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百合色革命  作者: 水月さなぎ
百合色革命 第一部
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女の園は拷問空間!? 06

「う…………」


 と、思うのだが、浴室を開けた途端、さっきまで邑璃がいたせいかフローラルや女の子っぽい匂いが残っていて目眩がした。


「い、いや、気にしたら負けだ」


 この先何度だって起こる事なのだから、慣れておかなければならない。たとえそれが初日だろうと!


 俺は覚悟を決めて浴室の中に足を踏み入れる。湯船の中にはたっぷりのお湯が注がれていた。俺が入ることを考えてお湯を足してくれたのだろう。


「これは……入れって事だよな……」


 正直邑璃が入ったあとの湯船に入るのはキツいものがあるのだが、ここまでしてもらっておいて無駄にするのも主義に反する。湯船に足を入れて、そのまま身体ごとつかる。


「………………」


 何だか湯船の中まで邑璃の匂いがするような気がしてきた。錯覚だと思いたいがさっきまで邑璃が入っていたのであながち否定も出来ないのが難しいところだ。


 って、女の子の匂いに興奮してるなんて、すわ俺は変態か!?


 男ならもっと胸とか! 尻とか! そのあたりに興奮しなければ!


 って、何を考えてるんだ俺は!


 ブンブンと頭を振って変な妄想を振り払う。そして鏡に映った自分の姿を凝視する。


「男……だよな。どこからどう見ても」


 ウィッグを外した短髪、顔立ち、骨格、体つき。どこを見ても男だと思う。それなのにどうしてあそこまで女装が嵌ってしまうのだろう。アレさえなければ俺がこんな目に遭うこともなかったのに。


「女子校、か……」


 果たしてこんな調子で上手くやっていけるのだろうか。いや。ここまで来てしまった以上は何としてでも正体を隠し通さなければならないのだが。


 だってほら、バレたら俺変態扱い確定じゃん?


 女装して女子校に通う変態男子!


 そんな汚名はさすがにゴメンだ!


 俺だって好きでこんな事してるわけじゃない、という言い訳は多分通らないだろう。


「卒業までは何としてでも隠し通さないと」


 俺は新たに覚悟を決めて、風呂から上がった。



 風呂から上がった俺はスウェットに着替えていた。予め衣類には胸の詰め物が仕込まれているので、その姿でも体格を気にする必要はなかった。


 下着についてはもちろん女性用を使用していたりはしない。衣類店でスパッツがあったのでそちらを一時的に代用だ。あれならボクサーパンツだと思えなくもない。いや、かなり無理があるけど女性用パンツだけはマジ勘弁して欲しい。


 早く届けボクサーパンツ!


「あ、上がったんだね。はい、烏龍茶。風呂上がりには冷たい飲み物が欲しくなるでしょ?」


 邑璃はよく冷えた烏龍茶のボトルを俺に渡してくれた。


「あ、ありがとう」


 確かに風呂上がりの冷たい飲み物は最高なので、俺は素直に礼を言っておいた。ごくごくと一気飲みする。


「うわあ、豪快な飲み方だね!」


「あ…………」


 しまった。ついつい男仕草になってしまった。やっぱり細かいところまでは徹底できないな。


「あ、ごめん。別に変だって言ってるわけじゃないから」


「ええ……」


「棗生さんって時々仕草が男前だよね」


「う……その、男兄弟の中で育ってるから、どうしても抜けきれない部分があって……」


 ある意味嘘ではない。俺は男兄弟で育っている。一部真実を隠しているだけだ。主に俺自身の性別だけど。


「ううん。可愛くてカッコイイと思う」


「う……」


 それでも可愛い発言は外れないんだな……。


 烏龍茶を飲み干した俺はそうそうにベッドへと向かう。のそのそと布団の中にもぐり込んで自分のスペースの明かりを消した。


「あれ? もう寝ちゃうの?」


「ええ。今日は随分と疲れたから、早めに休むことにする」


「そっか~。じゃあおやすみだね、棗生さん」


「ええ、おやすみ、邑璃さん」


 長かった一日が終わる。俺に気を遣ってくれたのか、邑璃は自分のスペースの明かりも消してくれたようだ。何だかんだ言ってやっぱり気遣いの娘なんだろうな。


「………………」


 俺がまどろみの中に入ろうとすると、ベッドの中でごそごそとした感触があった。


「?」


「えへへ」


「っ!?」


 ベッドの中にははにかみ顔の邑璃がいた。


 いやいやいやいや! 何だこれ! 何だこの状況!?


「一緒に寝てもいい?」


「っ!?」


「同室の子って久し振りだから、ちょっと嬉しいの。だからもっと仲良くなりたいな」


「う……その……」


 い、いかん。今は眼鏡を外しているから咄嗟に女モードになれない。


「邪魔しないから、ね?」


「う…………」


 どんな拷問だコレは!?


 つーかこの女他人に軽々しくなつきすぎだ!


「駄目?」


「だ、駄目って言うか、困るって言うか……」


 眼鏡はないし、突然の事態に動揺しまくりだし、一体俺はどうすればいいんだ!?


「うん。やっぱり棗生さんは可愛いな……」


 邑璃は突然俺にのし掛かってきて両頬を掴んでくる。


「………………」


 あれ? 何だか非常にイヤな予感がするのだが……。


「私ね、もっと棗生さんと仲良くなりたい。ねえ、なっちゃんって呼んでもいい?」


「えっと、い、いいけど……」


 うわ、何だこれ何だこれ…………。何で邑璃は徐々に顔を近づけてきているのだろう!?


「なっちゃん……」


「………………」


 邑璃は更にその顔を近づけてきて、そして…………


「大好き」


「~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!??????」


 その唇を俺に重ねてきた。


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