裁判から始まる殺戮劇
残酷描写にご注意下さい。
そこは王城の一角。
普段は多数の貴族が集う舞踏会などに使われる部屋。その部屋の中心部に今、ポルポト侯爵令嬢イミーナは立っていた。
その服装は普段着ているような煌びやかなドレスとは異なり、薄汚れたボロキレ。黄金と讃えられた金髪は依然としてその輝きを失っていないが、薄汚れた服装との対比のせいで一層哀れさを増している。その華奢で握れば折れそうな手には魔封じの錠がはめられ、まるで罪人のよう。
否。
まさにこの時イミーナは、罪人としてこの場に立たされていた。
「……かかる理由により当法廷は、前述のハンブルク男爵令嬢アテナへの暴力行為すべてを事実と認定。ポルポト侯爵家、第二公女イミーナを有罪とする。また、アテナ嬢が王太子の婚約者であることを鑑みれば、彼女への暴力行為は王権への挑戦に他ならない。よって当法廷は、国王陛下の名のもとに、ポルポト侯爵家に反逆罪を適用。ポルポト侯爵家は御取り潰しとし、イミーナ及びその三親等以内の親族を死刑とする」
ようやく、裁判官が退屈な判決文を読み終わる。
まったく。愚図な男達ときたら……。たったそれだけのことを言うのに、なぜこうもまどろこっしくだらダラダラと判決文とやらを読むのか。
イミーナは内心でそう愚痴る。
「イミーナよ。何か申し開きはあるか?」
裁判の終わり。裁判官がおまけのように付け加える。
やれやれ。
申し開きも何も、最初からこちらの話を聞く気はないくせに。判決はすでに出ていることからも、それは明らかだ。
まあ、でも、相手の話を聞く気がないのはこちらも似たようなものだ。
大変好都合なことに、最後の判決文だけでも聞いて行こうと思った物見高いバカ貴族たちが、ワラワラワラワラと大勢集まって来ている。バカな獲物たちだ。退屈な話を延々と聞き続けていた甲斐があったというもの。
イミーナは軽く嘆息すると、口を開く。
「そうね。それじゃあ、あたしの話をするわ。あんた達はこれでお終い。だって、ここで死ぬんだから」
そう言うやイミーナは愛用の剣を呼び出す。
「おいで。ガルガンチュア」
その呼び声に応えるようにイミーナの眼前で空間が歪み、魔剣が姿を現す。
「なっ!?」
「ばかな!!」
「どうなっている?! 魔封じの手錠がはまっているんだぞ!!」
やれやれ。馬鹿だバカだとは思っていたけれども、限度を超えてバカな連中だ。
魔封じの手錠? それがなんだと? あれはあくまでも、手錠をはめている人間が魔法を使えないようにする為の道具だ。ガルガンチュアのように自分の意思で使用者の元へと転移できるタイプの魔法具には、まるで意味がない。
そうしてこの種の拘束具は内部からの破壊には強くできている一方で、外部からの干渉には弱い。
ガチャン!
ガルガンチュアの剣先を軽く当てて手錠を破壊すると、依然混乱から立ち直っていない手近な衛兵へと跳躍。
「なっ?」
突然の事態に狼狽するその衛兵の首をスポンと切り落とす。返す刀。その横の兵隊も切り伏せる。
「へ?」
茫然とした表情を浮かべたまま、その兵隊の上半身は床の絨毯へと落下する。
「あはははははははははははははは! 何それ? 自分が死んだことにも気づかなかったんだ!」
その余りにも間抜けな表情に笑いが止まらない。
これで兵士?
チャンチャラ可笑しい。その辺の平民だってもっとマシな動きを見せるだろう。
「ジョージィィィィ!!」
一人の衛兵が剣を抜いてこちらへと突っかかってくる。どうやら先程切り殺した兵士のうちのどちらかが彼の友人だったのだろう。何だか無茶苦茶に殺気だっている。
「でも」
それだけじゃダメ。その技量は余りにもお粗末。あたしの遊び相手としては全く不足。さっさとその間抜け兵の首を切り落とす。
「ぐっ!?」
その兵士の首が絨毯へと落下するころには、次の獲物へと向かう。三人程が固まっていた衛兵だ。ガルガンチュアを振るい魔刃を飛ばすと、ちょっと加減を間違えた。衛兵ごと、その後ろで裁判劇を見物していた貴族たちを薙ぎ払う。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
右腕をすっぽりと切断された男性が絶叫を上げる。
やれやれ。
腕を一本なくしたぐらいで大袈裟な……。あんたの娘のエミリアなんて、まだ16歳の女の子だというのに絶叫も上げないでいるわよ。首が半分取れてるのに……。少しは娘を見習って静かにしなさい。
という訳で、絶叫男に追撃を掛ける。スポッという子気味良い音と共に男は静かになる。
「きゃあああああああああああああああああ!!!」
「たすけてくれええええええええええええええ!!!」
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「えいへーい!! えいへーい!!」
「いやああああああああああああああああああああ!!」
バカな連中はようやく現実に追いついてきたらしい。今更になって騒ぎ始める。
扉から逃げ出そうとする貴族と入ってこようとする衛兵の間で、ドア周辺は大混乱だ。
「邪魔だぁぁ!! そこをどけぇぇ!! 儂は公爵だぞ!!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「そっちこそどかんかぁ!!」
あはははははははははは。
馬鹿な連中。逃がさないわよ? 折角の獲物だ。
再度ガルガンチュアを振り、魔刃を飛ばす。目標は中央の大扉。今度はもっと魔力を込め、二度三度と連続して放つ。
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」
「そんなああああああああああああああああああぁ!!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
阿鼻叫喚。地獄絵図だ。
あはははははははははは! 何て楽しいんだろう!
首をちょん切られた貴婦人。内臓がはみ出している老貴族。甲冑ごと上半身と下半身を分断された近衛兵。
あはははははははははは!! レティシアの奴なんて最高! 王立学園随一の巨乳を自慢していた彼女のオッパイは、運悪くそこだけ被弾。上下に分離してる。涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、うずくまる。
だけど、レティー? それは駄目よ?
何と言っても、周りの群衆は大混乱の真っ最中なのだ。そんなところでうずくまったりしたら? 踏みつぶされちゃうわよ?
「ギャ!!」
案の定、レティシアは踏まれた。それも、巨大な贅肉で身を包んだ豚貴族によって。彼女の脳漿は、踏みつぶされて周囲に散らばる。彼女の美しいプラチナブロンドの髪と絡み合って、幻想的な光景だ。
何て綺麗なのかしら? 時間が止まればいいのに……。
だけどそれは叶わぬ願い。レティシアの遺体は次々と他の貴族や衛兵に踏みつぶされ、泥に汚れてしまう。
「あ~ぁ! 残念!」
だけど、まあ、まだまだ獲物には事欠かない。何と言ってもこの部屋は、獲物で満ち溢れているのだ。
あたしは大扉前で大混乱中の群衆の中へと跳躍するや、手近なところにいた令嬢の首を切り落とす。ついでに、そのままの勢いで一回転。周囲にいた五人程の男女を適当に切断。
「がああああああああああああ!!」
適当に剣を振るったせいか、五人全員は殺せなかった模様。一人だけ生き残った奴がいて、そいつははみ出ている内臓を抑えて蹲る。
あれ? この男?
「くすくすくす。無様な姿ね? 王太子殿下?」
あたしはそう、優しく声を掛ける。
完全に思いつきで書いたでゴンス。更新ペースには、一切期待できないゴンス。
尚、 そもそもこんな駄作に読者なんていないなどと、本当のことを言うとは禁止でお願いします……