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48話 創造、或いは破壊

ついに枢密院との対決 (たいけつかなぁ)です! 


 「まちやがれ!」


 後方からぼくを追う声が聞こえる。もちろん待つわけがない。そんなかなとしてたら追いつかれちゃう。


 ぼくは今走っていた。それも全速力で、1人乗りの蹄を酷使しして無理矢理二人乗りして走っていた。道路交通法違反なんてゆうレベルじゃない。危ない。


 でも、ぼくは止まるわけにはいかない、ぼくはなんだか今にもたおれちゃいそうな蹄にまたがりながら、ぼくの前に、気絶させて載せているお姫様に目を向けた。


 サウルは彼女の能力を強く望んでいる。だからこそ、ぼくは彼女を連れて行く必要がある。


 ぼくはそのとき、大真面目にそんなことを考えていた。ぼくがよろしく喜ばせたい人はとっくにいしになってるだなんて知らずに。







 「マンティス!」


 しろについたぼくを待っていたのは、懐かしいゴーレムだった。精霊である二人を除けば、間違いなくぼくが始めに作り出した純正のゴーレムだ。


 彼はどうやらかなり切羽詰まった顔をして、ぼくに駆け寄ってきた。


 「大変です、主よ……パピヨンが裏切り、グラスホッパーから[後継者]の証が奪われました、それに魔蔵様とも連絡がつきません!」


 なんだって?!


 グラスホッパーの[後継者]の赤シャツまさることながら、魔蔵との連絡がつかないだなんて、おかしい、ぼくの創造したゴーレムは魔力さえあれば、お互いにはななせるはずなのだ。


 「ッ――……! 今はそんなことは気にしてられない! 今すぐ、サウルと……」


 ぼくがそういった瞬間、マンティスの顔に狼狽が広がったのをぼくは見逃さなかった。


 まさか……!


 「サウルにも何かおきたっていうの!?」


 ぼくが、すがるような気持ちでマンティスにといつめた、その瞬間。


 「救う手だては、たった一つですよ、きよと様」


 銀の仮面……それも、狼をかたどった、ぼくが属する枢密院のトップに君臨する最高顧問官だ。


 枢密院議員の中では、直接皇帝陛下との会合と意見が許されている唯一の立場の存在だ。


 だが彼は殆ど枢密院の部屋から外に出ない。ぼくだって実際顔を合わせるのはあまりに久しぶりだ。


 それなのに、どうして……?


 しかし、いまのぼくにそんなことを考えている暇はなかった。


 「ほ!本当ですか……?!」


 ぼくは、マンティスにすがっていた指をほどくと、最高顧問官に向かいなおった。


 こんどはすがりつくことはなかったとはいえ、救いを求める事は変わりがなかった。


 「サウル殿と、ご親友のシナ殿とともに、石像となってしまい、現在はオルゴルス邸の最奥、光の間に安置してあります。何故、お二人が石像になってしまったかわかりますか?」


 銀の狼の仮面のしたから、萌黄色の光がぼくを覗き込む。ぼくは施されるまま、首を横に振った。


 後ろで、マンティスがため息をはく気配がする。


 「それは、全てあなたに原因があるんですよ、土の勇者、きよと」


 ッ……ど、どういうこと?


 「あなたが放出した土の魔力が、あなたがサウル殿を思うあまり、彼のことを石づけにしてしまったのです」


 そ、そんな……!


 「しかし、さっきもいったとおり、もちろん元に戻す方法はあります。それは、その女です」


 銀狼のおじいちゃんはぼくとともに蹄にのり眠るカタリナさんを不躾に指差して、ぼくにかたる。


 「その女こそは、130年前の忌まわしき、全ての始まりとなった戦争の際、召喚された紫瞳の獅子王の子孫! この現代において、唯一彼の用いた魔力をすべて霧散させる力の持ち主なのです!」


 そ、そんなばかな!


 確かに、ぼくはこれまでのことで彼女に魔力を無効にする力があることはわかっていたけど、紫瞳の獅子王の子孫度なんて初耳だ!


 獅子王の話はサウルから聞かされていたからよく覚えている。


 その彼も歴代の勇者に習って、異世界より召喚され、魔道4属性をただ一人で使いこなした歴代最強の勇者にして、人間たちの最大の英雄だ。


  「さの通りでございます! そして、その紫瞳の獅子王が行った、最大にして最悪の功績とは、彼の持つ自らの魔力を分割し、魔道書に込めたことだったのです!」


 まさか、その魔道書が今、ぼくらが使う『究極の魔道書』だっていうの?!


 え、いや、ちょっとまって、でもぼくがこの穢土の祭祀書をもらった時は、土の魔道の一族である、枢密院に受け継がれている魔道書だって!?


