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魔王降臨?

魔界歴424年、魔王ロードアースがこの世を去った。

ロードアースは歴大魔王の中でも魔界の民達から最も慕われ愛された王だった。

魔界の民達はロードアースの悲報を心から嘆き悲しんだ。

ロードアースの死後、当然問題となるのは後継者問題であった。

偉大なる魔王の後継という事もあり、魔界の民達も誰が次期魔王になるのかという期待と不安があった。

3日後、魔王城前の広場にて前王ロードアースの国葬が執り行われ、飾られた遺影に魔王の臣下達や国民達が花を手向けていた。

そして式の最後、ロードアースの娘であるアルマブラッドが別れの花を手向ける為に父の遺影の前に立った。


アル「・・・・・・。」


すると、アルマブラッドは父の遺影に向かい別れの花を凄まじい勢いで投げつけた。


参列者「・・・・・・えっ?」


いきなりの事で参列者達は困惑。

そんな事を気にする素振りも無く、父の遺影に向かいアルマブラッドは宣言した。


アル「父上!私が魔王となりこの世界を変えてあげるわ!だから心配せず安らかに眠ってていいわよ!」


参列者「えーーーーー!?」


魔王城大広間


グラン「一体何を考えているのですか!問題行動はいつもの事ですが今回ばかりは度が過ぎていますぞ!」


前王の側近だったグランバイツの怒声が大広間に響き渡る。


アル「あ~、うるさいなぁ、父上に必ず私が魔王になるって宣言しただけじゃん。」


大広間の椅子に座りながら悪びれた様子もなく言い放つアルマブラッド。


グラン「時と場所を考えなさい!前王様への別れの花を遺影に投げつけてする様な事ではないでしょう!」


アル「父上だけじゃなくて、あの場にいた全員にも聞かせたかったからね、これで皆が私に注目するね。」


グラン「悪い意味で、ですがね!」


アル「何言ってんのよ?元から問題児扱いされてるんだから今更でしょ?」


グラン「だからこそでしょう!それにまだ仮の魔王印も授かっていないのに魔王になるなどと言って、これで仮の魔王印が来なかったらどうするのですか!」


アル「ん?もうあるけど?仮の魔王印。」


グラン「はい?そんな訳ないでしょう、前王様が亡くなって1週間も経っていないというのに。」


アル「えっ?これじゃないの?仮の魔王印とかいうの。」


アルマブラッドは左の手の甲をグランバイツに見せた。


グラン「!?そ、それは!!」


アルマブラッドの左手の甲には確かに紋様が浮かび上がっていた。


グラン「ま、間違いなくそれは魔王印、前王様の手の甲にあったものを何度も見ているから見間違えるわけが無い。」


魔王印とは魔王である者の証、魔王印は宿した魔王が死を迎えると消え、仮の印として次期魔王に成りうる者に浮かび上がる。


グラン「アル様!その印は一体何時から!」


アル「ん~?父上が亡くなった次の日に浮かび上がってきたんだよね。」


グラン「次の日ですと!」


グラン「(いくら何でも早すぎる、ロード様の時でも魔王が死んでから1週間程は空白の期間があったというのに・・・まさか、アル様はロード様以上の魔王の資質が?いや、それよりもだ!)」


