第5話:お嬢様の能力
どもどもべべでございます!
ジャリボーイズvsお嬢様、果たしてどのような結果になるのでしょうか!
すでに読者の方からもボーイズに100のベットが入っております、さぁ得をできるか!?
ベネエッタ・ローゼンブルグを一言で表すならば。
それは、『傑物』である。
「はぁっ、はぁっ、へへっ」
「ふぅ、んっ、よっし!」
浅く早い吐息を漏らし、2人の少年が物陰に隠れる。
村の東に位置する森の手前、木こりの爺様が管理している小屋の裏手だ。
少年らの肌はわずかに高揚し、冬特有のそれとは別に疾走したことによる赤み刺しているのが目に見えるだろう。
彼らの胸には、例年のやり取りにより芽生えたある種の達成感で満ちていた。
「見た? 見た? ベネエッタお嬢のあの顔!」
「あぁっ、相変わらずいいリアクションするよなっ」
「あれ見れただけでこの作戦を決行した価値があるぜ!」
興奮冷めやらぬといった様子で語り合う少年たち。
いろんな意味で倒錯しているが、これが彼らにとってのコミュニケーションであり、やめるにやめれない恒例行事なのであった。
「けど、去年みたいに捕まったらと思うとこええよな……」
「ばっか、だから1年準備して隠れ家作ったんだろ!」
「あぁ……けど、まだここからだと距離がある。なんとか見つかんないように逃げないと」
そんな会話を続ける少年達。
そこに……
がさり
「「!?」」
音がした。
草木をかき分け、擦れた音色。
がさり、がさりと、響いてくる。
「ふふ……ふふふ……」
「「~~~~~!?」」
高い、薄い、漏れるような笑い声。
いつもの高笑いとはまったく違うが、その声を忘れる事など永遠にないであろう、極上の鈴の音だ。
(な、なんで、なんでここまで? まっすぐ俺たちを追ってきた!?)
(静かにしろ馬鹿! 聞こえたら終わりだぞ!)
息を殺し、身を縮める彼ら。
そんな状態の彼らを探し、がさり、がさりと音は響く。
「ふふふ……犯行からの逃走、そして散りばめた痕跡のダミー。ワタクシを撹乱して時間を稼ぎ、帰らざるを得ない時間まで生き延びようとする手腕はお見事ですわ……また腕を上げましたわねぇ?」
「っ、っ」
「ふぅ…! ふぅっ…!」
「しかし……残念ながら、爪が甘いですわ。貴方達は、ワタクシを警戒するあまり例年で使ってきた逃走経路、隠れ場所を使っていないというのはお見通しでしてよ? そこを候補から外せば、ふふ、この通り。わりとあっさり答えを導き出す事ができますの」
ベネエッタ・ローゼンブルグを傑物と称する理由。
その要素の一つが、これ。
(な、んで、そんな事がわかるんだ? なんで!?)
(い、いや、そんなのわかる訳ない! 現にマルクは前から使ってる隠れ場に行ってたんだ! ハッタリだ!)
2人の内、1人は押さえ込んだ不安。
だが、もう1人は。
「そして、ここに貴方方がいるならば、もう1つか2つくらいはダミーを置くでしょうね? 例えば……ほうら、小屋の軒下に丸めた服。流石に着れなくなった物を親御さんから貰ったんですのね?」
「っ、っ!」
(お、落ち着け、落ち着けって! これは……!)
「あ、と、何があるかしら? ……あぁ、見つけましたわ~♪ 粘土地に足跡だなんて、ワタクシを森に誘っていますのね? ふふふ、イケナイ子達」
(これは、ベネエッタお嬢の罠なんだよ!!)
ガン!
このタイミングで、ベネエッタは小屋の壁を殴る。
そして、ついに
「ひぅ」
盛れて、しまった。
「みぃつけた」
他者の心理を煽る、この口。
いるかいないかもわからぬ相手をあぶり出す手腕。
傑物の片鱗。その一つ。
「「う、うわぁぁぁ!?」」
「オォーーーーッホッホッホ!! さぁ観念なさい! まずは貴方達をお縄にして差し上げましてよ!」
こうして、少年達はあっさりと捕縛された。
後に彼らは、「いやぁ、お嬢から体に縄をまかれるって……なんかその、あれですよね」と語っている。
うん、本当に、彼らは倒錯してしまっているのかも知れない。