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13話 僕等、或いは魔道

日曜日じゃないのに投稿しちゃいます! ■ なんでって? ドグラ・マグラくんズに洗脳されちゃいましたよ! 正直、作品内にこの子達が出てくる予定はなかったんてますけどね!


 今回は、サウルちゃんプチ活躍です♪

 「ねー、サウルちゃん、そろそおれ等のご主人サマのことゆるしてあげてよぉ」


 「そぉだよ、サウルちゃん。生まれたのは僕ラの勝手なんだからさぁ」


 「煩い! というか、お前等とりあえずでていけ! オレは今はキヨトと話があるんだ!」


 ……この会話、ぼくが聞くだけでも何回めだろう。なんかさっきからずっとこの問答聞いてる気がする……


 「だからさぁ、さっきから言ってるじゃん、ご主人サマの事許してくれたらおれ等は出て行くって、ねえまぐら」


 「うん、その通りだよ土蔵(ドグラ)、だからサウルちゃんもさぁ、ご主人サマのことはなしてよー」


 正座しながらサウルからのお叱りを待つぼく……さっきから10分はおんなじ体制してるんだよ? ……いい加減、脚がつらいよぉ……。


 けれどサウルはその10分の間、目の前の双子にかかり切りだった。


 常に人を小馬鹿にしたような口調がサウルの精神を逆なでしてるような気がしてならない。


 「……えぇと、魔蔵?」


 ぼくは控え目ながら正直土蔵よりもちょこっと大人に思える双子の片割れに声をかけた。


 ほんのついさっきまでぼくに背を向けてサウルとじゃれあっていた茶髪の少年がぼくの方へ一瞬で振り向く。


 「はい! ご主人サマ! なんなりとごもうしつけ下さい!」

 

 軽快な声と共に振り向く見た目8歳程の幼さを持つ少年の、柔かな癖のついた茶色の髪が揺れる。


 彼の右だけが真紅の瞳が異様な程の爛々と輝きながら。


 「えぇ〜! まぐらばっかりズルい! ご主人サマ、おれにも! なんなりとごもうしつけクダさい!」


 今度は、ふくれっ面をした土蔵がぼくの方へと視線をよこした。彼は同じ魔法、同じ空間で生まれたため魔蔵ととてもよく似ているけれど、決定的に違うのはその瞳の色だった。


 魔蔵は右目が萌葱色、左目が真紅であるのに対し、土蔵はその逆……右目が真紅、左目が萌葱色をしている。


 まぁ、あとは彼の方が幼い……のかな?


 「あぁ……じゃあ、2人とも、少し部屋の外に行っててもらえる……かな? ぼくは、サウルとお話があるから……」


 ぼくが、そこまで言うと先に返事をしたのは土蔵の方だった。それも、とってもいい返事で。


 「はぁーい! ご主人サマが言うんだったら行くよ! ……でも、その前に、まくら」


 「うん、土蔵……」


 そう言って、顔のよく似た双子は向き合って、向日葵みたいな弾ける笑顔をサウルに向けた。


 あ。嫌な予感。


 「ご主人サマをたぶらかしたサウルちゃんはお仕置き!」


 そんな恐ろしい事を無邪気な笑顔を浮かべて言い放ったのは右眼に燃えた石炭見たいな紅を湛えた子のほうだったとおもう。


 「「“誦詠”『ちはやぶる 神代に散りぬ 灰燼の いと愛おしきは 夜半の月影』 “灰燼”“石弾!”」」


 2人の口から同時に呪文が唄われる。その2人の詩はまるでただ1人が奏でるかのように歪みは無く、一筋に流れる小川のように澄み切って、澱みはなかった。


 けれど、効果はまるで違ったものが二つ起こった。


 「ナッ……! グハッぁ!」


 土蔵の体内の魔力が消費された瞬間、その魔力は幾千もの灰と塵になってサウルを覆い、視界を奪い、次の瞬間には魔蔵から放たれた小さなまん丸の石の弾丸がサウルの腹部へと着弾していた。


 「ふぅんだ、おれ等のご主人サマにひどい事したらこんなもんじゃないんだからな! ……いこ、まぐら」


 「うん、いこっか、土蔵。バイバイ、サウルちゃん。失礼します、ご主人サマ」


 土蔵はさっと背を向けて、魔蔵はぼくに一例を返すと、2人は手を繋いで部屋の外へと出て行った。


 顔を向かい合わせて微笑み空いながら出て行く姿は、ほんのつい先ほどサウルへと行ったことがまるで正しい事をしたみたいな無邪気さをかんじさせ、ぼくの背中に冷たい汗が流れる。


 ……て! そうじゃない!


