第三十八話 主砲射撃始め!!
明日から来週の月曜日まで、用事で広島に行く事になりましたので、8月6日以外は更新を停止いたします。
ご理解の程宜しくお願いします。
電探に機影が映ってから約5分後、防空指揮所の見張り員が接近する敵機を望遠鏡で捕えた。
大和 第一艦橋
見張り員『防空指揮所より艦橋、12時の方角約7㎞より敵機と思われる機影を確認。速度約440㎞/h、注意されたし!』
この報告により、艦橋は更に慌ただしくなった。
通信兵「既に全艦対空戦闘用意完了、大和の主砲の射程距離に入ります!」
小沢「射程突入と同時に大和以下戦艦部隊は一斉射撃、敵偵察機を撃墜する!」
大和の主砲の最大射程は42,000m、42㎞にも及ぶ。しかし、対空砲弾は5㎞しか届かない。しかし、敵機にとってそれは慰めにはならなかった。
日本艦隊より南西に約6㎞、ホッピング少佐の乗るドーントレス急降下爆撃機は日本艦隊を探して北上を続けていた。
見張り員
「機長、前方に航跡があります。多数の船が近くにいます。」
ホッピング
「よし、このまま高度を落として探す。」
高度3,000mから2,000mに下げてホッピング機は索敵を続行した。
見張り員
「!!機長、距離約6㎞に艦隊発見!」
ホッピング
「分かった。もう少し近付くぞ。」
最大速で艦隊に近付くホッピング機、そして望遠鏡で確認できる距離に来たときだった。
見張り員
「中央の大型艦、戦艦・・・ではありません!両舷に飛行甲板らしき物を確認!!」
ホッピング
「そいつは新型の航空戦艦だ!大きさは?」
見張り員
「約300m、4隻います。主砲は3連装3基。周りに連装4基のコンゴウクラスの戦艦を確認!駆逐艦は約20隻!」
ホッピング
「エンタープライズに今の内容を打電しろ!」
見張り員
「了解!」
ホッピング
「これより敵艦隊と接触する。」
速度を保ったまま、ホッピング機は日本艦隊に近付いた。
見張り員
「機長、通信終了しました。」
ホッピング
「よし!」
このまま飛んで、1隻でも沈めようと考えているホッピング、しかしそれは叶う事は無かった。
敵機はとうとう射程圏内に突入した。大和型全ての主砲は砲弾を供給し終え、発射の時を待った。
隼は、実際に主砲射撃を防空指揮所から見るために登って来ていた。
ふわり、と横に感覚があり、見てみると大和が手を掴んでいた。
微かに震えている大和の手、戦闘艦の宿命とも言えよう。
殺したくない相手を殺す。戦争とは、悲しい物だ。
そう言う思いを、悲しい顔をする大和から感じた隼は、大和の手を掴み返した。
隼「大丈夫、がんばれ。」
大和「・・・はい。」
平和のために戦う。不条理でも構わない。それが、正しいのなら・・・
小沢「全艦に発令。」
静まり返った艦橋で小沢は言った。
小沢「・・・全艦主砲射撃始め!!」
馨「撃ち方始め!!」
前方3連装2基6門の、初射撃の瞬間だった。
空を切るその音は死神の鎌の如く、光る閃光は太陽の如し。
5㎞離れていたホッピング機は、大和型4隻の対空砲弾を食らい、文字通り消滅した。ホッピングも見張り員も何が起こったのか分からずにこの世から消えた。
風圧だけで人を殺傷できると予測されていた大和型の46㎝主砲、約40m離れていた防空指揮所にも、凄まじい音と風圧がかかった。
しかし、40mの高さと、耳宛がその場にいた全員を守った。
とは言うものの、全員が全員倒れてしまっていたのだが・・・
隼も例外では無く、15m測儀計の付け根に倒れていた。
隣には、大和が目を閉じてそこにいた。どうやら気絶してしまったらしい。
なんとか立ち上がった隼は、未だ残る対空砲弾の後を眺めていた。
分厚いガラスが震える程の風圧が艦橋を襲った。
大丈夫と分かっていても思わず伏せてしまった。
目を開け立ち上がると、次の瞬間だった。
カッと24発の砲弾が一気に炸裂した。
視界が一瞬眩んだが、すぐに元に戻った。
電探員が反応消滅の伝令を持ってきたとき、艦橋に微かに騒めきが起こった。
動揺していたが、すぐに各員持ち場に戻った。
これが大和の力、航空機を一撃で消滅させてしまった。
小沢(恐ろしい物だ・・・)
消え行く空の花のあと、烈火のあとの静けさか。
かくも儚き一輪花は、明日の日本かアメリカか、知る術なく散っていったのだった。
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