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1話 降臨、或いは喪失

こんにちは、始めまして、お久しぶりです?

馬鹿げた学生ライムです♪ 今回はクリエイト様から頂いたアイディアを元に、勇者召喚ものを書かせていただきました!



 いつも通りの閑静な朝のぼくの町、聞こえてくる音は少し離れたところにある大通りからの僅かな喧騒くらい。そんな静かさの中でぼくの鼻腔を味噌汁の香りがくすぐる。


 そんなゆっくりと時間の流れる町の一角……ありふれた一軒家の階段を、ぼくは慌てて駆け下りていた。


 学校指定のネクタイを探すのに手間取ってしまったし、自転車の鍵もどこに行っているかわからなかったせいだ。


 開けたままのふすまの向こう側に見える風景は台所、かあさんが今朝ぼくとおじいちゃんが食べた食器を洗っている。でも、そんなことよりもぼくは台所にかかっている時計が目当てだった。


 壁にかけられた時計の指す時間は7時半すぎ、いつもならとっくに家を出ている時間だ。


 やばい! このままじゃ、本当に電車に間に合わない!


 「なにやってるの? 遅刻するわよ?」


 かあさんのこちらに背中を向けたまま言われる、少し怒気のこもった声もぼくの焦りに拍車をかける。


 「うん、わかってる。」


 ぼくも少し声を大きくしながら走る。そんなに広くないぼくの家だ。玄関にはあっと言う間につく。


 ぼくはスクールバックを肩に担ぎ直すと、勢いよく家のドアを開けた。朝の、春先の空気がぼくの頬を撫ぜる。


 いつもなら、気持ちよく自転車にまたがるところだけれど、今のぼくにそんな余裕はなかった。


 大急ぎで、家を出てすぐの所に止めてある自転車の鍵を外して、ハンドルを握る。


 だけれど、ペダルを踏んだ所でおじいちゃんに呼び止められた。


 もう、急いでるのに!


 「きよと、べんとう忘れるぞ?」


 そう言ってぼくにお弁当を差し出してくるおじいちゃん。


 「え? あ、ありがとう!」


 ぼくはそのお弁当をおじいちゃんから受けって、カバンの中に詰め込んだ。


 「じゃ、いってきます!」


 ぼくは威勢よく声をあげて、力強くペダルを踏んだ。


 いってらっしゃい。というおじいちゃん徐々に遠のいていくのを背中で感じながら、自転車をこいでいった。


 ぼくの家から駅までの道にある川沿いにある桜並木、ぼくはこの道が好きでいつもはちょっとゆっくり通るんだけど、今はそんなことを言ってる場合じゃなかった。


 ぼくはだんだんと葉桜になりつつある木々の木漏れ日の下を駆け抜けていた。


 「うぅ~……よりによって、お弁当忘れるだなんてぇ……。」


 なんか、運が悪いな。なんて思いつつぼくは変わらずペダルを踏みつけていた。


 向かい側からブレザーやネクタイをみだしたまんま、食パンを口に加えた男の子が走ってきていた。


 ぼくとは違う学校みたいだけどその子も遅刻したみたい。はぁ、お互いついていないね。


 ぼくは、ぼくとそんな彼とに同情しつつ、長く、まっすぐ続いた桜並木が終わった、その時……


 「「■■■■■ ■■■■■ ■■■■ ■■■。」」


 ぼくの耳に、聞きなれない言葉……? 言語が聞こえてきた。


 呼びかけるように、問いかけるように……所々奇妙な抑揚をつけながら、その声は確かにぼくは感じた。


 まるで、重なる様にして響く、声。それは耳から聞こえてくるというよりも、まるで……心に直接聞こえてくるようだった。


 一瞬、自転車を止めるぼく。


 きっ、と川沿いの道に響く甲高いブレーキ音。もしかしたら、それがいけなかったのかもしれない。


 突如、ぼくの視界が真っ白ななにかに包まれる。光でも、空気でもないそれが、ゆっくりと、緩慢にぼくの体を包みこみ終わったその瞬間……。ぼくは、この世界から姿をけした。



 「ん……?」


 ぼくは、深い森の中で目を覚ました。木々はどれもぼくが今まで見てきたどんな樹よりも高く、空を覆い隠していた。


 ぼくは、そんな樹々の落とした葉っぱの上で、仰向けに成って倒れていた。茶色く変色して、半分土と同化したような葉っぱだ。


 「ここは……?」


 ぼくは、そんな葉っぱを払うと同時に上体を起こした。気を失っていたのかな? 変な所で寝たせいか、体の節が痛い。


 髪の毛にもついていた土を払うと、ぼくは完全に立ち上がって、周りを見渡した。


 鬱蒼として、静かな、薄暗い森だった。本当に背が高く、みねの太い気が林立している。


 それで、日の光が当たらないせいか、ぼくの足元やなんかには色が白くて、ひょろりとした、元気のない草ばかりが生えていた。


 たまの木漏れ日の所には花なんかも咲いている。見たこともない花だ。


 と、その近くにぼくのカバンが転がっていた。案の定土まみれ、草まみれだ。はぁ……このバック卒業しても使うつもりだったのに。


 ぼくは、カバンをかかえて、土を払った時、あることに気がついた。


 「……あれ、自転車が……ない?」


 ぼくは、あたりを見渡したが、それらしいものは見当たらなかった。あの自転車、買ったばかりだったのに……。


 「……と言うか、本当にここどこ?」


 深くて、静かな森……そこはなんだか、とても不思議で、神秘的な雰囲気に包まれていた。


 ぼくの知っている風景に例えるならば、お伊勢様が妥当な所だろうか……?


 でも、そんな森の中に突然放り出されたんではたまらない。おまけにぼくは自転車までなくしてしまったのだ。こんな不幸は中々ないよぅ。


 ……そういえば、あの声は一体なんだったんだろう……? まるで、なにかを呼んでる様な……そんな響きだった。


 ……ぼくを、よんでいた? まさか、そんなわけないよね。


 ぼくは、一瞬浮かんだ馬鹿げた妄想を頭をふって打ち消す。


 「それにしても、綺麗な空気だなぁ……なんか、流れてるのがわかるみたい」


 本当に綺麗で、美味しく空気だ。ここまで深い森で、きっと都会と汚い空気も入ってこないんだろう。やけに澄んだ空気を体全体で感じる。


 と、その時、ぼくは足もと……厳密に言えばその下の土から、違和感んを感じた。


 なにか、今ここにはない、ぼく以外のなにか……そんななにかがぼくの所に近づいてきている。


 姿は見えないけれど、それは小さいものだ、とぼくは感じていた。そう、まるで、うさぎみたいな。


 ぼくが、そう結論をだした瞬間だった。ぼくから見て右側、数少ない木漏れ日の下、比較的背の高い草の生えている場所から、そのなにかは、正体を表した。


 それは、なんのことはない。ただのうさぎだった。やっぱり、花と同じで見覚えのない形だった。


 「ふぅ……。」


 ぼくは、ぼくの目の前を急ぎ足で走り去っていくそのうさぎを尻目にため息をついた。もしかしたらとんでもないものが来ると思ったのだ。まぁ、そんなことはなくて良かったけれど……。


 と、ぼくが内心安堵している時だった。


 「……⁈」


 再び、ぼくは自分の足もとの土から、ぼく以外の気配を察した。それは、うさぎがきた方向と同じ……右側。


 今度は、うさぎなんかじゃない、もっと大きな……それこそ、ぼくよりも背の高い、誰かだ……。





やっぱり、こういうのって、設定考えている時が一番楽しいですよね。

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