本家と分家はライバル関係? 01
俺が塔宮学園に編入してから一か月弱。
六月に差し掛かる頃には、いいかげん女装生活にも慣れてきていた。
「……はあ」
慣れていいものかどうか、色々と微妙なところではあるのだけれど。
今は自習室で与えられた課題をぼんやりとこなしている。
邑璃を含めたクラスメイト達は、今現在は体育の授業中。塔宮学園の体育授業は二時間続けて行われるので、結構ヒマな時間が出来てしまう。
俺は勿論、不参加。
当然のことながら、教室で他の女子達と体操服に着替えるわけにもいかない。
一応は『喘息持ち』ということで診断書を提出している。もちろん偽造。悊人氏に用意させた。
生理などでたまに見学する場合は課題も出ないのだが、俺のように全く授業に参加しない生徒の場合は単位の問題があるので、授業の代わりに課題が与えられるのだ。
ただし、課題内容は体育とはあまり関係がなかったりする。
受験対策の模擬テストが二教科分。つまり一時間に一教科やってしまえ、ということだろう。
その課題も参考書さえ手元にあればそこまで苦労することもない。
俺は一時間もかからずに二教科分の課題を終わらせて、残り時間をもてあましていた。
「元気だなぁ……あいつ……」
窓からグラウンドの様子を眺める。今日の授業内容は陸上競技らしい。
六人ごとに百メートル走。
ちょうど今邑璃の番になっている。
小さな身体で一番前を突っ切っているのが邑璃だ。
「お、一番だ」
そして最後まで一番前を走り続けていた。運動神経は悪くないらしい。
笑顔で息を切らしている邑璃を見て、ちょっとだけ笑みがこぼれる。
「………………」
邑璃がこっちに気付いてぶんぶんと手を振ってきたので、俺も軽く手を振ってやった。目もいいらしい。
しばらくすると終了のチャイムが鳴ったので、長机に広げていた参考書類を片づける。このまま昼休みなのだが、教室ではまだみんなが着替えているだろうから戻るわけにもいかない。
「うーん……もう少しここにいるか……」
行きがけに買っていったコンビニのおにぎりは教室に置いたままなのだが、まあいいだろう。食べるのに時間のかかるものじゃないし、もう少しのんびりしていよう。
「ふあ……」
床に寝そべる犬の様な体勢で机の上に身体をもたれさせる。
なんともだらけた姿勢だ。とてもではないがお嬢様学校に通う生徒のすることではない。
「ま、いいか。別に俺、お嬢様じゃねえし」
庶民育ちの男がお嬢様らしく振る舞うのには色々と無理がある。
こうやって適度に気を抜いておかなければ。
などと自分に言い訳しつつだらだらしていると、
「あら? まだ誰かいましたのね」
「へ?」
いかにもお嬢様然とした女の子が自習室に入ってきた。




