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「この変態を殺すことはできないのか!?」「はい。できません。」

201☓年△月〇日、俺の兄貴が死んだ。享年三十八歳。死因は交通事故。


うちは早くに両親を亡くし、その時二十四歳の兄貴に育ててもらった。


…十四年も前の話だ。


たった一人の肉親を亡くした俺は葬式の時も泣きじゃくるだけだった。


何もしてやれなかった。何もできなかった。


相手も死んでしまうほどの事故だったらしい。


広い家を電気もつけずに歩き回る。暗い廊下。


…いつもなら居間から俺を夕食に呼ぶ声が聞こえるはずだった。


兄貴の遺骨のある部屋の前を通る。中から兄貴と女の声が聞こえてきた。


…まさか。


兄貴に会えると思った俺はふすまを開ける。


すると中にいたのは…


半透明になった兄貴の頭を鎌で刈り取る、黒い布を纏った少女だった。

――――――――――――――――――

「…しまった。」


少女はそう言う。長い緋色の髪の下の灰色の瞳が俺を映す。


「しっ死神って奴か?もしかして!?」


声が裏返る。実際、半透明の兄貴は首を刈られ消えてしまった。


「…悪いな。人間。死神(わたしたち)の姿を見たものは…」


彼女は鎌を持ち直して言った。


「殺すのが掟だ。」


一気に間合いをこちらに詰められる。彼女は鎌を振り上げる。


…死にたくない。


…彼女の鎌が俺の首を刈る前に、彼女は俺を巻き込み派手にすっ転んだ。

―――――――――――――――――――

もにゃっという感触。あれこの死神って…


「意外とあるんだな…」


俺の上に乗っかっている死神は顔を真っ赤にし「殺す!絶対輪廻の輪に入れてやる!」と言いながら吹っ飛んだ鎌を拾い、切りかかってくる。それを避けながら必死に「わざとじゃないから!マジでごめんって!」と謝る。さっきの緊張感が嘘の様だ。まあ今も必死だが。


「うるさい!絶対に殺…うわっ!」


また死神は転び、今度は頭を打って意識を失った。


「…え?」

―――――――――――――――――――

「…目が覚めたか?」

「此処は…!貴様ぁ!ぶっ殺す!」


顔を真っ赤にし襲いかかってこようとする死神。だが安心!気絶中にロープで柱に巻きつけといたからね!


「気絶中にえっちなことはしてませんよ。ただパンツ見ただけ。」

「してるじゃないか!」

「…くまパン…ぷぷっ。」

「笑うなぁぁぁ!」


どう見ても俺とタメくらいにしか見えないが…ほんとに死神…か。あの光景夢じゃねーし。


「貴様を殺そうとすると…どうも邪魔が入るな…」

「邪魔っつーかお前のミス…すみません。」


凄い睨まれた。可愛い顔なのに怖い。そう思ってると彼女は何とかポケットからスマホみたいなのを取り出しわずかに動く両手で操作。そして俺の写真を撮り、検索しだす。


「…お前!」


え?何々?


「こんな人間が…いやまさか…。」

「どったの?」


彼女の持つ携帯端末を覗き込む。するとそこには…


火宮(ひのみや) (そう)

年齢15

性別男

現在の死亡確率0%

他者または死人、死神に殺される確率0%

寿命までに死ぬ確率0.1%


と、書かれていた。


「お前を私は殺せない…のか?」


彼女は驚愕したように言う…ん?待てよ?


「掟では俺を殺さなくちゃいけない。でも殺せないという事は…」

「しばらくここでお前を殺す機会を見つけなければならないという事だな。」

「同居!?マジで!?」

「死神と同居が嬉しいのか!?」

「可愛い女の子だからね!野郎だったら殺られる前に殺ってる。」


少し顔を赤くして「そ、そうか…」と言うとそっぽを向く死神さん。そうだ!


「名前を教えてくれよ!」

「名前だと?」

「おう!俺の名前は…って知ってるか。」

「だいたいお前、お前の兄貴の魂をあの世に送った奴を…」

「大丈夫。兄貴の言葉。聞いたからさ。」

「…」


彼女は押し黙る。遺骨のある部屋で聞いた会話。兄貴は言ってた。


『それが仕事なんですよね。お願いします。大丈夫。あいつならきっと一人でもやっていける。」

『だが…最期に会う事だけならお前に許されているぞ?』

『いいです。あいつに会うと…逝く決心が鈍る。』


彼女は言った。


「あんなに弟思いの人間は初めて見た。すまない。無理にでもお前に会わせるべきだった。」

「いいよ。後悔は。」


優しく彼女の髪を撫でおろす。そして彼女のロープを外し言う。


「これから死ぬまで一人ぼっちじゃなくて済むからさ。」


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