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百合色革命  作者: 水月さなぎ
第二部 VS篇
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なんかもう、色々台無し

 いつまでもこの状況が続くとは思っていなかった。


 ステアが今の状況に何の対策も打たないとは思っていないし、信じてもいなかった。


 甘い考えかもしれないが、きっと助けが来ると信じていたのだ。


「……信じていただけどさぁ」


 がっくりと脱力する俺を、一体誰が責められるだろう。


 否。一人でも俺を責める奴がいれば、断固として今の状況をタテにとって抗議してやるぞ。



 ちゅどーん!



「………………」



 どごーんっ!



 ずずーんっ!



 どっかーんっ!



 ……なんていう安っぽい効果音を演出してはいるが、実際の状況はもっと酷い。


「なっちゃんをかーえーせっ! そりゃーっ!」



 ちゅどーんっ!



 外で拡声器を使ってグレネードランチャー? っぽいものを次々と撃ち込んでいるのはもちろん邑璃だ。


 もっと交渉とか、こっそりとか、やり方はあるだろうに!!


 正面切ってランチャー撃ち込むとかどういう助け方だよまったくっ!


「あわわわわっ! 何考えてんだよあの馬鹿女! これじゃあお前だって大怪我するじゃないかっ!」


 天華が慌てて俺の幽閉場所に駆け込んできたのも無理はない。つーか抗議したいなら俺じゃなくて邑璃にしろよ。


「俺も同じ事を言いたい。つーかよくもまあ無事だったな」


「うるさい!」


 癇癪気味に怒鳴りつけてくる天華。ちょっとパニック状態のようだ。


 この隙に逃げ出したいところだが、俺の周りにはマッチョがしっかりガードを固めてくれているのでそれも不可能だ。まあいざというときは肉壁で守ってもらえるから利用価値がないとも言えないんだけどさ。


「なんでかこのエリアだけ奇跡的に無事なんだよ。あらかじめ幽閉場所を知っていたとしか思えない!」


「あー。かもなー。ステアっちは優秀だから」


 あいつの諜報部隊を動かせばその程度の調査は晩飯前だろう。朝飯前だっけ? どっちでもいいけど。


「はいはーい。優秀なステアっち登場でありますよ~♪」


 天井裏をぶち抜いて皇子様登場。


「ぐはっ!」


 ちなみにぶち抜かれた天井が一枚、マッチョの片割れに直撃しました。


 ご愁傷様です。


「遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ」


「そりゃあ悪かったね。でも勝手に攫われるナツキにも責任はあると思うよ。さすが誘拐属性」


「誘拐属性言うな」



 ちゅどーん!



 どかーんっ!



 再び爆発音。そろそろ向こう側は半壊しているんじゃないだろうか。


 俺がいるのは離れだけど、本宅は立て直しが必要な被害を被っているに違いない。


「枢さんは? まさかあっちにいるのか?」


 この状況で加害者の心配をしてしまうあたり、自分のお人好し加減がちょっと嫌になる。もう少し自分本位になればいいのにと思わなくもない。


「ああ。その人ならこっちで拘束済み。ナツキを助けに来る前にちょっと拉致らせてもらったから。今はこっちの車の中だから安心していいよ」


「拉致ったのかよ」


「いやあ。素敵な胸だった」


「………………」


 変態皇子がいる。


 つーかこいつも色々邑璃の悪影響を受けてるんじゃないだろうか、と最近疑っていたりする。


「勘違いしないで貰いたいな。揉んでないよ。ちょっと担ぎ上げたときに背中にむにゅっと、くずれないプリンみたいなヘヴンが……」


「分かったもういい喋るな」


 この変態発言を妹のアレク皇女に聞かせてやったら一体どんな反応をするだろう。いつか会う機会があれば絶対に話してやろうと心に決める。


「はいはい。後ろあぶないよ~」


「うわあっ!?」


 ステアが声をかけると同時に、俺の身体が持ち上げられる。


 マッチョの生き残りが俺を確保するべく動いたのかと勘違いしたのだが、実際はちょっと違っていた。


「じっとしていろ。暴れると意識を刈り取ってから運ぶことになるぞ」


「げ……」


 俺を持ち上げたのは直純だった。ステアの護衛なのに救出作戦にまで付き合わせてしまったのは非常に申し訳ない気分だ。まあ護衛も兼ねてるんだけどこいつに必要なのかなと首を傾げたいのは直純も同感だろう。


 もちろん暴れません。直純なら一瞬だろうけど意識を刈り取られるのはぞっとしないし。


 その間にステアはマッチョの生き残りを片づけていた。ぶらぼー。



 ちゅどーん!



 がっしゃーんっ!



