15話 魔導、或いは仮面
サウルちゃん家に突入! しかし、待ち受けているのは恐るべき敵だった! え、君もポッと出のキャラだよね、なに活躍してんの⁈((((;゜Д゜)))))))
ぼくに……何ができるかなんて、わからない。けど……だけど……!!
「あの子は……皇帝陛下はぼくが守って見せる!」
いつだったか、だれにでも無くつぶやいた、誓った言葉が、ぼく自身に重くのしかかる。
そう……あの言葉は、他のだれでもない、ぼくに……ぼく自身に誓ったものだ。
だからこそ……ぼくは、決してこの決意を違えるような事は、絶対にしない……!
「サウル……ここは?」
黄金の宮殿……。そう呼ぶにふさわしいだろう煌びやかな建物がぼくの目の前にそびえ立つ。
ここは帝都の、皇宮を中心としてみた東側。朝日の昇る向きにたつ宮殿の一つだ。
「ここは、オレの実家――シュテルンの宮殿だ。今の時間だと、父上は居無いが、使用人がな……」
そういって、眉を顰めるサウル。
夕方の茜色に染まるサウルの金髪はよくにあっていたが、どうしても苦虫を噛み潰したようなその顔だけは、ぼくはみたくはなかった。
ひっそりとした廊下を、ぼくとサウルはただ2人きりで歩いていた。
他のどれも通らない静謐とした巨大な廊下は、けれど、生気の感じられないひっそりとした空気に包まれていた。
「静かなんだね……」
「まぁ……な」
言いにくそうに言葉を濁すサウル。だから、ぼくはそれ以上追求しなかった。
……けど、その濁しされた言葉への追求は全く別の、予想だにしないばしょから放たれた。
「――静かなのは、この空間の支配者が歩いておるからでは? 『星の後継者』の若獅子よ」
その老人は、轟々と大河の流るる渓谷が如き、轟音を喉から絞り出された、聞き覚えのある声。
それは、ぼくの全く背後から聞こえてきた。
ぼくに、『穢土ノ祭祀書』を贈りつけた、枢密院議長の老人……!
その恐ろしいまでの轟音にサウルまでもが音がするほどに振り返る。
「――ッ⁈ 銀翁……! 何故此処に……」
驚きのあまりに上ずったサウルの声がシンとした廊下に飲み込まれる。そこしれぬ深い光を持った萌葱色の瞳がぼくら2人を捉えて離さない。
「……そう、怖い顔で睨んでくださるな『土を極めし魔導師』“我ら”とて、今日は争う為にきたのではない……」
……大仰な手振りと動作でぼくらとの戦闘の意思がない事を示す銀色の仮面。
ふん……。闘う、ね。正直、ぼくとサウルが束に成ってかかったってこのおじいちゃんに勝てる可能性は、万が一にも……ない!
「……ほ、う。実力差がわかるまでには土の魔力になれしたんできたようですな……。やはり、頃合いでしたか……」
瞬間、銀色の仮面の内側の、何を考えているか全く読めないその奥深い緑の輝きが、気味悪く細まる。
「ッ……――⁈」
その、圧倒的な濃密な魔力の質の差の飲み込まれるぼく。
ぼくが、コンクリートの上に転がされた石ころだとすれば、この老人の放つそこしれない力は何処までも伸びる荒野そのものだった。
「――何をしにきたかと聞いている! 速やかに答えろ、枢密院議長……!」
サウルが息を吸うのもやっとというほどに叫ぶ。みれば額には脂汗で、金色の髪の毛が張り付いている。
その言葉に沈黙で返す銀色のおじいちゃん。
暫くの孤独な鈴の音が続いたと思ったら、ついに、おじいちゃんが口を開いた。
「…………グラスホッパー。貴方を、我らが一族の家門へと迎え入れたく存じ、此処に参上はせさんじたしだいでございます」
一族の、家門……?
つまり……?
