万年発情期ヒロインへの憂鬱 06
「つ……疲れた……」
全ての授業を終えて寮に戻る頃には、俺の気力も体力もほぼゼロになりかけていた。ゲージ表示機能があるとしたら、赤で点滅状態だ。
HP残量・1/100みたいな。
女の園に男が一人紛れ込むことが、ここまで疲れることだとは……。漫画とかのパターンだとそのうちハーレムちっくな展開になったりするのだろうけど、俺自身が女装しているのでそれはまずありえない。
ハーレムどころか邑璃の所為でクラスメイトをはじめとする他の女子からは避けられまくってるし。
「……いや、まあ、それも悪いことばかりじゃないけどさ」
友達ができる可能性は遠ざかってしまったが、それはそれでいいのかもしれない。
はっきり言って彼女いない歴イコール年齢の俺には、いきなり女友達を作るのはハードルが高過ぎる気がするし。下手に仲の良い女子が出来てボロが出ても困るし。
「前途多難というか……なあ……?」
ベッドでごろごろしながらそんなことをぼやく。
「………………」
ベッドにはまだ邑璃の残り香があった。
「……あいつはあいつで大きな問題の種だしなあ」
あの万年発情期百合女の誘惑をこの先どうやって避けていくかも、大きな課題だ。
見た目は可愛いし、素直に甘えてくる姿もまあ、男心をくすぐられなくもないのだが。
しかしあいつはあくまで『女』としての俺を好きなのであって、男として接するわけにはいかないのだ。
しかしあの調子で襲われ続けていると、理性の限界が来るのは目に見えてるしなあ。
「………………」
ダメだダメだと思いつつも、朝に抱きつかれた時の胸の感触が思い出される。
「いかんいかん!」
背中に当たる柔らかい二つの感触。
女の子特有の、甘い香り。
その名残の残るベッド。
「どわあああああっっっ!」
俺は勢いよく起き上がって頭をブンブンと振った。
いかんいかんいかん!
あいつは百合! あいつは百合!
どんなに可愛くてもあいつは百合なんだってば!
さかりのついた思考を何とかするべく、シャワーでも浴びることにした。
茹だった脳みそを冷やせば、多少はマシになるかもしれない。
煩悩退散煩悩退散煩悩退散……ついでにどこぞの百合娘も退散させてほしい……
どこぞの修行僧が冷水の滝に身を沈めて念仏を唱えるが如く、シャワーの水を頭から浴びていた。
「えっぐしっ!」
浴びていたのだが、すぐに寒くなってお湯に切り替える。
ザ・根性無し。
「まあいいか。ひとまずヤバい思考は頭から抜けたみたいだし」
このままひとっ風呂浴びてしまおう。慣れなければならないとはいえ、やっぱり女の子の後に入るのは気分的にアレだし。
「……つーか、この生活に慣れる日なんて来るんだろうか」
来ない様な気もするし、来てしまったらそれはそれで問題があるような気がするのだけど。
「まあ、ここまで来てしまった以上、やるしかないけどな」
あと二年弱。女としてこの学園で過ごす。
そうすれば俺は晴れて自由の身だ!
悊人氏からそこそこの報酬ももらえるだろうし、その報酬で会社とか起こしてみても面白そうだ。
うん。それはとても楽しい未来だ。
現実逃避にはもってこいなくらいに。
「なっちゃ~ん! お風呂入ってるの~?」
砂糖菓子並に甘い未来に思いを馳せていると、嫌でも現実に引き戻す声が聞こえてきた。
邑璃の奴、もう帰ってきやがった。
そろそろ上がろうかと思っていたが、もう少しここに避難していた方がいいかもしれない。
……などと考えていると、
「えっへっへ! 来ちゃった!」
「っっ!!???」
「一緒に入ろ♪」
「!!!!???」
いつのまにかすっぽんぽんの邑璃が浴室に乱入してきていた。
「………………」
「………………」
「………………………………」
「………………………………」
俺→裸。
邑璃→裸。
二人ともタオルなんて気の利いたものは装備していません。
掛け値なしの素っ裸同士であります。
つまり、まんま男の身体を邑璃に見られている状況であります。
うん。要するに、ピンチって奴?




