お友達から始めましょう的な? 01
ピンチのまま邑璃と向き合っている俺。
「………………」
「………………」
いや、あのさ?
こういう場合って、ほら、悲鳴を上げるとか、慌てて戸を閉めるとか、色々展開のパターンがあると思うんだけどさ。
何で俺の方ガン見してんのこの女?
具体的に言うと何で俺の息子をガン見してんのこの百合女!?
まあ、俺も俺で邑璃の裸とかガン見しちゃってはいるけどさ?
いやいや。見るだろ? この状況なら普通? なあ?
「……あのさぁ、とにかく戸を閉めて部屋に戻って欲しいんだけど」
「………………」
「それとも俺の方が入れ替わりで出ていった方がいいわけ?」
「………………」
邑璃も裸だし。これから風呂に入る予定だったのなら、俺が出ていけばいい。そう思ったのだが、
「いやあ。せっかくの機会だから観察できるだけ観察しておこうと思って」
「………………」
この状況で他に言うべき事はないのかコイツは!
「特に下半身あたりを♪」
「出ていけ!」
俺は浴室の入り口脇にかけていたタオルを乱暴に邑璃へと投げつけて、そのまま戸を閉めた。
「ぶはっ!」
顔面にタオルが命中した邑璃はくぐもった声を上げていた。
……つーか。バレたし!
この上なく決定的な証拠付きで(息子のガン見)でバレたし!……
しかも裸を見たのはお互い様のはずなのに俺の方だけかなり損したような気分になってるし!
何だコレ? 何だこの状況!?
つーかどうするよこの後!?
「……はあ。覚悟決めるしかないよな」
とにかくバレてしまったものは仕方がない。
幸い、邑璃の方はあまり動揺もしていないみたいだし、こうなったら事情を説明するしかないだろう。
邑璃が部屋の方に戻っていることを確認してから浴室を出る。
「む……」
女装用のウィッグと眼鏡を装着していこうかとも思ったが、事情を説明する上では邪魔になりそうなので止めておいた。
こうなったら正真正銘男として、邑璃と向き合うしかない。
服装も女装用ではなくジーンズとTシャツのみ。
「さて! 行くか!」
意を決して洗面所から部屋の方に移動すると、
「あ、なっちゃん遅かったね」
「って! なんで服を着てないんだお前は!!」
タオル一枚巻いただけのあられもない姿の邑璃が、よりにもよって俺のベッドに座っていやがった!




