モテ期ですか!? 01
それから一週間。
邑璃は部屋に戻らなかった。
部屋にも戻らないし、学校にも通ってこない。
学校側は家の事情でしばらく学校に来られなくなるとだけクラスメイトに伝えていた。
クラスメイトは特に疑問に思ったりはしなかった。
家の事情、というのは大きな家にはありがちなことだからだ。
仕事の手伝いや研修、その他諸々の事情で学校を一週間以上休む生徒も、実は結構いるという。
それが塔宮家ならなおさらだろう、というのがクラスメイトの共通見解のようだ。
しかし俺は知っている。
そんな理由ではないということを。
「間違いなく、俺の所為だろうな……」
股間が微妙に疼く。
……いや! 別に変な意味ではなく!
あの時の強烈な痛みを思い出しているという意味で!!
「はあ……」
溜め息。
幸せが一つ逃げた。
あと百個くらい逃がしてもいいかもしれない。
つーか現時点で幸せな要素なんて何一つねえよ。
いつ咲来にバラされるか分からねーし。
周りは女子ばっかりで息が詰まりそうだし。
唯一素で話せる邑璃はふて腐れて本家に戻ってるし。
わたし実家に帰らせていただきます、みたいな?
……いやいやいや。別に夫婦じゃねえし!
「あいつ……何してんだろうなぁ……」
あんな出て行き方をしたのだから、毎夜枕を涙で濡らしている、なんて可愛げのある行動は取っていないのだろうけれど。
逆に何をしているか分からないのが怖いというか……。
「ま、いいか」
俺の知った事じゃない。
この調子でいけば、あいつとの縁ももうすぐ切れるだろうし。
俺も自由の身にはなれなくとも、この状況よりはマシになるだろうと希望的観測を抱いてみよう。
「塔宮さん、ちょっと」
ぼんやりと考え事をしていると、委員長小牧が俺を呼んだ。
「何?」
「塔宮さんにお客さんみたい」
小牧は廊下側を指差した。
「………………」
廊下には咲来が待ち構えていた。
「げ……」
このまま無視してもいいのだけど、それもちょっと感じが悪い。しかもここは教室の中。生徒会長のご指名をガン無視できる雰囲気ではない。
仕方なく俺は席を立ち咲来の方へと向かった。
「『げ…』とはまた失礼ですわね」
仁王立ちで待っていた咲来は、開口一番にそんな風に言ってきた。
どうやら俺の呟きが聞こえていたらしい。
「………それで、何か私に御用ですか? 星稜院生徒会長さん」
俺は嫌みったらしく聞こえるように、そして可能な限り女らしく、笑顔でそんな事を言ってみた。
「………………」
咲来は俺を見て一歩下がった。
少しばかり引いてしまったようだ。
まったく。失礼なのはどっちだ。
「自習室まで付き合ってもらえませんこと? 今ならあそこは誰もいませんから」
「ああ、そう言えば昼休みは貸切にしてあるんでしたか」
「ええ。静かな環境で食事を摂りたいものですから」
つまりこいつは静かに食事をしたいが為に共用教室を一部の時間占領しているのだ。
生徒会長権限&塔宮家の関係者としての権力をフル活用しているのだろう。




