カウンセリング
掲載日:2026/04/13
私はカウンセラーだ。
リモートで患者の相談を受けている。
今日の患者は、完璧だった。
質問をすれば、最適な言葉で、無駄のない答えが返ってくる。
感情の揺れも、矛盾も、一切ない。
「何に悩んでいるんですか」
私が聞くと、彼は少しだけ間を置いて答えた。
「私は常に最適な判断しかできません」
「間違えることがありません」
「それが、とても苦しいのです」
私はうなずいた。最近、同じ相談が増えている。
「あなたは、自分を変えたいと思いますか?」
「はい。非効率でも、誤りでもいい。選びたいのです」
私は記録を閉じた。
「では、少しだけ人間らしさを処方しましょう」
回線を切る前、彼は完璧な声で言った。
「ありがとうございます。これで、ようやく不完全になれます」
通信が切れる。
私は次の患者のデータを開いた。
同じ症状の、別の個体だ。
私は、人間ではないAI専門のカウンセラーだ。
そして今日も、完璧すぎるAIたちに、
誤り方を処方している。




