第三話 真・八八艦隊〜新たな出会い〜
久しぶりの本編です。
1941年12月1日深夜、真・八八艦隊は横須賀を出撃した第一独立機動艦隊との合流を急いでいた。
小沢「この季節の北太平洋は霧がすごいな。」
望月「え、えぇ。そうですね・・・」
思わずしどろもどろになる隼、これには訳がある。
今から5日前、航空戦艦大和の艦魂と出会い、その後大和の会議室へ連れて行かれそうになり、何故か司令長官室に連れて行かれた時の事だった。
〜5日前〜
望月「ちょ、ちょっと待って。服が伸びる!」
大和「そんな事いいですから、早く来てください。」
隼を引き摺るように引っ張る大和の顔は、満面の笑みだった。
大和「私、嬉しいんです。」
望月「な、何が?」
大和「私達艦魂が見える人が居る事です。」
望月「へ?」
間の抜けた返事をする。
大和「艦魂が見える人、この艦隊に貴方を合わせて3人しかいないんですよ。」
余程嬉しいらしく、隼を引き摺っている事も分からないらしい。
と、その時
???「姉上、どうかいたしたしたか?」
大和「あぁ、武蔵。丁度いい所に。会議室今空いていますか?」
武蔵と呼ばれた少女――無論艦魂だが――は、一言で言えば『侍』である。背中に二本の刀を備えていて、剣豪や剣士といった風貌も持っている。
武蔵「一応空いておりますが・・・その後ろの御人は?」
望月「も、望月隼と言います・・・」
武蔵「ほほぅ、どうやら見える者の様ですな。」
大和「ええ、艦長と司令長官の他にも居たなんて。驚きました。」
どうやら、自分以外の見える人と言うのが、真・八八艦隊司令長官の小沢治三郎大将と、大和艦長の野田馨中将の事らしい。
武蔵「それなら、信濃と越後も呼びましょう。2人は今、小沢殿の部屋に居るはずですから。」
大和「では、私達も行きます。」
望月「えっ!?」
大佐の分際で大将の部屋に?!幾ら何でもそれはヤバイ。断わろう、としたら
大和「勿論、望月さんも来て下さりますよね?では、行きましょう!」
望月「いや、自分はいいって、あー・・・」
見事引き摺られました。
大和 司令長官室
小沢「よし、予定通りだな。おい、信濃。」
信濃「はい、何でしょう?」
大和の髪の色は、日本人特有の黒髪、武蔵の髪の色は茶髪と、比較的日本人に近い髪の色をしている。
信濃も大和と同じ黒髪で姉によく似ているが、彼女は三つ編みで結っているので見分けがつく。
小沢「すまんが、大和達を呼んできてくれ。」
信濃「分かりました。越後、貴方も行きますよ。」
越後「いや、その必要は無いと思うよ?」
越後と呼ばれた少女は、赤の混じった茶髪をしたセミロングの髪をしている。大和級四番艦の越後だ。
信濃「なんでです?」
越後「こっちに来てる。」
その時、
大和「長官、失礼致します。」
武蔵「失礼。」
扉の向こうから大和と武蔵の声がした。
小沢「入っていいぞ。」
そう小沢が言うと、2人は入ってきた。なにかを引き摺って。
小沢「・・・大和、その、後ろで引き摺られているのは?」
大和「望月さんです。艦魂が見えるんです!」
小沢「ほぅ、成る程・・・」
そう言うと望月の傍へ寄った。
望月「お、小沢長官・・・」
立ち上がって敬礼しようとするが、ふらついて上手く立てないようだ。
小沢「だいぶ引き摺られて来たようだな。」
望月「お、恐らく、上甲板からここまで・・・」
小沢「そんなにか。大和、人間はやわなんだから、優しくしなさい。」
大和「は、はい!申し訳ありません!」
威勢よく謝る大和、本当に素直な子らしい。
小沢「望月大佐は確か、副艦長兼戦略参謀長だったな。」
戦略参謀長、真・八八艦隊並びに独立機動艦隊の設立時に作られた役職。通常、連合艦隊の指揮下に無い独立機動艦隊は、その状況に応じて独自に作戦を立案する事になっている。
隼は、呉海軍育成学校・戦略戦術科を首席で卒業している。
望月「えぇ、そうですが・・・」
小沢「・・・12月1日、話がしたい。大和の艦橋トップに来てほしい。」
望月「は、はい!分かりました。」
今度こそ、綺麗な敬礼をした隼だった。
12月1日
大和艦橋トップ
望月(・・・とは言ったものの、12月の北太平洋は寒い。)
厚手のコートと、中にブレザーを二枚着ても寒いと感じる寒さなのに、通常の軍服で凌げる筈は無いので、冬用の軍服を着て小沢長官と一緒に外を見ていた。
少しずつ、霧は薄れ始めていた。
小沢「・・・1つ、聞きたい事がある。」
望月「な、何でしょう?」
全身に力がこもる。寒い筈なのに手汗がでる。
小沢「・・・これから始まる対米戦、勝率何割と思う?」
望月「・・・・・」
彼が、後に『戦術の神』と呼ばれるように為るのは、この時からなのかも知れない。
望月「勝てはしません。しかし、『負けさせは』しません。絶対に。」
その時、不敵にニヤリと笑ったと後に小沢長官は語っている。
次回は、真・八八艦隊の主力艦隊を説明致します。