〇〇メートルは。
そうすると視水平は三十キロから四十キロに及ぶ。
そこまで見渡せるわけだ。
榴弾砲の射程とあまり。
丘か何かの遮蔽物の影から撃つしかない。
まだ不安気な大木たち。
「先生。
全て我々にお任せ下さい。
何汚。恐竜もどきに。
最新の近代兵器で武装した我々が-----。
5メートル、6メートルもある
象やワニでもライフル一発で
仕留められるんですから。
奴がいかに大きくても所詮は生き物。
ご心配には及びませんよ」陸山。
“サソリの事は”隆二。
しかし言わなかった。