 「さささ、サウル! ごめんなさい!」


 ぼくは、大急ぎで正座を解いてサウルと元へと駆け寄ろうとした。


 サウルは漸く腹部に奔っていただろう鈍い痛みがとれて、身体中に付着する灰を取り除こうとしていた。


 だからぼくもそれを手伝おうと立ち上がったのだけれど……。


 「ッ……!?」


 瞬間、ぼくの脚に形容しがたい、あの痛みにも似た鋭い痺れが疼いた。


 「あっ……脚が」


 しばらくの間脚の痺れに悶えていたぼくに、頭上からサウルの呆れたようなため息が聞こえてきた。





 「で、改めて説明してもらおうか、一体あの2体のゴーレムはなんだ。そもそもどうやって作った、あんな高度な魔法」


 十数分後、ぼくとサウルはさっきとは違う部屋に移動していた。さっきの部屋は土蔵がばら撒いた灰燼のせいで暫くはお掃除の手が入るらしい。


 ……うぅ、本当にごめんなさい。


 「うん……あの2人は、銀色の仮面のお爺ちゃんのくれた“魔道書”の魔法で作ったゴーレムで……」


 と、ぼくがそこまでいったところでサウルの声がぼくの声を遮る。


 「ちょっとまて、銀のお爺ちゃんというのはあの枢密院の化け物の事か⁈」


 突然の大声に心臓が跳ね上がるぼく。正座したままの体制でサウルの顔を見上げみれば、その山吹色の瞳は驚愕に見開かれていた。


 うーん、たしかにぼくもあのお爺ちゃんをお化けだと思っちゃったけど、化け物だなんていうのはちょっとばかり失礼すぎじゃない?


 しかし、サウルはぼくの内心など関係ないなどとばかりにぼくに新しく質問を付加した。


 「……で、あの老狼に貰った魔道書というのは、まさか“穢土ノ祭祀書”の事じゃないだろうな」


 サウルはぼくに質問するような口調ではあったけれどその声は半ば確定するように語尾は下がっていた。


 「サウル、もしかしてエスパー?」


 ぼくのこの言葉は流石に、些か空気がよめなさすぎたような気がする。


 案の定、サウルはその大きな手で、綺麗な顔を覆う、指の先から零れた金の髪の毛が、傍で轟々と照りつける暖炉の炎の輝きを受けてキラキラと光る。


 「お前は……そうか、最初に、あの化け物共に鎖を繋いでおくべきだった……まさか、ここまで速く接触するなんて……」


 片手で顔を覆ったまま、唸るような声で呟くサウル。その言葉はきっとぼくに向けられたものではないだろうけど……それでも。






 「キヨト、お前はあの穢土ノ祭祀書がどんな魔道の書かわかるか?」


 どれぐらい時間がたっただろう。ふと、唐突に、サウルの疲れ切ったようなどこか掠れた声がぼくの鼓膜をゆさぶった。


 なぜだか喉がからからに渇いていたぼくはその質問に対して喉を鳴らす事無く、くびを左右に降るしかなかった。


 そんなぼくの様子にサウルが微笑むような気配がする。


 「あの魔道書はな、枢密院の老狼の、その一族の歴史書とも言える魔道書だ」


 いつの間にかサウルは天井を仰ぎ見ながらまるでうわ言みたいに淡々とぼくに語りかける。


 「そう……皇帝始祖が帝位についた時から、いや、それ以前から……奴の血統は土の魔術を極めていた」


 ぼくは、そんなサウルから語られる言葉に、ただうなづく事しかできない。


 「多くの魔術は細分化され、魔法へと昇華された……多くが淘汰され、精錬され、遺された奥義と呼ばれた部類が、一冊の魔道書に記された」


 ……それが、穢土ノ祭祀書……


 ぼくの心の声に答えるかのように、天井にむけられていたサウルの視線がぼくに向けられる。


 「この帝国に、あの魔道書を上回る土の魔術を記した書はない。土の属性を持つものならば、誰もが、喉から手が出る程欲しがる気が遠くなる程の知識の集大成だ」


 サウルが、ぼくに……理解不能な目を向ける。その視線には、憐れみにも慈悲にも取れる曖昧な光が宿されていて……。


 「だが、土の属性の特徴を知らなければ、どんな魔術も最大限の力を発揮できない……けれど」


 唐突にサウルは立ち上がり、正座を組むぼくの前までやってくると、つい先ほどまで顔を覆っていた右手をぼくに差し出してきた。


 「けれど、土の魔術をお前が本当の意味で極めれば、お前は本当の意味で皇帝の盾になり、剣になる事ができる……」


 サウルの瞳からは、つい先ほどの曖昧な光は消えていた。しかし、代わりにその目に浮かべられていた決意の光は、きっと、今のぼくの心に宿った誓いの炎が映し出されたもの。


 「うん……!」


 ぼくは、サウルの力強い手に、自分の貧弱な手のひらを重ねた。いつか、ぼくもあの幼い皇帝を支えられる騎士になると、誓って。









 「まぐら、あの銀のお爺ちゃんのいったとおりだね」


 ――空、駆ける2人の幼い双子。


 「うん、東へ行けば行く程……強い魔力を感じるね」


 幼双子は、手を握り合いながら、大地の上空を駆ける。土より齎される魔力の流れを感じ取りながら。


 「最初の大きな魔力は見逃すんだよね? まぐら」


 「うん、そうだよ土蔵。僕ラが目指すのはもっと東……人間の国の、3つの魔力。それが……」


 「それが、おれ等のご主人サマにとって邪魔な奴ら……ヒトの勇者」


 「うん、皇帝陛下はご主人サマが護って、ご主人サマは、僕ラが護るんだよ……勇者と、サウルちゃんと…………あの、銀のお爺ちゃんからもね……」


 「うん、護ろう、ご主人サマを。おれ等が、誰からも……だから、まずは」


 「「勇者タチを、やっつけよう」」


 

 じ、次回……勇者vsドグラ・マグラくんズの予感⁈((((;゜Д゜))))))) 誰が一番ワクワクしてるかっていったら、それは……僕自身です⁉ だって先が自分でもわからないもの‼

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