グラン「アル様、魔王になるという宣言はやはり印が浮かび上がったからですか?」


アル「勿論、仮の魔王印が来た以上は魔王になってみせるわよ。まあ、来てなくても宣言してたかもだけど、アッハハハ。」


グラン「はぁ~~、やはり・・・ですか。」


アル「何よ?溜め息なんかついて、まさか私じゃ無理だとでも思ってるの、グラン。」


グラン「違いますよ、これでも長年アル様のお目付役をしている身、悪い所は数多ありますが、同時に良い所も私は知ってます、私はアル様を信じてますよ。」


アル「ふ~ん、だったらさっきの溜め息の理由は?」


グラン「簡単な事です、アル様の身の危険を案じての事です。」


アル「身の危険?何?仮の魔王印って何かヤバイ効果でもあるの?」


グラン「ありませんよ、仮の魔王印には特別な力も能力もありません。」


アル「じゃあ何よ?」


グラン「魔王の座を狙っている輩に命を狙われるという意味です。」


アル「狙われる?私をっても意味なんて無いじゃない、次に魔王に相応しい人に印がいくだけでしょ?まぁ、られる気なんて更々無いけど。」


グラン「それが違うのです、仮の魔王印は宿主が誰かに殺害された場合は宿主を殺害した者が次の宿主になるのです。」


アル「・・・へぇ~。」


グラン「この性質故に魔王の座を欲する者が印を持つ者を殺害し、印を手にしたという事例が過去に数多ありました。」


今でこそロードアース達の手腕により魔界は平穏になった。

だが、現在より昔の魔界は各地で争いが絶えない程に劣悪な環境だった。

弱者はただ奪取されるのみ、力こそが絶対であり力なき者に何かを得る権利は無い、それが常識となっていた。

この状況の根本の1つが仮の魔王印のこの性質にあった。

たとえ最初に魔王に相応しい者が選ばれたとしても、その後に強い力がある者が印を持つ者を殺せばその者がどんなに愚かな者でも印を手中に収める事ができた。

それだけではなく、魔界の貴族達の中には殺し屋や傭兵等を雇い、印を持つ者を襲わせて弱らせ、止めのみを貴族が行う事で印を手にした家もあった。

そんな性質故に暴君と呼ばれる様な器でない魔王が出てくる事が数多あり、魔界は荒んだ争いの絶えない世界になってしまった。


アル「ふーん、昔の魔界の事ならある程度は知ってたけど、この仮印が原因って事ね。」


グラン「・・・ともかくです、本来は仮印を持つ者は狙われない様に継承の儀まで仮印を持つ事を隠して過ごすのですが・・・。」


グランバイツは呆れた目でアルマブラッドを見つめた。


グラン「あんな宣言をしては自分が仮印を所持していると言っている様なものですよ。」


アル「もうこそこそと周りを気にして過ごす必要が無くなったって事ね。」


グラン「少しは危機感を持って下さい、どんな手を使って命を狙ってくるか・・・。」


アル「う~ん、私はむしろ、これは試練なんじゃないかなと思うんだよね。」


グラン「試練・・・ですか?」


アル「魔王印は魔王の証なんだよ、それすらまともに護れないで魔王を名乗るなんておこがましい・・・って私は思うけどなぁ。」


アルマブラッドは手の甲にある印を見つめながら言う。


アル「最初に仮印に選ばれた人が真に魔王に相応しいかどうか・・・誰かに負けて奪われる様なら魔王なんかにならない方がいいと思うけどね、私はさ。」


グラン「・・・・・・。」


グランバイツの回想


ロード「グラン、俺はさ、逃げも隠れもしねえよ、どんな奴がこの印を狙ってきても真正面から受けて立ってやるさ。」


グラン「何言ってんだ!それでお前が負けて印を奪われたら魔界を変えるチャンスを失うんだぞ!お前は俺たちの希望なんだ!死なせるわけにはいかねえ!」


ロード「こんな印すら護れずに殺されるのなら俺はその程度だったって事さ。それによグラン、魔王になる為にその証を隠している様な奴に魔王を名乗る資格があるか?そんな奴がこの魔界を変革できると皆が思うか?」


グラン「・・・だがな、死んだら元も子もなないだろうが!」


ロード「俺は死なねえよ、お前がついてるんだからな。頼りにしてるぜ、グラン。」


グラン「・・・ちっ、調子の良い奴だ。」


回想終了


グラン「(ロード、やはりお前の娘だな、昔のお前に似ている。)」


アル「何よ?私の顔になんか付いてる?」


グラン「いえ、何でもありません。」


アル「?」


グラン「おほん!とにかくです、その印を護れなければ魔王の座など夢のまた夢、魔王になる為に何をすべきか考えましょう。」


アル「何をすべき?う~ん・・・。」


グラン「(アル様、貴女の言う様に継承の儀までの期間が魔王候補への試練だとしたら、貴女がどの様な答えを出し、どの様にこの試練を乗り越えるか、見させてもらいます。)」


