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百合色革命  作者: 水月さなぎ
第二部 VS篇
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世界中の幸せを独り占めした輝く笑顔の正体は……

 結局、爆破事件や誘拐事件など、色々と警察沙汰になりそうなことは塔宮家の権力で揉み消……穏便に解決することになった。


「ふん。恩に着ると思ったら大間違いだからな」


 天華の方は相変わらずの可愛げなさで答えている。


 捕まったところで幽閉と大差ないと考えているのだろう。確かにその境遇には同情するが、だからといって被害者としての苦情がないわけではない。


「お前なんか一生幽閉されてしまえ」


「………………」


「……と言いたいところだけどな。さすがに色々胸くそ悪いぜ」


「………………」


 天華を見下ろしながら言う。


 天華に同情しているのも本当だ。


 助けたいというほど積極的な感情じゃないけれど、それでも納得のいかないことがあるんだから仕方がない。


「なあ、邑璃」


「なに?」


「天華はこのまま春日位家に引き渡すのか?」


「うん。警察よりはマシでしょ? 一生幽閉かもしれないけど。なっちゃんを誘拐しておいてその程度で済むんだからむしろ感謝して欲しいってゆーか」


「………………」


 発言黒いですよ邑璃さん。


 表情も地味に黒いですよ。


 鼻のあたりまで影効果が入ってますよ?


「それでいいのか?」


「どゆこと?」


「だから、これから当主になる自分自身についてだよ」


「……春日位家の非道を見逃すのかってこと? それこそ家の事情なんだから仕方ないよ。秘密裏に行われてきたっていうのもあるけど、晒されたところで何かが変わる訳じゃないもん。それに他人の家に口出しするリスクを負ってまでてんちゃんを助けたい訳でもないしね。わたしは正義の味方じゃない」


「お説ごもっとも」


 ましてや俺を誘拐された直後に天華を助けろなんてのは、無理な話だろう。


 それぐらいは俺にも分かっている。


 だけど俺が言いたいのはそういう事じゃない。


 俺が気に入らないのはそういう事じゃないんだよ。


 邑璃が当主になるのなら、どうしても譲れない一線がここにあるんだ。


「んっふっふ。ナツキが言いにくいんだったら僕が言ってあげようか?」


「ステア」


 俺が躊躇っているのに気付いたのだろう。ステアが横から割り込んできた。


「権力っていうのはね、なるべく妥協するものじゃないんだよ。ましてや下の存在に一部であろうと屈するべきじゃない。一歩間違えば暴君の道だけど、これを間違うと暗君になってしまう。僕が言いたいこと、分かるかい?」


 邑璃は眉をしかめながら首を傾げる。


「……つまり、春日位家の問題に塔宮家次期当主として口を出せってこと?」


「その通り。僕も立場上権力構造は理解してるつもりだよ。非道を正せと言いたいわけじゃない。ユーリちゃんは自分で言った通り正義の味方じゃないからね。だけど君は紛れもなく女王になるべき存在だ。だから、春日位家如きのお家事情に口を挟めないほど立場が弱いなど許される訳がない。暴君の言葉を以て春日位家からあの子を奪い取ってみるのはどうかな?」


「……別に、いらないんだけどなぁ」


「じゃあこのまま春日位家に舐めた態度とられる? それで妥協するの?」


「それは嫌だ」


「じゃあこっちで妥協しようよ。あの子はまだ若いけど、鍛えればかなりのものになると思うよ。まあこれは僕の勘だけど。秘書でも下僕でもお稚児さんでも手元に置いておけば役立つんじゃないかな」


「………………」


「待て。最後のは余計だ」


 お稚児さんって……。俺用か!? それとも邑璃用か!? どちらにしてもお断りだ!


