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第二十八話 臨戦態勢に移行

 再び、いざこざが発生します。

 キンメル大将に小沢大将の電文が届いて約30分後、大和の艦橋前に2人の人物が立っていた。

馨「ですから!長官はご多忙なので後程・・・」

定雄「いいから退け!女では話にならない!」

 無理矢理艦橋に入ろうとする定雄と、それを断っている馨が言い争っていた。

 階級上、馨の方が上なのだが定雄は女相手に敬語なぞ使えるかと、例え中将でも下士官の様に見ている。

馨「第一、一体何の権限が有るんですか?!恐れ多くも大将ですよ!」

定雄「大将だろうが、敵利行為を行ったんだ!本国へ送還するに決まっているだろう!そんな事も分からないのか!!」

馨「敵利行為?馬鹿馬鹿しい!相手に艦隊の陣容を教えた訳でも無いのに、敵利行為な訳無いでしょう!!」

定雄「似たようなものだ。第一、貴様はなぜ俺に対して上から目線なのだ!女は男に服従すれば良いのだ!」

馨「そんな考えしか出来ないとは、本当に貴方は無能ですね!」

 白熱した議論が交わされている中、定雄の後ろから1人の男がやってきた。

隼「野田中将、それに横森中佐も。一体何事ですか?」

 明らかに騒動の原因を知っているのに、わざとらしく訊いてくる隼。それに気付かない定雄は隼に話した。

定雄「丁度いい、隼。この分からず屋の女を営倉にぶちこんでおいてくれ。」

隼「・・・嫌です。」

定雄「何?!」

 はっきりと拒否した隼。その目には怒りの炎が灯っていた。

隼「大和艦長の野田馨中将を営倉に入れる理由はありません。それに貴方は中佐です。階級は野田中将の方が圧倒的に上です。例え女性でも、敬語を使わない理由にはなりません!」

 語尾を強めた隼だが、定雄は呆れた様に返した。

定雄「は?何を言っているんだ、この阿呆が!たかが女に何で敬語を使わなければならない?女は内地で、男の留守番でもしてればいいんだよ!」

 これに、隼は堪忍袋の尾が切れた。

隼「横森定雄中佐に申し上げる!!恐れ多くも、大元帥閣下で有らせられる天皇陛下より承りしこの軍艦の、同じく天皇陛下より任命された野田馨中将に対して侮辱を働く事は、統帥権干犯と思われよ!!」

 統帥権干犯、大元帥である天皇陛下は陸海軍の統帥権を持っている。今まで発動した事は無いが、神で有らせられる天皇陛下の権利を侵犯する事は国賊となり、あらゆる権利が剥奪されるだろう。

定雄「き、貴様は何を言っているのだ?この俺が、非国民だと言いたいのか!?」

隼「その通り。お分かり頂けましたら、お帰りください。」

定雄「くっ・・・」

 苦虫を噛み潰した様な顔で定雄は隼の横を擦り抜けて行った。





  大和 第一艦橋

 小沢治三郎は、太平洋艦隊のキンメル大将に対して、果たし状同様の電文を入れた。同じ海軍軍人同士、正々堂々戦いに望みたい、そういった考えが小沢にはあった。

小沢(太平洋艦隊到着まで後4日、日米初の海上戦闘になるな・・・)

 この戦闘には負ける事は許されない。何としても太平洋艦隊を撃退しなければ、皇國の未来は無い。

 そう考えている小沢だったが、一枚扉の向こうの騒動には気が回らなかった。

隼「小沢長官、大変です!」

小沢「どうした、望月大佐?」

 鼻息荒く入ってきたのは、隼だった。

隼「野田艦長が、気を失ってしまいました!!」

小沢「何だと!?」

 全く予想していなかった事態に小沢も狼狽えた。





小沢「成る程、そんな事が・・・」

隼「彼はあまりにも差別的です。女性の軍人が許せない、典型的な保守派です。」

 実際問題、女性軍人の採用は賛否両論だった。採用開始は1935年からだったが、保守派の妨害があった為思う様に集まらなかった。

 しかし、就任して間もない山本五十六総理大臣は保守派の掃討を決定。『昭和前期の大改革』と後に呼ばれる程、追放の嵐は凄まじかった。

 生き残った保守派は、『打倒山本』を合言葉に何かと政策に文句を付けていた。

 勿論、陸海軍の中にも保守派がおり、海軍では定雄の父親の横森よこもり 忠司ただしが有名だ。

 蛙の子は蛙と言うように、定雄も根っからの保守派だった。

小沢「それで、野田君は?」

隼「はい、取り敢えず医務室に。」

小沢「そうか、分かった。」

 小沢は隼にある一言を伝えた。

小沢「これより1週間、ハワイ諸島及びその近海に臨戦体制を厳命いたす!発令は一時間後、望月大佐は臨時に大和指揮権を委譲する!」

隼「はっ、了解致しました!」

 一時間後、小沢長官の名で臨戦体制が厳命された。

 長い1週間が始まった。

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