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お土ケ落ち着けお窒     :約2000文字 :奇

作者: 雉白書屋
掲載日:2026/06/12

 たたたた大変なことが起きた! なんてことだなんてことだこれはもうとんでもないことが起きた! 自分でも信じられない。だが本当に怒ったことだ。怒ってない怒った! 起こった! 落ち着け落ち着け落ち着け。

 ああ、ついさっきの出来事だ。コンビニをアイスに買いに行った返り、「おあ!」だか「うお!」だが、獣の鳴き声のようなものがどこからか聞こえてきたのだ。気になったおれは、なんとはなしにその声のするほうへ歩いていった。

 夜道はひっそりとしていて、他に誰もいなかった! 例の声だけがまた響いてきた! でも室外機の音がしていた! うるさかった!

 いったいなんなんだと思いながら近づいたとき、おれは驚いて息を呑んだ。

 人けのない注射場で男が男に膀胱を咥えていたのだ! あああひどいものだった! 前かがみになった男が、地面に倒れているもう一人を執拗に殴りつけていた! 殴られているほうはすでに相当やられていたらしく、もはや今さら止めても遅いのではないかと思うほどだった。手足はだらりと投げ出され、抵抗する意思はまるで感じられなかった。しかも、ズボンまで脱がされていた。

 なんて残忍な男なんだ。それでも、まさか見なかったことにしてタチ去るわけにもいかず、おれはおそるおそる近づいた。すると、膀胱男が大きく息を吐き、ぬらりと振り返った。街灯の光を受け、その目がぎらりと光って見えた。おれは泡立てて隣の家の塀の陰茎に隠れた。


 だが、砂利を踏む音が近づいてきた。

 ざり、ざりざりざりざりざい。疲れているらしく、足を引きずるような鈍く重たい足取りだった。

 やばいやばいやばい。見られていたのか。やられていたほうは死んだのだろうか。もしおれが見ていたことがばれたら、きっと殴られる。それから財布の中の免許証を奪われ、脅されるのだ。いや、最悪の安倍、殺されるかもしれない。おれは昔から、そんなふうに悪い想像ばかりしてしまうタチなのだ。

 あああ、来るぞ。来る。いや、ただ帰るだけかもしれない。いいや、絶対に見られていた。逃げよう。相手は疲れている。逃げ切れるはずだ。

 そう思い、足にぐっと力を込めた、そのときだった。

 ザッザッザッ! 足音が増えた。そして「んお!」という声が上がった。おそらく、膀胱男の声だ。やられていたほうの男が飛びかかったのだ。

 おれは再び二人へ視線を向けた。そして、信じられないものを見た!


 飛びかかった男は、膀胱男の首に両足を絡め、まるで肩車でもするようにしがみついてたあ。そして両手を相手の口の中へ突っ込み、無理やりこじ開けようとしていたのだ! 膀胱男はその重みに耐えきれず、ぐらりと体を揺らし、地面へ膝をついた。

 すると、その瞬間だった。

 飛びついた男の股間からぬらりと何かが伸びてきた。最初、おれはとんでもないビッグサイズカツかと思った。だが違った! うねうねと動いていたのだ。もちろん、おれのだって多少は動くがそんな動きじゃない。もっとこう、生き物みたいな動きだった。まるでナメクジ、いや、そう、あれだ! よく見ると膀胱がぱんぱんに膨らんでいて、まるで巨大なカタツムリがくっついているみたいだった! しかもそれは脈打つように膨らんだり縮んだりしながら、ずるりずるりと前へ伸びた。そしてそのまま膀胱男の口の中へズプヌププオプと湿った音を立てながら入っていった!

 膀胱男はびくびくと痙攣し、両腕をだらりと垂らした。白目を剥き、背中を反らせ、まるで伝記でも流されているかのように全身を震わせていた。やがて、膀胱ぱんぱん男の両足もだらりと下がった。その身体は糸の切れた操り人形のように力を失い、どさりと後ろに倒れ込んだ。

 しばらくして、膀胱男の震えがぴたりと止まった。

 そしてゆっくりと立ち上がった。それから、まるで何事もなかったかのようにすたすたと歩き始めた。


 そのときだった。視線がぶつかった。

 おれは息を呑み、反射的に走り出した。ああ、全力で夜道を駆け抜けた。そして自宅アパートへ飛び込み、鍵をかけ、息を切らしながら今こうしてパソコンに打ち込んでいるのだ。

 ああ、大体書けたか。書いたな。書いた。よしよしよし。

 しかし、そんなことより警察を呼ぶべきだったのではないか。でも、こうしてキーボードを叩いていると頭の整理がついて、少し落ち着いてきた。五時脱字はしょうがない。頭があああだかえらだ。

 それに、そんなことを気にしている場合じゃないぞ。あれは宇宙生物に違いない。すごい、すごいぞ。

 だが、信じてもらえるだろうか。証拠がない。あの膀胱ぱんぱん男、じゃない。膀胱男、いや暴行男の体内に入っていってしまったのだ。

 でも少なくとも死体が一つあるのだ。説得力はあるはず。いや、でもおれが疑われるかもしれない。いやいや何を考えているんだ。あのコンビニに飛び込むべきだった。なんで自宅に帰ってきたんだ。でもあいつはものすごい速さだった。どちらにせよそんな暇はなかっただろう。


 あれ。じゃあ、なぜおれは無事に帰って来られたんだ?

 走った記憶はあるが……いや、そんなことはどうでもいい。そうだな。通報なんてしなくていいんだ。それよりも次の獲物を探すべきだ。

 そうしよう。明日には卵が孵化し、幼体が生まれる。さっきのように、穴から穴へ移すのだ。

 まずは隣人がいい。今夜はこのまま眠る。一晩経てば、脳を完全にコントロールできる。


 よし、これにて〈了〉

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