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百合色革命  作者: 水月さなぎ
百合色革命 第一部
18/92

万年発情期ヒロインへの憂鬱 04

「おはよ~、なっちゃん」


「おはよう、邑璃さん。起きたのならさっさと退いてほしいのだけど」


「もーちょっと抱きついていたいんだけどな~」


「却下」


 再び抱きついてこようとする邑璃を今度こそ引き剥がし、俺は素早くベッドから下りた。


「あ~ん。なっちゃんのいけず~!」


 俺の残り香の残るベッドで鼻をくんくんさせながら、邑璃は悶えていた。


 その姿を見て、


 …………うん。


 コレに発情するほど、俺も節操無しじゃない。


 と、自分を納得させつつ安心した。




 あまり時間的余裕はないのだが、朝からシャワーを浴びることにした。


 シャワーを浴びないと落ち着かない、とかそういう理由ではない。


 着替えの際に鍵の掛かる場所に入る口実が欲しかっただけだ。


 手早くシャワーを浴びて身体を拭き、塔宮学園の制服を着る。ウィッグをつけてニッコリ笑えば美少女の出来上がりだ。


「………………」


 いや、自分で美少女とか言うのもどうかと思うんだけど、でも実際、こうすると自分じゃないくらい美少女に仕上がってるんだよなぁ。


 鏡の前にいるのが自分だって言うのが信じ難いくらいに。


 重ねて主張するが、別にナルシー感性に目覚めたとかじゃないから!



「なっちゃん? そろそろ出てこないと朝ごはん食べ損ねちゃうよ」


 鍵をかけたドアの向こうから、邑璃が呼びかけてくる。


「今出るから。先に行っても構わないけど」


「やだ! 一緒に行くの!」


「………………」


 昨日の昼間では気遣いの出来る優しい娘、という印象だったが、今となってはただの駄々っ子にしか見えない。


 ため息混じりに眼鏡を着用して、浴室の鍵を開けた。


「遅いよなっちゃん」


「別に待ってて欲しいなんて頼んでないけど」


「私が待っていたいの!」


「むしろ先に行ってくれた方が助かるくらいなんだけど」


「ストーカーになってでも付いていくからね」


「何て迷惑な……」


 などというやりとりを繰り広げながら食堂へ向かった。


 気遣いの要らない間柄、みたいな会話に聞こえないこともないが、俺にとってはそこはかとなく真剣勝負なやりとりだ。


 何せ、油断すれば昨日の二の舞になることが目に見えているのだから。


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