第十一話 水上機母艦の奮闘
急きょ予定を変更しました。次回に前回の予告通りに書きます。
申し訳ありません。
12月7日午前7時53分、ハワイ島〜オアフ島間でも新たな戦いが始まっていた。
ハワイ島〜オアフ島間
船体が大きく揺れ、被雷した事が直ぐに分かった。左舷に3本目、合計5本目だ。
両側に2本ずつ食らっていたが、今の1本で左に傾く。
アメリカ海軍司令部から、『日本軍の潜水艦による攻撃の可能性あり』と通達されていたので、対潜警戒艦隊を結集した。
旗艦は水上機母艦『カーチス』ともう1隻の水上機母艦『タンジール』、そして駆逐艦ファラガット・モナガン・ディル・エイルウィン・ヘンリイ・ラルフタルボット・パーソンの7隻で構成されている。
艦長であるアルフレッド・ディーン中佐は水平線を睨み付けていた。あの向こうに憎き日本軍がいる。ディーン中佐は、何人かの軍人が日本の事を『ジャップ』と呼ばない事に憤りを感じていた。
たかが極東の黄色人種に対して、正式名で呼ぶなど白人として恥ずべき事なのである。
そこで1度、基地部隊の指揮官ファーロング少将に『何故日本の事をジャップと呼ばないのですか?』と訊いた。
するとファーロング少将はこう言った。
『日本を舐めて掛かったら必ず痛い目を見るぞ。』
その言葉の意味が痛い程分かった。
次々と魚雷を投下していく九七艦攻隊は、真・八八艦隊へ帰還途中に偵察機から『ハワイ島〜オアフ島間に小規模の艦隊を発見。水上機母艦2、駆逐艦7の模様。』との報告を聞いた。
その為、攻撃隊はその艦隊への攻撃を仕掛けた。
今自分の隣には、両脇腹から出血していながら立っている少女、カーチスの艦魂『カーチス』がいる。
攻撃を受けながらも、呻き声1つ出さずに艦外を見ていた。5本もの命中があったにもかかわらず、浸水以外損傷は報告されていない。魚雷の威力が弱い様で、上手く行けばこの空襲を乗り切れるかもしれない。
そんな甘い考えは、打ち砕かれた。
レーダー員
「か、艦長!レーダーに反応、重巡クラスの艦艇が4隻此方に向かっています!」
ディーン
「何?!本当か!」
レーダー員
「間違いありません!このままでは敵艦の射程に入ります!」
ディーン
「く、何とかならないのか?!」
自分で言っておきながらディーンは思った。このまま敵機の攻撃を受け続ければ、艦隊は壊滅するかもしれない。
しかし、重巡相手なら互角とは言わずとも何とか戦えるかもしれない。日本軍はレーダーを搭載していないと聞くし、もしかしたら勝つ事も不可能では無いかもしれない。
そう思うと、何とかフォード島に辿り着ける可能性も残されている。目の前の重巡を撃破すれば生き残れる。そう考えて、攻撃開始を命令しようとしたその時、
見張り兵
「ぜ、前方より魚雷!数は、約30!」
ディーン
「何!!総員衝撃に備えろ!」
そう言った瞬間、カーチスの船体は大きく揺れた。
頭痛のする頭を押さえながら立ち上がったディーン中佐が見たのは、約20度にまで傾いた船内だった。
幸か不幸か傾斜はそれで止まっていた。しかし、窓の外を見ると、信じられない物が飛び込んできた。
4隻の重巡が主砲全てを艦隊に向けていた。
投降しろ、さもないと打つとあからさまの脅しだった。
足元をみると、長い金髪が目に入った。すぐ誰か分かった。
ディーン
「カーチス!しっかりしろ!」
しゃがみこんで、カーチスを抱き上げる。艦魂が見える者は艦魂に触れる事が出来るのだ。
カーチス
「艦長、皆は・・・大丈夫ですか?」
ディーンは艦隊を見渡す。幸い沈没艦は無いようだ。
ディーン
「あぁ、全員無事だ。」
すると、外から流暢な英語が聞こえてきた。
『アメリカ艦隊に達する。当海域は大日本帝國が完全に掌握した。これ以上の損害は双方の為にならない。投降を勧告する。速やかに武装解除に応じよ。』
カーチス
「艦長・・・」
ディーン
「あぁ、分かっている。」
そう言うとディーンは艦外マイクにてを伸ばした。
ディーン
「此方は、アメリカ海軍ハワイ守備艦隊付属の第一対潜警戒艦隊、旗艦水上機母艦カーチス。ジュネーブ条約に沿って頂くなら武装解除に応じる。」
相手からも返ってきた。
『此方は大日本帝國海軍連合艦隊直轄艦隊、真・八八艦隊付属の第一水雷戦隊、旗艦重巡洋艦高雄。了承した。武装解除を行って頂きたい。』
ディーン
「感謝する。」
こうして、第一対潜警戒艦隊の戦いは終了した。