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百合色革命  作者: 水月さなぎ
百合色革命 第一部
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女の園は拷問空間!? 05

 食事を終えて部屋に戻ったところで、もう一つの恐怖イベントが俺に襲いかかってきた。


「ねえ、棗生さん! 一緒にお風呂入ろうよ!」


「っ!!??」


 お風呂イベント発生! つーか何だこの脅威の連続発生率! いい加減マジで逃げたくなるぞ!


「お、お風呂……?」


「うん! 一階東側に露天大浴場があるんだよっ! 折角だから一緒に行こうよ! なんと天然温泉なんだよっ!」


「う……」


 天然温泉は捨てがたいが、しかしその申し出だけは断固拒否しなければならないだろう。いや、無理無理無理無理! 俺を殺す気か!


「ご、ごめん。私、人前で肌を見せるのはちょっと……」


 つーかそれ以上に見るわけにはいかないっつーか!!


「えー? 恥ずかしがらなくてもいいのにぃ」


「ご、ごめん」


 いやいやいやいや恥ずかしい以前の問題だから!


「どうしても駄目?」


「う……無理…………」


 上目遣いで子犬みたいな態度を取られても無理なもんは無理っ!


「そっか~。残念だなあ~」


「ご、ごめんね」


 というか俺が謝るのも何かおかしい気がするけど。まあいいか。丸く収まるのならそれでも。


「というか、もしかしてお風呂ってその大浴場だけなの?」


 だとしたらもの凄く困るのだが。外出して銭湯に行かなければならない。そうなると人前で肌を見せる云々の言い訳が通らなくなってしまうのだが……。


「ううん。各部屋に付いてるよ。温泉じゃないけどね」


「あ、そうなんだ……」


 取りあえず安心。部屋内の浴室を使用すれば大浴場に行く必要も外出して銭湯に行く必要もないわけだ。


「じゃあ棗生さんお風呂先に使っちゃっていいよ。わたしは後で入るから」


「え? 邑璃さんは大浴場の方に行かなくていいの?」


「う~ん。そうしたかったんだけど、一人だとなんだか寂しいから今日は部屋のお風呂にする」


「そ、そう……」


 何だか軽く責められてる気がしないでもないが、気にしないことにしよう。


「じゃあお先に使わせてもらうね」


 正直女の子が入った後に風呂を使うのは精神衛生上よろしくないので、この配慮は助かる。俺はバスタオルを持って浴室に向かおうとするが、その時扉を叩く音が聞こえてきた。


「はーい。どちら様ですか?」


 邑璃が出る。


「どうも。塔宮学園宅配部です。荷物のお届けに上がりました」


「あ、棗生さんの荷物だね」


「そうみたい……」


 俺は入浴準備を中断して扉の方へと向かう。購入した物を思い出すと凄い荷物量になっているはずだ。風呂は邑璃に先に入ってもらって、その間に整理した方がいいだろう。


 俺はドア先で大量の荷物を受け取って、俺のスペースに移動させる。パソコンなどの重たい荷物を苦もなく持ち上げているのを見て、邑璃は何やら感心しているようだ。力持ちとでも思われているのだろうが、男としてはこれぐらい楽勝だ。


 段ボールが部屋の半分ほど積み上がったところで、邑璃の方を振り返った。


「先に荷物の整理をするから、邑璃さんお風呂先に使って」


 先に入るつもりだったが、こうなると仕方ない。荷物の整理で汗をかくのだから後から入った方が効率がいい。

 

 女の子の後というのは非常に気まずいものがあるが、どうせこの先何度もあるだろうから覚悟を決めて慣れるしかない。


「手伝うよ?」


「大丈夫。一人でやった方が物の配置とかちゃんと覚えられるから」


 正直こういう作業は一人の方が効率がいい。


「そっか。じゃあ先に使わせてもらうね」


「ええ。ごゆっくり」


 邑璃は少しだけ名残惜しそうにしながら浴室の方へと向かっていった。浴室が閉まる音を確認してから俺は盛大な溜め息をついた。


 眼鏡を外してベッドに大の字になる。


「はあーっ! 何だこれ! 滅茶苦茶疲れるぞ!」


 まだ一日目なのにもう疲労がピークに達している。ボロも何回か出してしまっているし、本当にこのまま女子校生活なんてやっていけるのだろうか。


「いや。やっていくしかないんだよな……」


 こうなってしまった以上後には退けない。とことんまでやるしかないのだ。俺はベッドから起き上がって届いた荷物の開梱作業に取りかかった。


 まずはパソコン。箱から取り出し梱包材を引き剥がし、手際よく机にセットする。インターネット用のジャックは机のすぐ側にあったのでそこに繋いだ。ディスプレイ、本体、キーボードなどの周辺機器配線を確認してから電源を入れる。