「所有権をわたしに移せばいいんだね?」


「それは僕が口出す事じゃない。君が決めることだ、ユーリちゃん」


「………………」


 邑璃の中で答えが出たのか、直純に拘束されたままの天華に歩み寄る。


「てんちゃん」


「嫌だ。絶対嫌だ。邑璃なんかにこき使われるぐらいなら幽閉を選ぶ。余計な真似すんなバカ女」


 天華の奴は予想通り拒否しやがった。幽閉の運命を救われるならまだしも邑璃に所有されるのが我慢ならないのだろう。しかもお稚児さんという台詞がかなりのダメージになっていることは確かだ。


「………………」


 ……その時の邑璃の表情を言葉で表すのなら、『可憐な少女の人生で一番輝いた笑顔』というべきなのかもしれない。


 幸せ一杯胸一杯、世界中の幸せを独り占めしたお姫さまの如く素晴らしい笑顔だった。


 だからこそ恐ろしい。


 俺には分かる。


 あれはドSに徹すると決めた表情だ。


 基本的にはにこにこしながらグレネードランチャーを撃っていた時と変わらない。


 更に言うなら今の表情はあの時よりも更に凶悪だ。可愛く見えるだけにタチが悪い。


「うわ~。ああいう顔するとアレクにそっくり」


「……お前の妹には絶対会いたくないな」


 そっくりって……アレがそっくりって……怖いよ。マジで怖いよ!


 変態伝言とかどうでもいいから一生会いたくないよ!


「よし。じゃあてんちゃんはわたしとなっちゃんと一緒の部屋に住もう。これからみっちり仕込んであげるよ。仕事もプライベートもみっちりたっぷりねっ!」


「っ!?」


 にんまりと嗜虐的な笑みを浮かべた邑璃の表情は、悊人氏が見てもドン引きするレベルではなかろうか。


 一緒の部屋に住むって、俺も?


 俺と一緒!?


 うわあ、考えたくねえ。


 確かにスペース的にはあと一個ぐらいベッドは入るけどさぁ。


「春日位家には今回の件を不問にしてやる条件として突きつけておけば大丈夫でしょ。あとはパパりんに頼んで当主権限でも発動して貰って……それからそれからBL本もたっぷり買い込んでおかないとね~」


「何する気だーーっ!?」


 最後の、最後の発言が聞き捨てなりません!


 BL本って!?


 天華の受け入れ体勢と同時にBL本購入って一体どういう用途で使うつもりなの!?


「あっちゃ~。あの子も可哀想に。新世界とか目覚めさせられちゃうんじゃない? もしかしてリアルのお相手はナツキかな?」


「冗談じゃねえっ! 俺にそっちの趣味はない!」


「じゃあさん●?」


「黙れっ!」


「ああ見えるな~。真っ黒いけどそれなりにいたいけな少年が別の意味で穢されていく未来が垣間見えるな~」


「見んなそんなもん!」


 エロ本の意味も分からなかったピュアブラック少年に一体何をする気で、何をさせる気なんだ!?

頼むから一線は越えてくれるな!


 怖い未来が待ち受ける予感のする事件の終わりだった。



 ちなみに余談だが、ランチャー撃ち込みに巻き込まれた天華のSP諸君は一応無事だ。


 骨折切り傷その他諸々重症患者は多数いたが、命に別状はない。


 ラッキーな偶然だった。


「……一人ぐらいICU入りさせたかったのに」


「………………」


 邑璃のブラック発言についてはスルーしておこう。


 俺が絡むと邑璃はとことん黒くなる。


 にこやかに黒いから普通に怖い。



 更なる余談として枢さんのことは……


「あ、共犯者? まあいいんじゃない? 無事だったし。貸しにしておく。といってもくーちゃんじゃ脅迫は通じないだろうけどね。警察沙汰にしないから掴まえるわけにも行かないし、圧力もかけづらいんだよね。遠巳坂家は両親が事故で他界してるからくーちゃんが当主だしね。本人は圧力が通じない性格だし、当主である以上間接圧力も難しい。仕方ないから無罪放免でいいや。今度おっぱい揉ませて貰うけど」


「………………」


 だから、最後の発言が……最後の発言が問題ありすぎますよ邑璃さんっ!


 つーか俺が枢さんの胸を揉んだ(事故!)のは内緒にしておいた方がいいよなぁ絶対。


 バレたら怖いし。


 うわ、口止めとかしといた方がいいのかな?


 でもそれはそれで脅迫材料にされそうで怖いし。



 事件は一応解決したのに不安要素ばかり残ってしまうのは何故だろう?


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