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第二十四話 憎しみは哀しみへ

 キャシーが海軍基地に潜入した理由、そして拳銃を持っていた理由が分かります。

 1941年12月8日午後4時、案の定出来ていた人垣を掻き分けて、隼とキャシーの2人は司令長官室に入った。

  海軍基地司令長官室

 先程、隼が出ていった時とは異なり、様々な面々が集まっていた。

小沢「全く・・・とんでもない厄介ごとを持ち込んでくれたな。」

隼「も、申し訳ありません。」

 鋭い視線に睨まれながら、隼は謝った。

小沢「まぁ、侵入者は君にはどうにも出来なかっただろうが・・・私に言ってくれても良かったのでは?」

隼「本当に申し訳ありません。」

 こうなったら謝るしか無かった。

小沢「君にはお咎め無しだが・・・こちらの淑女はそうも行かない。」

 小沢長官はキャシーに目をやった。キャシーは睨み返した。

小沢「随分、挑発的だが。望月君、彼女の目的は?」

 訊かれた隼は懐からワルサーPPKを出した。

隼「彼女を捕獲した時、これを・・・」

小沢「ワルサーPPKか。1931年にアメリカ陸軍と警察が採用した拳銃だな。」

キャシー

「私の、父親の形見よ。オザワ。」

 日本語で小沢長官に憎しみの眼差しで、話した。

小沢「ほう、日本語が喋れるとは驚きだ。どこで日本語を?」

キャシー

「父の友達の日本人からよ。2ヵ月前に日本に帰って行ったね!」

 語尾を強調したキャシー。日本人に対して、余り良い印象は持っていないようだ。

小沢「父親の形見と言っていたが、君の父親は?」

キャシー

「死んだわ・・・あんた達日本軍のせいで!」

 遂に話の核心に近付いて来た。

キャシー

「父は、肺に持病が在ったの。昨日手術の予定だったのに、あんた達のせいで手術が出来ずに、容態が変わってそのまま・・・」

 目に涙を浮かべながら、彼女は続けた。

キャシー

「それに、ここは私の故郷なの!土足で踏まれた様なハワイを見て私は決心したの!オザワを殺せば、日本は帰って行く。私の故郷は、元に戻るってね!!」

小沢「・・・君の言いたい事は分かった。」

 小沢長官はゆっくり話し始めた。

小沢「だがな、此方も命懸けで戦っている。喧嘩を売ったのは、紛れも無い君の祖国のアメリカだ。恨むなら、アメリカを恨むべきでは?」

キャシー

「そんな事無い!祖国アメリカは、世界一平和を愛する国なのよ!アメリカが戦争を仕掛ける訳・・・」

小沢「先月、国務長官のハルから我々亜細亜連合に対して受け容れ難い要求をした。アメリカで言えば、連合国軍を解体して、周辺諸国を傀儡国家と認めろ、と言うものだったが、知らないかね?」

キャシー

「そ、そんな内容な筈無い。大統領は、妥協したが受け容れ無かったと言っていたのに・・・」

小沢「アメリカとはそういう国だ。自らのエゴを無理矢理押し付け、従わなければ経済制裁と軍事制裁を行う。エゴの固まりの国だ。」

キャシー

「嘘、そんなの嘘よ・・・」

小沢「自国の事を考えるのは、当たり前の事だ。しかし、他国を巻き込む事は許されざる事だ。」

キャシー

「嫌・・・嫌ー!!」

小沢「・・・彼女を基地の医務室に。」

野田「分かりました。」

 そう言って野田艦長は、キャシーを医務室に連れていった。

小沢「・・・偉そうな事を言ったが、この事は全ての国に当てはまるのだよ。分かるかい、望月大佐?」

隼「自分には、まだ分かりません。」

小沢「それで良い。今は、な。」

 少しずつ近付いている夕暮れ、雲が掛かり夕日の色は、憎しみの様な赤色から、哀しい灰色へと移り変わっていった。

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