「うわ。もうセットアップしてあるし……」


 てっきりOSのセットアップからはじめなければならないと思っていたのだが、しっかり処理済みだった。サービス良すぎだ。さっそくインターネットに接続してみる。


「おお、繋がった」


 とにかく一刻も早く繋ぎたかったのでこれは助かる。しかも結構速度あるし。多分光かな……。


 ネットショップのページを開いてから男物の日用品の注文を開始する。これは邑璃がいるときには出来ないことだから先に風呂に入ってくれたのは助かったと言えるかもしれない。最低限下着と、エロ本は……万が一発見された時のことを考えると止めておいた方がいいので断念した。百合と間違えられたらたまったものではない。


 それらを注文してからお急ぎ便で届くようにした。請求はもちろん塔宮家に回しておく。


 サーバー上のメールアドレスから注文確認をしてからパソコンの電源を落とした。


「さてと。急ぎの用が終わったところで残りの荷物を整理するか」


 後は文房具や日用品ばかりなので楽なものだ。手早く整理を終えたところで再びベッドに大の字になった。


「うっ……!」


 落ち着いてしまったのが失敗だったのかもしれない。さっきまでは作業に集中していたから気にならなかったのだが、いざ休息に入って静かになると、浴室の水音が嫌でも耳に入ってくるのだ。


「うわ……」


 壁一枚隔てた向こうで女の子が風呂に入っている。しかもその後自分が使うのかと思うと変な感じで興奮してしまう。


「つーか、改めて考えると凄い状況なんだよな、これ……」


 自分が女装させられて女子校に入れられるという事情が大きすぎて頭から排除されていたが、よくよく考えるとこれは女の子と同じ部屋で日常を過ごすと言うことでもあるのだ。


 風呂の水音だけならまだ可愛いものだが、うっかり下着のままで出てこられたりしたら俺はどうすればいいのだろう。女子同士の部屋だし、ありえる。実家にいた時だって俺や海遥や親父は風呂上がり下着姿だったりするし……。


「た、頼むから服を着てから出てきてくれよ……」


 どこぞの二次元世界のボーイ・ミーツ・ガール的展開は全く期待していない。むしろそんな展開になったら困るからっ!


「………………」


 そんな感じである意味ドキドキしながら邑璃が出てくるのを待っていたのだが、一向に出てこない。すでに風呂に入ってから五十分ほどが経過している。


「……そっか。女の子の風呂って長いんだっけか……」


 肌の手入れやら髪の手入れやらでやたらと時間を取るらしい。俺たち男はカラスの行水でいいのだが、女の子には女の子の事情があるのだろう。


「って、そりゃ俺も長風呂しろって事か……?」


 いやいや、まあ人それぞれだし、無理に長風呂にする必要もない、かな?


 そんな事を考えている内に浴室のドアが開いた。俺は慌てて起き上がり眼鏡を掛ける。


「ふあ~。気持ちよかったぁ~」


「………………ほっ」


 出てきた邑璃はちゃんと寝間着を着てくれていた。しかも胸元まで締まる露出の少ないタイプの寝間着だ。助かった……。


「あ、もう荷物の整理終わったんだ。早いねー」


「そりゃあ、一時間もあればさすがにね……」


「あはは。私なら三時間はかかっちゃうよ~」


「それはかかり過ぎじゃ……」


「だってどこに何を置くか迷っちゃうし」


「そ、そう……」


 女の子はよく分からないことで悩むものらしい。勉強になるのだがあまり勉強したくない内容である。見習うのも何だか違う気がするし、調整が難しいな。


「じゃあ私も入ってくる」


「うん。ごゆっくり~」


 予め用意しておいた入浴セットを手に取って俺は浴室へと向かう。


 さっさと入って今日はもう寝てしまおう。


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