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第二十話 二進も三進も(にっちもさっちも)

 二進も三進もって算盤用語らしいですね。初めて知りました。

 1941年12月7日午後5時16分、2人の戦姫の戦い(?)はようやく終了しようと・・・

扶桑「はぁ・・・はぁ、あ、貴女もしつこいわね。」

ワスプ

「はぁ・・・はぁ、あ、貴女こそね。」

望月(どうでもいいけれど、早く終わらせてくれ!)

 ・・・なる訳も無く未だに続いていた。

 4時間以上続いているにも係わらず、今だに継続していた。

 しかも、前回も言った様にしょうがない事で言い争っているので、収拾がつかない。

望月「二進も三進も行かない・・・」

 ぼそりと呟くと、

大和「望月さん、二進も三進も行かないってどう言う意味ですか?」

 疑問に思った大和が訊いた。

望月「元々は算盤(そろばん)用語なんですけど、物事が行き詰まって身動きが取れない状況の事を言うんです。」

大和「へぇー・・・」

 納得したらしく大和が頷く。すると、

扶桑「・・・望月さん?」

 笑っている筈なのに怖い。目が笑っていないだけで無く、不気味なオーラが出ている為でもある。

扶桑「″身動きが取れない″とは、つまり私達の喧嘩が長過ぎると?」

望月「い、いや。そう言う事では・・・」

ワスプ

「ふぅん、そこの方はこの喧嘩が″しょうも無い子供の喧嘩″とぐらいしか考えていないわけ?」

 いつの間にか2人が近付いている。思わず下がるが、壁に阻まれて下がれない。

望月「いえ、そうでは無くてですね・・・」

 必死に言い訳を考えていると再び誰かが入って来た。

「邪魔するぞ。おっと、取り込み中だったかな?」

望月「あっ、長官!」

 入って来たのは、連合艦隊司令長官及び真・八八艦隊司令長官を兼任している、小沢治三郎大将が立っていた。

扶桑「お、小沢長官!」

小沢「扶桑、お前らしくも無いな。こんな時間まで言い争いをするなんて・・・」

扶桑「いえ、そんな事では無いのですが・・・」

 しどろもどろになっている扶桑、若干顔が赤くなっているようだ。

小沢「さて・・・」

 それに気付いてか気付かずか、扶桑の横を通り越して、小沢は前に出た。

小沢「エセックス級空母9番艦、ワスプですね?」

ワスプ

「・・・えぇ、そうよ。だから何?貴方も降伏を勧告しに来たの?」

 そう訊かれて小沢は答えた。

小沢「我々と一緒に戦って貰いたい。」


 全員が呆気に取られた。最初に回復したのは大和だった。

大和「あの、長官?それはどう言う意味ですか?」

小沢「そのままだ。一緒に戦って欲しい。他意はないぞ。」

ワスプ

「あ、あはは。な、何それジョークのつもり?あまり面白く無いわよ。」

 そう言っているワスプだが、まだ動揺しているようだ。

小沢「ジョーク?そんな訳はありません。私は真面目に・・・」

ワスプ

「ふざけないで!!」

 ついにワスプが叫んだ。

ワスプ

「一緒に戦って欲しい?私に、合衆国と戦えと仰るの?それなら丁重に・・・」

小沢「戦う相手はアメリカではありません。」

ワスプ

「え・・・?」

 再び呆気に取られる。そのワスプに小沢は1つの書類を渡した。表紙には赤く『軍機』と判が押されていた。

 題名は『Operation Scopion』と書かれていた。

信濃「長官!この作戦は・・・」

 信濃が驚いて叫んだ。英語で書いてあったが、直訳すると『蠍作戦』になる。

小沢「・・・我が国の最高機密の作戦です。参加するかどうかは、貴女がお決めください。」

ワスプ

「・・・・・」

 暫く目を通していたワスプは書類を後ろにいる艦魂に渡し、自分は小沢を見た。

ワスプ

「・・・日本人は、猿真似しか出来ないと本国の国民の大半は考えております。しかし、どうやらそれは嘘の様ですね。」

 後ろの艦魂は驚いている様だ。小さい声で「ワスプさん・・・」と呟いた。

ワスプ

「・・・全員を参加させて頂けますか?」

 そう訊くワスプに小沢は笑顔で答えた。

小沢「お望みならば。」

 それを聞いたワスプは敬礼をした。

ワスプ

「アメリカ合衆国太平洋艦隊ハワイ残存艦隊は、只今を持って大日本帝國海軍に降伏致します。」

小沢「承諾致します。」

 小沢も敬礼で返した。

 西の空に映し出された夕日は、紅く燃え上がる蠍の様な色をしていた。

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