お友達から始めましょう的な? 02
「服! 服を着ろ! まずは服を着ろ!」
タオル一枚で俺のベッドを占領する邑璃に向かって、風呂上がりの俺はそう叫んでいた。
「サービスのつもりだったんだけど?」
「いらんわ!」
タオルをずらそうとする邑璃の頭を割と強めに叩きながら、深々と溜め息をついた。
「痛い……」
叩かれた頭を抑えつつ涙目になりながら、恨みがましそうに俺を見る邑璃。
「女の子には優しくするようにって子供の頃に教えられなかった?」
「女の子には優しくしろと言われたことはあっても、変態に優しくしろと言われたことはない」
「わたし変態じゃないもん」
「黙れ万年発情期百合女。ついでに露出狂まで付け加えられたいか?」
「む~……」
男モードで容赦のない言葉を浴びせかけると、さすがに膨れっ面になる邑璃。そのままベッドから立ち上がってクローゼットの方に向かう。
しばらくするとちゃんと服を着た邑璃が戻って……
「って、何でネグリジェなんだ!」
「女の子の部屋着としては普通なはずなんだけど?」
「うぐっ!」
確かにネグリジェは婦人用寝間着だけど!
でも男の前で着る様なものじゃないだろ!
しかも分かっててやってるだろ絶対!
「曲がりなりにも女の子としてここに来たんだから、これくらいで動揺してたら話にならないよ?」
真っ赤になっている俺を見て、妖しく笑う邑璃。
くそう。絶対にからかってやがる。
今度はネグリジェ姿で俺のベッドに座った邑璃は、挑発的な表情で俺の方を見た。
「で? もちろんちゃんと説明してくれるんだよね?」
「……そのつもりだ」
「うん」
事情は説明する。
それは当然として……
「その前に聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「なに?」
「もしかして最初から気付いてたのか、俺のこと」
「へ?」
あまりにも邑璃が落ち着き払っているので、もしかしたら最初から男だとバレていたのかと思ったが、その反応を見る限りそうでもないようだ。
「いや、あんまり驚いてないみたいだからさ」
「あはは。えっとね、驚くよりも好奇心が勝ってるっていうか、うん。そんな感じなの」
「なるほど……」
「うん。しばらくはなっちゃんの息子が頭から離れないかも」
「忘れろ!」
秒速で忘れろ!
「最初に言っておくが、俺は別に女装趣味の変態欲求からこんな事をしている訳じゃない」
「……違うの?」
「違うわ!」
不思議そうに首を傾げるんじゃない!
「てっきり恭子ちゃんの同類かと思ったのに……」
「あいつと一緒にするなっ!」
怖気が走るわ!
「つーか俺に女装教育を叩き込んだのが恭吾なんだけどな……」
「え? じゃあなっちゃんってもう恭子ちゃんにツバつけられちゃってるの?」
「つけられてないっ!」
話が進まないなあ!
途中で腰を折るなよ!
しかも嫌な感じに!




