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第八話 『オオグマ ヲ カレ』

 大熊作戦、いよいよ開始です。



 1941年12月7日午前6時45分、第一次攻撃隊は一路真珠湾を目指し南下していた。

 先頭を行くのは、淵田美津雄大佐率いる通称『一番槍』である。最高速は九九艦爆より速い九九艦爆二二型であるが、足並みを揃える為に減速して飛行している。

 攻撃開始は7時、少しでも早ければ騙し討ちになる。日本だけでなく、亜細亜各国も非難されてしまう。

 タイミングは重要となる。全ての責任を背負う覚悟をしなければ、勤まらない。だが、淵田はその覚悟を既に持っていた。そう、2年前から・・・



  大和 第一艦橋

小沢「いよいよ始まったな。」

望月「・・・まだ、攻撃中止の電文が来る可能性があります。」

小沢「ほぼ無いな。開始15分前になっても何も寄越さないとなると、交渉は決裂したな。」

 小沢の言う通り、約1時間前アメリカワシントンDCで亜米間の交渉が決裂し、野村駐米大使からその旨が既に伝えられていた。


望月「もう、どうしようも無いのですか?」

小沢「・・・俺には、どうしようも無い。」

 2人は静かにオアフ島を見ていた。


 6時58分作戦開始2分前、高度6000mに第一次攻撃隊の姿はあった。真珠湾には大型艦は居ないはずだった。しかし・・・

2番機『大佐!真珠湾に大型艦、空母と思われます!』

淵田「何!?主力は全部出払ってる筈だぞ!」

 この攻撃隊が見つけた空母こそ、エセックス級空母9番艦『ワスプ』である。機関に異常が見付かったので、出港が遅れたのである。

淵田「・・・2機とも、急降下用意!」

2番機『りょ、了解しました!』

3番機『こちらも了解!』

淵田「続けー!!」

 淵田以下3機は急降下に入った。




   大和 第一艦橋

通信兵「せ、先発隊急降下!」

小沢「なんだと!?」

 通信兵の報告に小沢が怒鳴った。

 宣戦布告承認の暗号電文はまだ届いていない。もし少しでも遅れたら・・・

参謀「今すぐ止めさせろ!」

通信兵「もう、無理です!」

 その時、

望月「・・・必ず、来ます。」

 望月が呟く。その声には自信が溢れていた。




   真珠湾上空

淵田「うぉーー!!」

 高度は既に2000mを切っていた。もう後戻りはできない。

淵田「まだか、まだなのか!!」

 攻撃開始の通信はまだ入らない。




  大和 第一艦橋

 艦橋の中は、喋る者は居なかった。ただ、祈るばかりである。

 そして、運命の7時を時計が刻んだ。

 その刹那、電光が光った。

 望月は通信兵からマイクを掴み取り、言い放った。

望月「全部隊、『オオグマ ヲ カレ』!!!」




   真珠湾上空

淵田「行けーー!!」

 投弾スイッチを押すのと、通信が入ったのは同時だった。

 3発の500㎏爆弾は、吸い込まれる様にワスプの甲板に突き刺さり、炸裂した。

淵田「うりゃ!!」

 高度200mという超低空で操縦桿を引いた。3機とも無事である。

 後ろを見ると、空母が黒煙を上げている。敵機は居ない。

 淵田はキャノピーを開け、通信弾を打った。

淵田「奇襲成功!!」

 黄色い通信弾が花開いた。

 太平洋戦争、開始の瞬間である。

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