第二十三話 衝突
思いがけない出会いが隼に舞い降りました。
どうぞお楽しみください。
1941年12月8日午後、隼は作戦立案の為に旧アメリカ海軍基地の作戦会議室を借りて缶詰めになっていた。
隼は考え事をする時は、いつも1人になる。今回も例外では無かった。
隼(さて、航空兵力は大和だけにするか。それとも赤城も入れるか・・・どうしようか。)
これは非常に重要な事だった。大和だけ持ってきて、足りなくなったら隙ができる。赤城を連れていくと、航空機の心配はないがやられた時に大打撃を食らう。
要するに、名を取るか実を取るかなのだ。
隼(長門は後ろに下がらせるから安心、でも空母は・・・ん?そうだ!)
ある案を思い付いた隼。
隼「空母はこっちに配置すればいい。そうすれば、敵は混乱する筈だ。よし!」
取り敢えず試案が出来たので小沢長官に持っていく事にした。
ハワイが日本軍に占領された事、それは私にとって屈辱以外何でも無い。
―――幼い頃からここは私の遊び場だった。私は昔見付けた秘密の抜け道を使って海軍基地に侵入した。
隼「あ、あれ?ここ何処だっけ・・・もしかして、迷子になった?」
未だに慣れない海軍基地内で迷子が約一名いた。
隼「えぇい!しょうがない。思い切って走るぞ!」
余計迷子になる可能性大なのに、走りだした隼。もう何を言っても止まるまい。
そう、何を言っても・・・
「はぁ、はぁ。もう少しね。」
小さい頃の思い出とは少し違ったが、ようやく目的地に近付いて来た。
「オザワ、覚悟しなさい!」
彼女もまた走りだした。
隼「うぉぉぉぉぉぉぉお!」
機関車顔負けの勢いで走る隼、次の角を曲がろうなどと軽く考えていたせいで、角から飛び出した人物に気付かなかった。
隼「うわぁ!!」
どこからか凄い音がするが、気にしている場合ではない。早くオザワを見付けなければ・・・
「うわぁ!!」
「え?きゃぁ!!」
角から飛び出した人物に衝突してしまった。
隼「いたたたた。一体何が・・・!」
目の前にはロングの金髪の少女が拳銃をこちらに向けていた。
隼(やられる!)
直感した隼は身を翻した。
直後に銃声が鳴り響いた。
「痛っ、何が・・・!」
目の前に日本人が倒れている。
不味い!咄嗟に父親の形見―ワルサーPPK―を向ける。相手も気付いたが、もう遅い。一気に引き金を引いた。
発砲音がして、目を開ける。そこには誰も居なかった。
慌てて探したが、次の瞬間首筋に強烈な痛みが走り、私の意識は遠退いた。
海軍基地司令長官室
小沢は隼の報告を待っていた。勿論、ただ何もせずに待つ訳もなく、山積みの書類の撤去作業を進めていた。
コンコン、とドアが叩かれる。
来たか、と思い返事をする。
小沢「誰だ?」
隼「も、望月です。」
?少し声が震えているような、気のせいかと思い隼を中へ入れる。
小沢「入れ。」
隼「失礼します。はい・・・」
やはりおかしい。妙におどおどしている。
隼「作戦立案できました。あはは・・・」
小沢「お、おぉ。ご苦労。・・・大丈夫か?」
隼「大丈夫ですよ。では・・・」
何かやつれたなと思った小沢だった。
隼「はぁ、どうしようこの子・・・」
目の前には、自分が手刀を入れて気絶させた金髪少女がいる。
隼「取り敢えず、大和に持って行こうか・・・」
足取り重く大和へ向かう隼だったが、後ろから見られているとは考えも付かなかった。
真珠湾 大和タラップ
誰にも見付からない様に大和前まで来れた。
隼「取り敢えず医務室に・・・」
その時、スピーカーから声が流れた。
『望月大佐、至急司令長官室に・・・あっ、長官何をブッ』
一瞬音声が途切れたが直ぐに直った。
小沢『望月君、背中にいる彼女を連れて至急来るように。以上。』
隼「・・・終わった。」
落胆しながら隼は再び司令長官室へ向かった。
隼「何でこんな事に?」
まだ誰にも会っていないが、司令長官室前には人集りが出来ているに違いない。
隼「得体の知れない女の子が、いきなり撃ってきたなんて、説明できるのかな?」
「・・・得体の知れないとは酷いわね。」
隼「いきなり人に銃を向けるのに、狂人と言わなかっただけ、有難いと思って欲しいな。」
突然話し掛けられたにも関わらず、隼は言い返した。
「ふぅん、驚かないんだ?」
隼「海軍基地を出てからずっと起きてたでしょ?」
「ばれていたのね。」
ストンと隼の背中を降りた少女は隼に向き直る。
「私、キャシー。キャシー・マルコニー」
隼「僕は隼。望月隼、宜しく。所で・・・」
キャシー
「何で少女が拳銃を持って海軍基地に入っていたのか、でしょ?」
隼「そう。場合によっては、その場で射殺もあり得るのに、君はあえてやった。その理由は?それに、日本語も上手いけどどうして?」
キャシー
「それは、オザワに会ってから話すわ。」
キャシーが背を背けて言った。
金髪の少女、キャシーの背中はどことなく哀しげに見えた。
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