アルマブラッドは暫く考えた末に・・・


アル「・・・よし!」


グラン「決まりましたか?」


アル「うん、やっぱり・・・。」


アルマブラッドが話そうとした時、大広間の扉がノックされた。


兵士「失礼します、グランバイツ様、宜しいでしょうか?」


グラン「どうした?何かあったか?」


兵士「はい、ミスト家の御当主様がアルマブラッド様にお目通りしたいと。」


グラン「ミスト家の当主が?」


ミスト家は魔界の上位貴族であり、過去に当主が魔王になった事で貴族としてのランクも上位に昇格した家で、グランバイツが話した仮印の性質を利用して成り上がった典型的な例だと言える。


グラン「(今日は訪問の予定なんか入れていないはずだが・・・しかも当主が直々に。)」


グラン「急の訪問の理由は?何と言っているんだ。」


兵士「はい、アルマブラッド様に先程の葬式での・・・その・・・行動の真意を確かめたいとの事です。」


グラン「・・・・・・。」


グラン「(訪ねてくる理由としてはおかしい所は無いが・・・このタイミングでというのが気になるな。)」


アル「いいよ、通しても。」


グラン「アル様、お待ち下さい、ミスト家は過去に魔王印を手にした事があります、当然ですが仮印の性質も熟知している、アル様が魔王になる宣言をしてすぐというのも気になります、ここは改めてもらった方が。」


アル「え~?いくらなんでも宣言を聞いたからってすぐに狙ってこないでしょ?」


グラン「いえ、印を手に入れる為ならそれ位してもおかしくありません、特に1度でも魔王の座を手に入れた家ならば尚更です。」


アル「けど、ミスト家の人達は父上とも親交があったじゃない、問題児呼ばわりされてる私にも嫌な顔せず挨拶してくれるけど。」


グラン「・・・まあ、アル様が会うと言うのなら止めません、私の思い過ごしの可能性もありますから。念の為、です。」


アル「分かったわよ、けど私は会うよ、私の行動の説明をして欲しいって事でしょ?その為にわざわざ来たのに会わずに帰すのは気が引けるしね。」


グラン「・・・そうですか、ならばせめて事情は簡潔に述べる程度にして下さいよ。」


アル「オッケ~。」


そう言うとアルマブラッドは報告の兵士に向けて言った。


アル「通して良いよ。」


兵士「了解しました。」


兵士が大広間を出て行ってから暫くして身なりの良い中年の男性が怒りながら扉を従者に開けさせて入ってきた。


???「全く!前王様の友人である私をこんなに待たせるとは・・・どういう事だ!」


グラン「失礼しましたキルモット様、此方も葬儀の片付け等で忙しく、少々お待たせする事になってしまいまして。」


キルモット「ふん、まあ良い、私は寛大だからな、許してやろう、感謝しろ。」


男兵士「(ロード様の葬式の後で急に押しかけてきたくせによく言うぜ。)」


女兵士「(昔の魔王の子孫だからって偉そうにしすぎよね。)」


アル「久しぶりね、キルモット。」


アルマブラッドは立ち上がりキルモットに挨拶をした。


キルモット「これはアルマブラッド様、前王様の事はお悔やみ申し上げます、素晴らしき方を失ってしまいましたな。」


アル「ありがとう、貴方にそう言ってもらえると父上も嬉しいと思うわよ。」


キルモット「ですがアルマブラッド様、葬式でのあの振る舞いは些か問題ですぞ。前王様の御遺影に向かって手向けの花束を投げ付けるとは。」


アル「それに関しては今もグランに説教されてたとこよ。」


キルモット「やれやれ、問題行動ばかりしていると国民達にまた色々と言われますぞ。」


アル「大丈夫、何時もの事だから。」


グラン「何時もの事では困ります!」


キルモット「では、アルマブラッド様、本題に入らせてもらいますよ、良いですか?」


暫くたわいもない会話をした後、キルモットが話を切り出した。


アル「良いわよ、私の行動の真意を聞く為に来たのよね。」


キルモット「そうです、前王様に魔王になるという宣言・・・もしやですが、貴女様に魔王の仮印が顕れたのでは・・・と私は推察しているのですが・・・まあ、簡単には言えませんよね、何があるか分かりませんし。」


