次男だからって人身御供かよ!? 02
「おお。もう迎えに来られたのですかな?」
「ええ。悊人様のご命令で、一刻も早く棗生様を塔宮家にお連れするように言われまして」
俺の肩を掴んでいたのは、身長百九十くらいの大男だった。黒い髪をビシッとオールバックに決め、黒いサングラスをかけ、上下黒いスーツを着用している。頭のてっぺんから足の先までお偉いさんの部下という出で立ちだった。目元が隠れているのでどうにも年齢が読めないが、恐らくは三十代前半くらいだろう。つーかいつの間に背後に立っていたのだろう。むしろ気配のなさが恐ろしい。
「初めまして棗生様。本日より短期間ではありますが棗生様の世話役を仰せつかっております、新堂と申します」
「はぁ……」
丁寧な自己紹介は恐縮だが、取り敢えず俺の両肩から手を離して欲しい。背後から体をがっちり拘束されている感じがして、非常に気分が悪い。
「早速ですが塔宮家までご同行願えますかな? 主よりなるべく急ぐように言われていますので」
「拒否権は……なさそうだなぁ」
逆らったところでこの体格差では(俺の身長は百六十八センチだ!)どうやったって無駄な抵抗なので、大人しく従うべきだろう。それにしばらくクソ親父の顔は見たくない。
「分かった。取り敢えず手を離してくれ。荷物をまとめてくるから」
二度と戻ってこない可能性もあるので必要な荷物くらいは持っていきたい。
「主より急ぐようにと仰せつかっております。必要な物があれば当方で全て揃えますので、どうかこのまま同行を願います」
言葉こそ丁寧だが、有無を言わせない雰囲気の新堂だった。
「……分かった。着替えとか日用品は必要ないんだな。だがそれでもあんた等に揃えさせるわけにはいかないものが多少はある。少しだけ時間を貰えないか?」
「……差し支えがないようでしたら教えていただけませんか?」
「…………言いたくない」
「なるほど。思春期少年の宝物でございますね。ですが塔宮家にそのような物を持ち込ませる訳には参りませんので、このまま連行させていただきます」
「うわあっ!?」
新堂は俺を抱え上げて、玄関の方へと移動する。連行っつーか拉致だよ! 誘拐だよ! 人攫いだよ!
「つーか何で分かった!?」
「そりゃああからさまに目を逸らしつつ頬を僅かに赤らめていれば、誰だって分かりますよ」
「う……」
的確すぎる突っ込みに恥ずかしさ倍増だった。穴があったら埋まりたい。
「さらばだ我が息子よ。パパはいつでもお前の幸せを願っているぞ」
わざとらしくハンカチで目元を拭いながら俺を送り出すクソ親父。つーかマジでくたばれ!
「伽室城フーズは海遙がしっかりと継いでくれるからな。お前はしっかり塔宮家にご奉仕してくるんだぞ~」
「潰れちまえっっっ!!!」
海遙というのは俺の兄貴だ。大学二年生で学費を稼ぐ為に現在バイトに勤しんでいる苦学生である。海遙も俺もこんな奴の跡を継ぐ気は更々無いが、やはり俺があっさり売られたのは次男だからという理由が大きいのだろうと思うと尚更腹が立ってきた。これじゃあまんま人身御供じゃねえか。