ぼくの心に浮かんだ疑問は、そのすぐあとの、刹那に叫んだサウルの怒鳴り声によって解消された。
「バッ……! バカな‼ 貴様らの一族の家門だと⁈ きよとを……きよとを枢密院へと加えるというのか‼」
これまでに聞いた事のないサウルの怒鳴り声は、ただ、その怒声だけでなく、内容によってぼくの心を大きく波紋だたせた。
え……? 枢密院に、ぼくを、加える?
そのサウルの言葉を受けて、仮面の下で、わずかに笑みを浮かべる仕草をとる銀色のおじいちゃん。
しわがれて、仮面でこもった声が静涼なる廊下を犯して行く。
「えぇ……8年前に、元老院と同じく“我ら”も席が空いたのだよ……末席、グラスホッパーの席がね」
そこしれない。恐ろしい、獰猛な笑みが仮面越しに咲いたのを錯覚するぼく。きっと、この感覚はサウルと共通しているものだろうとおもう。
「ッ――……! だ、だが、こいつは陛下の近衛騎士になる! 陛下のお側に置く騎士ならば、シュテルンで保護するのが当然の事だろう!」
どこか必死な。悲鳴にすら聞こえる叫びを喉いっぱいに怒鳴るサウル。
だけど、そんな叫び声すら、この狼のようなおじいちゃんには聞こえて居ないのかもしれない。
「……『星の後継者』よ。汝等の罪。聖都の巫女には知れてはおらぬだろう。――だかな、我らとて、黙っておる程慈悲深くはないのだ。お前……グラスホッパーを使って何を企んでいる?」
青白い、命の炎にもにた暗い瞬きがおじいちゃんの眼にうつる。
仮面越しの凶悪な静寂が、サウルに今確かに牙を向いた。
「――ッ⁈ な……にが、言いたい……」
サウルの絞りだすのもやっとという程のかすれた声はしかし、老人の心には届かなかったみたい。
「……それに、枢密院側につく事は、『土を極めし魔導師』にも利益がないわけではない……むしろ、あの8年前に壊れた玩具に食いつぶされるくらいならば、此方で魂ごと保護してやるべきだと思うてな……」
さらに、その言葉に付け足すように老人は重音を轟かせる。
「我らは究極のグリモワールたる『穢土ノ祭祀書』を書き記せし一族ぞ……? 空の属性たる『星の後継者』よりかは教えれる事は多いだろうな」
ッ……――。
そう、サウルの属性は一族が揃って空の魔力を持っている。
空の属性は確かに探索に特化している部分は土と重なるところがあるが、本来は防御を得意とする土の魔力とは相入れない部分があるのもまた事実なんだ。
……確かに、オルゴルス家で学ぶ事よりかは枢密院で学ぶ事は多そうだ……。あの子を護る事ができるなら……。
「だが――…………⁈ きよと!」
老人の言葉を受けてなお、反論を行おうとするサウルを遮り、ぼくは一歩前へ……老人の元へと踏み出す。
サウルの目的も、この銀翁の目論見も、今のぼくには関係のないところだ……。
今のぼくに必要なのは純粋に、彼を……皇帝を護る為の、力。
それを支える為の技術、勇者から守り通すという自信!
けれど、そのどれもが今のぼくには欠如している……けど、今からでも、このおじいちゃん達に師事すれば……!
例え何度倒れても、倒れてバラバラに成ったぼく自身の欠片を集めて、また何度でも立ち上がろう……。それが、ぼくに許された、かの世界への、唯一の復讐だから。
「――いけない、まぐら。やめされないと……」
「土蔵……君も、もうわかってるだろう。もう、無理だよ」
「でも――!」
「今は、そんな事よりも、もう1冊『究極のグリモワール』を探し出さないと……それが――」
「それが――リュウトを強くして、ご主人サマを全ての柵から解放する、唯一の方法……」
「そう……だから僕ラは一刻も速く、『焔凪経典議』を探し出さないと……」
――だからこそ、彼には魔力を操ってもらわないとね――
幼き精霊の言葉は、暗がりに消えた。
ジャムプロジェクトの曲聞きながらのノリとテンションで書きました♪( ´▽`)
絶対きよとくゆの性格がおかしくなってる気がする( ;´Д`)