衣装チェンジは結婚式並み!
「いっや~ん! 棗生ちゃんおっひさ~! 会いたかった逢いたかった合いたかったわ~!」
「遭いたくねえ! まったくもって遭いたくねえ!! つーか文字にして見ないと分からないような表現するなっ!」
迎賓館のゲストルームに連行されて待っていたのは、悪夢の化身・村雨恭吾だった。
恭吾は俺を見るなりがばっと抱きついてきて頬ずりとかしてきやがった。
しかも男モード全開の怪力なので悲しいかな、俺の力では振りほどけない。
「はーなーせーっ!!」
なのでこうやって抗議することくらいしかできない。
しかし恭吾は珍しくすんなりとこちらの要求を聞いてくれて、あっさりと俺を離してくれた。
ただし、離れる直前に尻を撫でていったが。
怒るな。
この程度のことはすでに慣れた。
恭吾だけではなく邑璃までそんな感じなおかげで、その程度のセクハラには耐性が出来てしまっているのだった。
……出来てはいけない耐性のような気もするが。
女の子がベッドにもぐりこんでくるのに慣れてくる日常ってのは、男としてちょっとどうかと思うし。
でもなあ。そのたびに動揺してたら俺の心臓はとっくに破裂してると思うんだよ。
ガラスハートではやっていけないんだよ。
……あれ? でもよく考えるとガラスってそんなに脆くないよな?
……みたいなことを考え込んでいるうちに、
「ぎゃーーーーーっすっっ!!??」
いつのまにか真紅のドレスを着せられ、ウィッグはお姫様風にアップセットされてしまい、さらにはほんのりファンデーションや口紅まで塗られてしまっているじゃないか!?
恐るべし考え事!
ぼーっとしているうちに改造されてしまった気分だ!
「なっちゃんなっちゃんなっちゃん!!! 可愛い可愛い超可愛い! 食べていい!?」
「いいわけあるか!!」
鼻息荒くアホなことをのたまっているのはもちろん邑璃だ。
「ぐっは~! いいもん見せてもらったぜ……太ももさわりてえ……」
などとエロオヤジみたいなことをのたまいながら勝手にデジカメ撮影しているのは佳崇。
この部屋の隅に備え付けられている消火器をぶちまけてやりたい二人だった。
「ちょっと! 困るんだけど! この後パーティーで優勝者お披露目があるらしいし!」
この格好のままというのは困る。
「大丈夫大丈夫! それは第一弾だから♪」
「は……?」
恐ろしいことをさらりと言ったのは恭吾だ。
第一弾……?
何のことだ?
つーか考えたくねえ!
「ほら、結婚式とかでも二、三回くらいお化粧直し兼衣装替えしたりするでしょ? それといっしょで棗生ちゃんの衣装もあと一回分用意してるのよ~。だからお披露目が始まるまではそのドレス。お披露目の時は学生服。そしてお披露目が終わったらこっちの白いドレスね!」
そう言って恭吾が指さしたのは、ウェディングドレスみたいな純白ドレスだった。つーか素人目にはウェディングドレスと区別がつかねえしっ! ヴェールがないからかろうじてドレス、みたいな?
「……逃げようかな」
本気で逃げ出したくなってきた。
「安心して! 絶対に逃がさないから」
右側から俺の腕を掴んででくるのは邑璃。
「最後のドレスの時はオレがエスコートしてやるぜ!」
左側から掴んでくるのは佳崇。
絶妙なコンビネーションだった。
と、思ったのだが……
「ちょっと! なっちゃんをエスコートするのはわたしの役目なんだからね!」
などと、邑璃が佳崇に対して憤慨している。
「な、なにおう! ゆ、邑璃ちゃんはいっつも棗生と一緒にいるんだろう!? たまの役得ぐらいオレに譲ってくれてもいいじゃんかよ!?」
負けじと言い返す佳崇。
「駄目! 絶対駄目!」
「オレだって譲れないぞ!」
バチバチバチバチ……
仲良しだった二人の間に火花が散っている。
所詮、仮初めの心友だったらしい。
と、思ったのだが……
「じゃあわたし右側ね」
「じゃあオレは左側」
「………………」
二人で仲良くエスコートすることに決まったらしい。
ちなみに俺の意志はガン無視。
まったくもって不愉快だった。
「うふふふ。モテモテねえ棗生ちゃん。私もうかうかしてられないかもね」
「………………」
両手に花……ではなく悪夢を抱えた俺を見て怪しく笑う恭吾。
……うかうかうかうかうかうかうかうかうかうかしていてくれ! 頼むから!




