ボーイ・ミーツ・ガール開幕! 02
そして投票結果は夕方に発表される。
今はまだ投票受付中の状態なので、俺と佳崇は校内をぶらぶらしている。出店でポテトやアイスクリームを買ったり、まあ色々だ。
ちなみに俺の格好は学ランのまま。つまりは男モードだ。どうせ結果発表の時にまた着替えさせられるのだから、このままでいた方が効率がいい。
……効率がいいのだが。
「ねえねえ、あれって棗生さんよね?」
「うんうん。やっぱりカッコイイ!」
「隣にいるのって誰? 友達?」
「もしかして、彼氏!?」
「あれ? でも邑璃さんは?」
「二股!?」
「どっちが本命かなあ?」
「それよりもあの格好で二人並ぶと……」
「まるでBLよね!」
「それってどっちが受け?」
「…………どっちも捨てがたいような」
この姿で校内をうろつく事自体が、どうにも目立って仕方がなかった。
かなり嫌な意味で。
「………………あいつら、好き放題言いやがって」
「ぎゃははははははは! モテモテだなあオイ!」
「お前も笑ってんじゃねえよ! ホモカップル扱いされてるんだぞ!?」
「いや~。オレ棗生ならいいよ」
「!!??」
素でそんな反応をされたので、俺は思わず佳崇から身を引いた。
「ぎゃっはっはっはっは! マジになんなよ! あー面白え!」
「………………」
マジで死ねばいいのに。
「でも美少女な棗生とはマジでいちゃついてもいいかな~。なんてったって美少女だし」
「いちゃつかねえよ!」
「今度偽胸揉ませてくれよ」
「揉ませるか! つーかお前は邑璃か!」
「え!? 何!? 邑璃ちゃんってばそんな事してんの!?」
「あ……」
しまった……。つい……。
さて、どう説明するか。
自分の失言に頭を悩ませていると、
「なっちゃ~~~~んっっっっ!!」
「ぐはっ!?」
聞き慣れた声を認識したと同時に、俺の首が絞まる。
後ろから邑璃が飛びついてきたのだ。
「ぐ……ぐる……ぐる……っ!」
「ぐるぐる?」
両腕で俺の首を締め上げながら、首を傾げる邑璃。
「……苦しいっつってんだろうがこの馬鹿――っ!」
「きゃんっ!」
無邪気な暴力に耐えきれなくなった俺は乱暴に邑璃を引き剥がす。
無様に廊下に転がる邑璃。
「あ、こら棗生! 女の子になんてことするんだ!」
転がった邑璃を抱き起こす佳崇。ちゃっかり手まで握ってやがるし。
「君、大丈夫?」
「だ、だいじょ~ぶ。なっちゃんの過激ツッコミには結構慣れてるから」
「おう。なんて逞しい娘さんだろう。オレは榊原佳隆。棗生の唯一無二の親友だ。君の名前を教えてくれるかな?」
「塔宮邑璃だよ。なっちゃんの恋人でっす!」
「恋人じゃねえっ!」
なんで俺を差し置いて二人で話が進んでるんだ!?
しかもデマ情報満載で!
「ほう! 君があの邑璃ちゃんか!」
「それにしてもなっちゃん。いつまでそんな萎える格好してるの? 早く元の姿に戻ろうよ」
「萎えるって……」
人の本来の姿に対して何てこと言いやがるかこの百合娘は……!
「なっちゃんの真髄は美少女にこそあるんだよ。美少女じゃないなっちゃんなんて閉店時間過ぎても売れ残ってしまったスーパーのおつとめ品のようなものなんだからね!」
「さりげに酷いこと言うなよ!」
誰が売れ残りだ!
誰がおつとめ品だ!
「だよな! やっぱり棗生の本質は美少女だよな!? 男にしとくのは世界にとっての損失だよな!?」
そして邑璃の暴言に共感する佳崇。
「そこも勝手なこと言ってんじゃねえ!」
「美少女だよ」
「美少女だな」
「お前らもう黙れ!」
急速に親睦を深めていく佳崇と邑璃に対して、俺は怒鳴り返すことしかできなかった。




