心の友とかいて「しんゆう」と読むべし!
「優勝おめでと~! ぎゃはははははははは!!! 王子様だってよ王子様!」
「……ま、一応おめでとうと言っておくね。ほんとにどうでもいいけど。それよりも早く美少女に戻って欲しいな」
イベント終了後に戻ってきた俺を迎えたのは、マジで腹を抱えて大笑いの佳崇と、マジで興味なさそうな邑璃だった。
いや、なんかもう、ここまで対照的な二人がむしろすげえっつーか。
しかも微妙に仲良くなってるし。嫌な感じだ。
断っておくが断じて嫉妬ではない。
二人が結託してしまうと俺の受ける被害が大きくなってしまう故の危惧だ。
「着替えようにもまだこの服装でいなきゃならないんだよ。えっと、何だっけ? 東西合同社交パーティー? みたいなのに出席しなければならないみたいだから」
「それって夜だよ。また着替えればいいじゃない」
「面倒臭えし」
「………………」
一言で切って捨てると、邑璃はあからさまに不愉快な顔をした。そこまで俺の女装が見たいのかこの女は。
そして邑璃と佳崇の二人でひそひそ話を始める。
「ずぼらな美少女ってどう思う?」
「普通に考えればマイナスポイントだが『ギャップ萌え』という概念を適用すればアリとも言えるぜ? まあそれもこれも『美少女』という前提があってこそだが」
「なっちゃんにぴったりのドレスがあるんだけど、今夜のパーティーで着せてみようか? 男装お披露目が終わった後とかに」
「マジでか!? 写真! 写真に撮りたい!」
「うん! でも会場は撮影禁止だから更衣室で着替えさせて撮った写真をこっそり回してあげるね!」
「うおお! 俺たちはもう心友! 美少女を生きる糧とする心の友だ!」
「イエッス! 心友ばんざい!」
「………………」
いい加減黙ってくれないかなぁ、この二人。
つーかドレスとか着せられそうになったらマジで逃げるぞ。
せっかく男の姿でいても問題ない状況なのに、何が悲しくてドレスなんぞを着なければならないのか。
それよりもまず俺にとっての悪夢である心友二人をなんとかする方が先決かもしれないけれど。
ついでに言うと咲来との問題も残ってるんだよなぁ。
表彰式の後、こっそり耳打ちしてきやがったし。
『パーティーでゆっくり話しましょう。個室を用意してありますから、そこなら誰にも聞かれる心配はありませんわ』
とかなんとか。
さーて。どうするかな。
星稜院家は分家筋だっていうから、悊人氏に連絡すればなんとでもしてくれるんだろうけどそれもちょっと情けない。
それに俺のことを調べた理由っていうのもちょっと聞いてみたい。
「………………」
この事は邑璃には言わない方がいいんだろうなぁ。
心配どころか暴走しそうだし。
「ま、いいか」
幸い、失うものは何もない。
ヘマをしたところで精々この学園にいられなくなるだけだ。
だったら正面からぶち当たってやろうじゃないか。
と、それなりの覚悟を決めていると……
「あ、いいんだ! じゃあ決まりだね!」
と、邑璃が表情を明るくしていた。
「は……?」
考え事に耽っていた俺は会話についていけない。
「だから! せっかくドレスを着るんだから今回はお化粧するからねって話!恭子ちゃん呼んであるからバッチリ決めてくれるよ!」
「………………っ!!??」
いつの間にそんな話に!?
ドレス……までは覚えているが。
化粧!?
しかも恭吾だって!?
冗談じゃねえぞ!
あいつには二度と会いたくないんだ!
「じゃあさっそく衣装合わせに行こうか~。迎賓館に恭子ちゃん待たせてあるから」
「い、嫌だ! 離せ! あいつには会いたくない!!」
貞操が!
俺の貞操がライブで大ピンチ!
「大丈夫大丈夫。なっちゃんの初めてはわたしがもらう予定なんだから。恭子ちゃんにはちゃんと釘を刺してるし。されても精々つまみ食い程度だから安心してよ」
「安心出来るか! つーかお前にもやらねえよ! って何だこの展開!? 色々謎すぎてついていけねえ!」
「よっちゃん手伝って。往生際悪いから力尽くで連れて行こう」
「らじゃー! 邑璃ちゃん! オラオラ観念して美少女になりやがれ!」
ご主人様に従う下僕の如く忠実に動く佳崇。
「い――や――だ――っっっ!!!!」
俺の抵抗も虚しく、二人がかりの力ずくで迎賓館へと引き摺られていくのだった。