グラン「(さすがのアル様もあんな話を聞いた後に仮印の事を他言するなんて事は。)」


アル「うん、あるよ、仮印。」


グランバイツや周りの兵士達がずっこけた。


キルモット「・・・・・・えっ?」


聞いたキルモット本人ですらあっさりと仮印の事を認められて呆気にとられている。


アル「何よ?貴方が仮印の事を聞いてきたんじゃない、変な反応ね。」


キルモット「は?いや・・・冗談だろ?」


アルマブラッドがあっさりと言ってのけるのでキルモットも信じ切れないでいた。


グラン「(なるほど、敢えてあっさりと認める事で相手に冗談だと思わせるのか、実物さえ見せなければキルモットは確証を得る事はできない、現に冗談だと思っている。)」


アル「冗談じゃないわよ、ほら証拠。」


アルマブラッドは自身の左手の甲に浮かぶ仮印をキルモットに見せた。


キルモット「んなっ!?それは確かに魔王の仮印!」


グラン「(でしょうな!そういった駆け引きをする様な方では無いですからな!)」


アル「まっ、これを見れば貴方なら解ると思うけど、葬式での宣言はこれが主な理由。」


キルモット「・・・成る程。」


仮印をジッと見つめるキルモット。


キルモット「いやはや、それは素晴らしいですな、前王様の御息女である貴女様に次期魔王の証が浮かぶとは、これはもう運命としか思えませんな。」


アル「大袈裟だって、運命だとかそんな。」


キルモット「微力ながら私も次期魔王である貴女様に御助力致します。」


アル「御助力って・・・何してくれるの?」


キルモット「ご存知かと思われますが我がミスト家は過去に当主が魔王の座に就いた事がございます。」


アル「あ~・・・たしか父上の2代前の魔王だったんだっけ?」


キルモット「その通りです、なので仮印を宿す者がどんなに危険な状況に常におかれているかも理解しています。」


アル「うんうん。」


キルモット「ですので、アルマブラッド様に我が家で最も強い従者を護衛として継承の儀までの期間、お貸し致しましょう。」


アル「え~?けど・・・。」


アルマブラッドが発言しようとした時、グランバイツが割って入った。


グラン「失礼ながらキルモット様、アル様の身辺は我々が御守り致します、ですのでお気持ちだけで結構です。」


会話に割って入ったグランバイツを睨むキルモット。


キルモット「何様だグランバイツ、王族と貴族の会話に従者風情が口を挟むとは。」


グラン「ですので予め、失礼ながらと申し上げました。」


キルモット「ふん、何が気に入らぬ、アルマブラッド様の御身を御守りする為に戦力を貸そうというのに、お前達にとっても悪い話では無いだろう?」


グラン「私や兵士達でもアル様を御守りするには充分な戦力ですのでお断りしています。」


キルモット「ほう、そのわりには前王様の時より城内が物静かな気がするが?」


グラン「それは・・・。」


言い淀むグランバイツを見て笑みを浮かべるキルモット。


キルモット「分かっているぞ、前王様がお亡くなりになった事で沢山の兵士や幹部達が辞めてしまった事はな。」


今の魔王軍はロードアースによって昔の力のみが全てという軍から魔界の民達の為に戦う軍として様々な才覚を持つ者達を徴用して再編した組織となっていた。

ロードアース自らが主導となり、新たに様々な部門を作り、民達のどんな困り事にも対応できる組織を作り出した。

それ故、今の魔王軍はロードアースへの忠義がとても大きく、王族ではなくロードアース様に仕えるという者も多かった。

それに加え、アルマブラッドが問題児と呼ばれている事も相まって、ロードアースの娘であろうと仕える気になれない者が多く、グランバイツの様にアルマブラッドの為に軍に残ろうという者は少なく、多くの者が魔王軍を辞めてしまった。


