葛籠祭の恐怖 03
「……何でこうなる」
寮の自室でベッドにうつ伏せになりながら、俺はぼやく。
「そうだよね! なっちゃんの真髄は女装にこそあるのにどうして男になんて戻らないといけないんだろうね!」
ベッドの脇に座りながら、邑璃も憤慨している。
「……助けなかった奴が言う台詞か?」
「あう。だって困った顔が見物だったからつい……」
えへへ、と苦笑する邑璃。
「つい……じゃねえよ。ったく」
「でもまあ仕方ないかな~。なっちゃんは密かに人気あるから」
「は……?」
人気? 何のことだ?
「あはは。やっぱり気付いてなかった? 女子校特有の人気傾向なんだけどね。凜とした格好良さとか、美少女なのに男らしさを残しているところとか、そういうのって女の園ではかなりツボに嵌るみたいだよ~。男装姿を見てみたいって思う女の子はかなり多いはず。っていうか多かったね。結果として」
「そ……そうなのか……」
「男子校で可愛い男の子が同性愛の対象にされちゃうのと似たようなものかな」
「うっ……!」
「あ、身に覚えがあるんだやっぱり。そういえばなっちゃんは男子校にいたんだっけ?」
「お、思い出させるなよ……」
普段は男らしいつもりだったのに、女装メイドに扮装した途端に変なものを刺激してしまったらしいというか。とにかくあの頃の悪夢は俺にとってのトラウマだ。
「ごめんごめん。でもわたしはやっぱり女の子のなっちゃんが好きだよ」
「……嬉しくない」
男の俺は用なしかよ。
「……それにしてもこの胸、良くできてるよねぇ。さすがは恭子ちゃんチョイス」
もみもみもみもみ……。
「って、揉むな!」
偽物だけど!
でも気分的にちょっと……いや、かなり嫌だから!
「じゃあこっち」
さわさわさわさわ。
「尻を撫でるな!」
もみっ。
「揉むなっ!」
ちなみに尻は自前。
って何を言ってるんだ俺は!
「じゃあわたしのも揉む?」
そう言って挑発的な表情で自らの胸を寄せてくる邑璃。
「だ、だからそう言うのやめろってば! 俺にだって理性の限界ってものがあるんだぞ!」
相手が百合ということでかろうじて踏みとどまれているだけであって、この状況で襲いかからずにいられるというのはもう、かなりアレだと思う。
しかも襲いかかった場合は『責任を取れ』と悊人氏に釘を刺されてるし。
取れねえよそんなもん。
「だいじょぶだいじょぶ! その時はちゃーんとわたしが襲ってあげるから♪」
「って、俺が受けかよ!?」
「だってわたしってキャラ的に攻めだし?」
「だし? じゃねえっ!」
俺はキャラ的に受けだって言いたいのかよ!?
冗談じゃねえぞ!
「というわけで一緒に寝よ?」
「出ていけ」
その後、偽胸や自前尻を揉まれたり撫でられたり誘惑されかけたりしつつも、邑璃をベッドから追い出すまでにおよそ二時間を費やしてしまったのだった。




