3話と1/2 会社では
田中麗香はその日、出勤しなかった。
その空いた机を、眺めてる男がいた。
井中哲次郎という男である。
井中は、8カ月前に麗香にプロポーズをしてフラれている。
井中は机を眺めながらその記憶を思い出していた。
◆
とあるファミレスの店内
井中がテーブルに座って待っていた。田中麗香を待っていたのだ。
井中が麗香に頼み込み、ようやく会ってくれると言って指定してきた場所はこのファミレスだった。
そこに麗香が現れた。
「こんにちわ、井中さん。」
「あ、田中さん。こちらの席へ。」
「いえ、ちょっと用事が出来てしまったので、申し訳ありませんがこれで失礼します。」
え?帰っちゃうの?と井中は思った。
「少しでいいので、お願いします。」
「外で、友人が待ってますので。」
外を見ると、井中が知っている会社の同僚の女性が立っていた。
たぶん同僚の女性は、麗香がもしもの時、助けてもらうためであろう。
井中は気持ちを伝えたかった。
そう、プロポーズしようとあれこれ考えていた。
しかし、ろくに会ってくれなかったのでどうしょうもなかった。
井中は焦った。頭がもうパンク寸前だった。
そして、言ってしまった。
「待ってくれ、俺、キミが好きなんだ。付き合ってくれ。」
麗香は返事をした。
「ごめんなさい。」
と麗香は、店を出て行った。
井中は止めることが出来なかった。
◆
『麗香さん無断欠勤か、どうしちゃったんだろう?』と未練がましく井中は眺めていた。