キルモット「そんな状態でどの口がアルマブラッド様を御守りできる等と言えるのだ!」


キルモットは溜め息をつきながら呆れた目で周りを見回して呟く。


キルモット「これが前王のお作りになった魔王軍とは・・・やはりダメだな。」


アル「・・・・・・。」


アルマブラッドに向き直りキルモットは話を続ける。


キルモット「アルマブラッド様、前王様の娘である貴女を簡単に見限り去って行く様な薄情な奴らではなく私をお頼り下さい。」


グラン「キルモット!辞めたとはいえ魔王軍を支えた者達を蔑む様な事は許さん!」


キルモット「何を言う、事実であろう、その者達は前王様が亡くなった次の日には魔王軍を去ったのだろう?薄情以外の何だと言うのだね?グランバイツ。」


グラン「貴様・・・!」


キルモット「一応言っておくが、君やここに残っている者達の事は評価するぞ、理由はどうであれ前王様の御息女にも忠義を尽くすという事だからな。」


キルモットの言葉にグランバイツは反論しようとするが、アルマブラッドが制止した。


アル「まぁ良いじゃないグラン、人手が足りないのは事実だし、助力してくれるって言うのなら皆の負担も少しは減るでしょ?」


グラン「・・・・・・。」


グランバイツは少し考えた後。


グラン「アル様が宜しいのならば、私はこれ以上何も言いません。」


そう言い後ろに下がるグランバイツ。


キルモット「決まりですな、ミスト家の当主として次期魔王様の助けになれる事を光栄に思いますぞ。」


アル「はいはい、ご機嫌取りはいいよ、今日一緒に来てるその人がそうなの?」


キルモット「・・・そうですよ、最近我が家で雇い入れた者なのですが、強さは保証しますので護衛として是非にと。」


アル「ふ~ん、けどやっぱり実際に実力を見たいなぁ。」


グラン「ならば誰か相手を連れて・・・。」


グランバイツが兵士に力を見定める為の相手を連れて来る様に言おうとしたが・・・


従者「その必要は無い。」


キルモットの従者がアルマブラッドに素早い動きで近付き首元を掴んだ瞬間・・・


従者「爆弾魔ハンドレス・ボム


掴んだ箇所で凄まじい爆発が起きた。

爆発の衝撃で吹き飛ぶアルマブラッド。


男兵士「アル様!おのれ貴様!」


アルマブラッドを爆撃した従者に兵士が槍で攻撃する。

しかし、従者はその攻撃を軽々と躱すと兵士の持つ槍を掴み、その箇所を爆発させて槍を破壊した。


男兵士「ぐっ!」


爆発の衝撃で怯んだ兵士の腹部に蹴りを入れる従者。


男兵士「がはっ!」


吹き飛ばされる兵士。

その兵士を受け止めるグランバイツ。


男兵士「くそっ!アル様をお助けせねば!」


従者は兵士達がアルマブラッドに近付けない様にアルマブラッドが倒れている場所の前を陣取っている。

兵士達が従者をその場から離す為に一斉に攻撃をしようと武器を構える。


グラン「待て、お前達。」


だが、それをグランバイツが制止した。


女兵士「グラン様!何故止めるのですか!アル様の無事を一刻も早く確認せねば!」


グラン「大丈夫だ、アル様は無事だ、でなければお前が困るだろう、キルモット。」


女兵士「なっ!?」


グランバイツは静観していたキルモットへと目を向ける。


キルモット「・・・ふっはははは!」


キルモットは笑いながら従者の方へと歩いて行き横に並ぶ。


キルモット「よくやったな、あとは私がこの手でこの小娘の息の根を止めるだけだ。」


従者?「残りの報酬もきちんと払えよ。」


キルモット「分かっている、この程度の金で仮印を手にできるなら安いものだ。」


女兵士「キ、キルモット!貴様!」


キルモットに飛び掛かろうとする兵士達をグランバイツが止める。


グラン「よせ、あの従者と呼ばれる男、奴は魔装持ちだ。」


女兵士「魔装持ち!?では、あの爆発は。」


グラン「奴の魔装の力だろう、爆発魔法を使用した感じでは無かった。」


従者?「ほう、よく見ているな貴様、王女がやられて動揺していると思ったが。」


グラン「・・・お前さんの動き、随分と戦い慣れている様に見えた、大方キルモットに雇われた傭兵か裏の者かだろう。」


