第二十九話 鬼の金剛と姐御肌の扶桑
昨日は更新出来ずにすみませんでした。
週末に1話投稿します。
1941年12月11日、臨戦体制が発令されてから丸一日が経過した。真珠湾内は何時太平洋艦隊がやって来ても対応出来る様に、準備が急ピッチで行われていた。
隼の作戦を元に、航空戦艦大和型4隻と高速戦艦金剛型4隻は燃料の補給を優先し、大和型の航空機は全機メンテナンスに入った。
1時間置に潜水艦と九八早警から、周辺の情報が日本海軍中央太平洋基地(旧アメリカ海軍基地)と、真・八八艦隊旗艦大和並びに長門に入ってきていた。
大和 通信室
昨日の騒動で、野田艦長が倒れてしまった為、急遽大和の臨時艦長になっていた。
流石の隼も、昨日の定雄の言動には呆れた。国民を含めて全員が一丸とならなければならないのに、女性と言うだけで差別する事が許せなかった。
それはともかく、臨時と言っても艦長は艦長。入ってくる情報は聞き漏らしの無いようにしなければならない。
約2時間、通信機とにらめっこしていたが、流石に重要な情報は入って来なかった。
休憩しようかと思っていた時、思いがけない来訪者があった。
金剛「望月、いるか?」
隼「あ、金剛さん。どうかなされましたか?」
金剛「今大丈夫なら、付き合ってくれないか?」
隼「いいですよ。」
話が聞こえなかった隅にいた通信兵に後を頼んで、隼と金剛は大和の後艦橋へ向かった。
大和 後艦橋
常夏のハワイとは言ったものの今は12月、流石に北風は肌寒い。それでも夏用の軍服でも十分だった。
対岸のフォード島には、昨日の作戦を成功に導いた強襲揚陸戦艦の扶桑と山城が停泊していた。
そんな中、金剛は扶桑を見ながら苦笑いをしていた。
金剛「望月、お前は扶桑少将の事、どう思う?」
隼「扶桑さん、ですか・・・」
はっきりとは言えないが、何だか他の艦魂には無いオーラが出ている気がする。
金剛「扶桑少将はな、根っからの姐御肌だと思うんだ。」
隼「姐御肌?」
少し驚いた様に隼は訊いた。
金剛「3年前に、軍令部が荒れたのは知っているな?」
こくりと、隼は頷く。
金剛「3つの艦艇補充計画があって、どれを選ぶかでお互い言い争ったのだ。」
3年前、『140―A』型戦艦の船体を争って、軍令部は荒れた。それを抑えたのが、小沢長官だった。
金剛「艦魂参謀本部も荒れて、自分ら4人姉妹はマル4計画を強引に推薦した。」
当初提出されていたマル4計画は、改・八八艦隊計画とも呼ばれ、大艦巨砲主義の最高峰と呼ばれた。
金剛「そんな艦魂参謀本部を抑えたのが、扶桑少将だ。」
懐かしむ目で扶桑を見ながら金剛が言った。
金剛「だが、自分はどうしても納得出来なかった。だから、扶桑少将に楯突いた。」
〜回想〜
金剛「取り止めとは、納得出来ません!」
階級上、金剛の方が上だが歳上に対して敬語を使うのは当たり前の事だ。
扶桑「取り止めではありません。代替案と言っていますので、替りの戦艦は補充します。」
金剛「しかし、アメリカは軍事大国です!このまま、戦艦の補充が遅くなれば、敵に利するのみです!扶桑少将、小沢長官を説得致してください!」
金剛「その直ぐ後だった。扶桑少将が怒鳴ったのは。」
悪戯がばれた子どもの様な笑いを浮かべて、扶桑は続けた。
金剛「その時思ったんだ。この人は、姐御肌だとな。」
隼「そんな事が・・・」
金剛「昔の話だ。扶桑少将が覚えているかも分からんからな・・・」
それ以来苦手なのだがな、と付け足しを言った彼女は静かに後艦橋を後にした。
隼(鬼の金剛と姐御肌の扶桑、か。面白い組み合わせ、かな?多分・・・)
これからの艦隊勤務に1つ楽しみが増えた隼は、再び仕事に戻るため、金剛と同じ様に後艦橋を後にした。
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