 そしてその間にもゆーちゃんってば派手にやってるわ~。こっちはさすがというかやっぱりというべきかもしれない。


「さてと。あまりのんびりしてるとユーリちゃんがここまで撃ち込みかねないな。さっさと脱出しようか」


「うわあ!」


 そう言ってステアは天華を抱え上げる。


 俺も天華もすっかり荷物扱いだ。


 ちなみにマッチョ二人は畳の上に転がり中。今ここに撃ち込まれたら間違いなくご臨終だろう。彼らのためにもさっさと脱出するのが望ましい。


「離せよばか! 降ろせーっ!」


 もちろんじたばたと暴れる天華。しかしどんなに黒くても所詮は子供の力。百戦錬磨のステアに敵うわけもなく、


「はいはい。大人しくしようね~」


「ぎゃーっ!?」


「………………」


 あらあら。ステアっちってばいたいけな(!?)子供の大事なところをぎゅっとにぎっちゃいましたよ。

 ……え、えげつねえっ!


 確かに男を大人しくさせようと思ったら実に効果的だけど!


 でもそれはやばいよ!


「……俺ならあんなものを触るぐらいなら火錬ちゃんの胸を揉むぞ」


 ぼそりと呟く直純。『火錬ちゃん』というのが誰のことかは知らないが、恐らくは彼女だろう。気持ちは良く分かる。


「うーっ!」


 そして効果覿面に大人しくなる天華。


 これ以上息子を●●されてはたまらないのだろう。


 ……まあ大きさ的に『息子』っていうより『孫』かもしれないけど。


「俺の肩の上で妙な思考を巡らせるな」


「……ごめんなさい」


 変なことを考えていたのは空気で伝わったのかもしれない。確かに男に抱え上げられた状態で考えることでもないので素直に謝っておく。


「じゃあ脱出れっつごー!」


「れっつご~」


「………………」


 気楽な調子に続く直純の声。


 案外、付き合いがいい。もしかしたら中身は意外とステアと通じる物があるのかもしれない。


 もちろんマッチョコンビは置き去りです。



 未だに撃ち込まれている日本家屋から脱出するにはそれなりに苦労した。何せ爆風で吹き飛ばされる破片を避けたりしなければならないからだ。邑璃の奴ももう少し手加減してやればいいのにと思わなくもないのだが、途中で嫌な可能性に気付いてしまう。


「…あいつ、途中から楽しんでないか?」


 嫌な、というよりは怖い可能性だ。


 大威力火器に楽しみを見出すような恐ろしい可能性は速攻で排除したいのだが。


 直純に抱えられながらようやく死地(?)を脱した俺が目にした物は、グレネードランチャーを抱えてうっとり表情で屋敷に撃ち込んでいる邑璃の姿だった。


「そーれもういっぱーつ♪」



 どっかーん!



「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


 俺達絶句。


 ステアだけが苦笑い。


「あはは。ユーリちゃんノリノリだねぇ。意外といい軍人になれるかもしれないよ?」


「……やめておけ。あんなモノを軍人なんかにした日には間違いなく部隊が壊滅するぞ」


 これを面白がれるステアはかなり大物だと思う。冷静に突っ込む直純こそが常識人だ。


 俺も直純に同感だけど。


「だいじょーぶだいじょーぶ。心配しなくてもそろそろ弾切れのはずだから」


「……なんで分かるんだよ」


「数えてた」


「………………」


 この状況で残弾数まで把握してるあたり、只者じゃない。お前こそ軍人向きだ。


 そしてようやく弾切れになったところで邑璃が俺達に気付いた。


 ……遅いから。そしてタイミングが最悪だから。


「なっちゃーん!!」


「げっ!」


 グレネードランチャーを放りだして俺に飛びつこうとしてくる邑璃。


 このままでは巻き込まれると判断した直純が速攻で俺を投げ捨てる。


 投げ捨てるなっ!


「ふぎゃっ!」


 地面に投げ出された俺は無様な声を上げるが、


「会いたかったよーっ! まったくもう誘拐属性だからって勝手に誘拐されたら駄目なんだからねっ! そんなに拉致監禁してほしいんだったらわたしが一日中縛り上げてセクハラしてあげるから!」


「だあああーーっ! 誰が誘拐属性だ! 拉致監禁とか二度とこりごりだ! それから堂々とセクハラとか言うんじゃねーーっ!!」


「会いたかった会いたかった会いたかった~~!」


「尻を撫でるなーーっ!」


 邑璃に抱きつかれた俺は、言われ放題撫でられ放題セクハラ三昧を味わうのだった。



 なんかもう、色々台無し。


 被害者は間違いなく俺なのに、ここまで大がかりに誘拐事件とか起こしてくれた天華がちょっぴり哀れだよまったく。

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