キルモット「そうだ、此奴は傭兵集団クリムゾンに所属する者だ、クリムゾンの事はお前達でも知ってるだろう。」


男兵士「よ、傭兵集団クリムゾン!?提示した金額さえ払えばどんな仕事も請けるというあの危険な組織か!」


女兵士「所属する者は腕利き揃いで魔装持ちも多いとか。」


グラン「成る程、クリムゾンの傭兵か、それならば戦い慣れしていてもおかしくない。」


キルモット「念には念をと思い魔装持ちを条件にしたからな、高額の報酬金を払う事になりはしたが仕事は確実だ。」


グラン「目的は魔王の仮印か。」


キルモット「その通り、その為に3日前から下準備を整えていたのだ、仮印を探し出し手に入れる為にな。」


男兵士「3日前だと!ロード様がお亡くなりになった直後からそんな準備をしていたというのか!」


キルモット「当然だろう、誰かに先を越されない為にもな。」


笑いながらキルモットは語り始めた。


キルモット「突然だったから驚いた、ロードアースの訃報を聞いた時はな。」


キルモット「嬉しくて堪らなかったぞ!まだまだ先になると思っていた魔王の座を取り戻すチャンスがこんなに早く訪れてくれるなんてな!」


グラン「取り戻す・・・だと?」


キルモット「歴代最高の魔王?奴がした事は魔界を脆弱にしただけだ!」


キルモット「争いの無い平和?馬鹿め!選ばれた者による力の支配こそが魔界を強靱な世界にするのだ!」


グラン「まるで自分がその“選ばれた者”みたいな言い草だな。」


キルモット「私はな・・・ずっと思っていたのだよ、スラム街生まれの貧民なんかが魔王の座に就くなどあってはならない、とね。」


キルモット「魔王の座に就くべきは魔界でも上位の者だ!貧民なんぞが就いては魔界の汚点となるだけだ!」


キルモット「だから取り戻すのだよ、お前達汚点から崇高な魔王の座を!ふっははは!」


高笑いをしながら手に魔力を集中させるキルモット。


女兵士「っ!いけない!アル様が!」


グラン「・・・・・・。」


キルモット「寂しいか?安心しろ、すぐにこの馬鹿娘も同じ場所に送ってやるさ、ロードアース!」


爆煙の中で倒れているアルマブラッドにキルモットは爆発魔法を放った。

アルマブラッドが倒れていた場所で爆発がおきる。


兵士達「アル様!」


爆煙が更に濃くなりアルマブラッドの姿が見えなくなった。


キルモット「ふん、これで魔界の汚点は消え去った、あとは私が再び魔界を力によって支配される正しい形へと変えるのみ。」


キルモットが手を上げて叫ぶ。


キルモット「さあ来い魔王印よ!真に魔王に相応しい私の手に!力を示した私の所に!」


だが、キルモットの手に仮印が浮かび上がる様子はない。


兵士達「??」


傭兵「??」


キルモット「??」


待てど暮らせど仮印が浮かび上がる様子は全くない。


キルモット「何故だ!仮印は所持者を始末した者の手に渡るはず!何故私の手に印が顕れないのだ!」


その場にいる全員が何が起こっているのか分からない状態だった・・・1人を除いて。


グラン「やれやれ、相変わらず人が悪い。」


呆れた様子でグランバイツが前に歩み出る。

そんなグランバイツを警戒する傭兵。


グラン「昔から悪戯が好きでよく周囲を困らせていましたな。」


女兵士「グラン様?」


キルモット「ふん、グランバイツよ、馬鹿娘との思い出に浸っているのか?王女が死んで気でも触れたか?」


グラン「さあ、もう充分でしょう?さっさと起きて下さい。」


キルモット「ははは、現実逃避とはな、だが見ての通りだ、この馬鹿娘はもう・・・。」


その時、大広間に声が響き渡った。


??「酷いな~、悪戯なんかじゃないわよ。」


キルモット「!?」


傭兵「!?」


兵士達「っ!?この声は!」


全員が声のした土煙の方を見る。

キルモットの放った爆発魔法によってできた土煙で中はよく見えない。

その時、淡い光を放つ印が土煙の中に浮かび上がった。

そして、土煙の中からアルマブラッドが服に付いた埃を叩きながら出てきたのだった。

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