 「えて……その、魔道書の最後のページ、我々が人間たちの守護者たる精霊の目すら誤魔化して、改編した魔術があるのです」


 そ、そんな……それじゃあ、魔道書っていうのは、本来人間たちが持つべきものって事じゃないか!


 それなのに、何故か魔族が持っているし、精霊っていうのも、その話を聞くに、獅子王の分身ということなの?


 ぼくの内心の疑問を再び汲み取ってか、銀狼のおじいちゃんは目元に笑みを浮かべ再びおしえてくれる。


 何故かしら今日の彼は饒舌だ。


 「ふふ、獅子王は確かに自らの魔力を魔道者に込め、それが現在の『究極の魔道書 』となりました。しかし、その時にはまだ精霊はいなかったのです」


 精霊は、いなかった?


 「自らが力尽きる寸前、この世界の人間を愛していた彼は、後に再び来る後続の勇者達の為に、作り上げたのが、魔道書です……でも、きよとよ、あなたは本当に勇者がたった一人で戦っていたとお思いですか?」


 え……? 紫瞳の獅子王には、仲間がいたっていうこと?


 「その通り、彼らは元々この世界の存在で、獅子王の人柄に惚れ込んで、彼について行った者たちです」


 ちょっと、まってよ……それって


 「彼らは、獅子王が死ぬと同時に、自らの魂に鍵を掛けたのです……守護と眠りの鍵……そう。魂を魔道書に封印するためにね」


 魔蔵や土蔵は、獅子王の仲間だったて事じゃないか! なんだって、魔族の味方のぼくの仲間なわかやってるんだ!


 「魔蔵様は、この世界において、最も早くに契約者を見つけられました……」


 その時、ぼくの後ろから聞こえたのはため息混じりのマンティスの声だった。


 「私も、あの方々の苦悩の記憶を魔道者を通し理解しています。それは、あの方々が、とても心優しい方だということに起因するのです」


 「左様。火の精霊“ナギ”魔族の軍に家族を殺され、空の精霊“ラキ”は獅子王に救われた人の子、水の精霊“マキ”は、当時、神を奉る巫女で、“ラキ”とは犬猿の仲……そして、ドグラマグラは、元々は力の強い魔族の魔道士でえりました」


 魔蔵た土蔵が、一人の魔道士だった……?


 「はい。しかし魔蔵様はとてもお優しく、無理矢理この世界の争いごとに巻き込まれた獅子王にいたく同情的でした」


 「その同情故、獅子王が死んだ後、自らの魂を二つに分け、自ら魔道書を守護する精霊となり、己の息子にその魔道書を管理させた」


 ッ――!?


 でも……でも! だとしても、そしたら『焰薙経典議』や『色即是空』がこの帝国領内に残るだなんて……


 「その子孫が、我々、枢密院の一族なのです……そして、我ら土の一族が子孫ドグラマグラの遺志を継いで完成させた絶対の魔術……それが、『寂光浄土』なのです!」


 とつぜん、大声を張り上げ、ぼくに力説をかいしてきたかと思うと、銀狼のおじいちゃんは、仮面ごしにもわかる爛々と狂気の煌めく目で、ぼくの肩を痛いほどつかんできた。


 「それによって、我々の理想世界……浄土がこの世界に光臨されるのですよ、浄土(きよと)


 理想世界……


 「サウルは、絶対に元に戻るの?」


 「ええもちろんです。サウル殿が望んだこともまた、『寂光浄土』の光臨なのですよ……すべて叶います。その女の力さえあれば」


 そうか……


 それなら、もうぼくの心は決まった。


 元々、カタリナさんを連れてきたのも、銀狼のおじいちゃんがサウルが喜ぶからだと言ってたからだ。


 「わかったよ……最高顧問官、ぼくを光の間に連れて行って、そして、サウルを助けさせてください」


 しかし、ぼくの覚悟に水をさす音が後方から遠くなりわかった。


 突然の轟音。それは森の木々が突然の炎に焼き尽くされた故に倒れた音だ。


 しかし山火事になる様子はまるでなく、それどころか、炎の向こう側から声が聞こえる。


 「てめぇ!やっと追いついたぞ! カタリナをかいしやがれ!」


 火の勇者……1人か?


 っち、ぼくは急いでやらなくちゃいけないことができたっていうのに。


 「……マンティス、わかってるよね」


 「承知、蟷螂(マンティス)この命にかえてもこの道を守り通しましょう」


 「くそふざけんな!」


 瞬間、盛り上がる土の塊が、もう一体の蹄を作り出し、銀狼のおじいちゃんをその背に載せる。


 ここからサウルのお屋敷まで、蹄に乗れば10ほどのはずだ。


 今は、このおしいちゃんの口車に、乗ってあげる。

次回はパピヨンとマンティスとドグラマグラ君'sです 多分

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