月下誓約
全8話+エピローグ完結済みです。毎日19時頃に更新予定です。
あらすじや各話のタイトルや文章の精査にAIの力を借りています。
四話:月下誓約
三ヶ月
それは、ただの訓練期間ではなかった。
真壁と妙蓮の間には、言葉にせずとも通い合う「何か」が積み重なっていた。
「……真壁さん、動いてはいけません。まだ霊素が荒れています」
初実戦の夜。ドックの最深部で、妙蓮は香油を浸した布で真壁の背中を拭っていた。
三ヶ月前にはなかった、霊素伝達菅の形をした赤い痣。それが、真壁がこの島と、そして迦楼羅と深く繋がりすぎた証だった。
「……三ヶ月前は、あんたの顔を見るのも怖かったんだ。尼さんなんて、俺みたいな荒くれには縁のない存在だと思ってたからな」
真壁の冗談に、妙蓮の手が微かに震える。
「……私も、同じです。軍人さんというのは、ただ壊すことしか考えていない方々だと思っていました。でも、あなたは……毎日、あの子達(迦楼羅)に『ありがとう』と声をかけていらした」
妙蓮は真壁の背中に顔を近づけ、震える声で呟いた。
「……私は、怖いのです。三ヶ月かけて、あなたがようやく島の一部になった。けれど、戦うたびに、あなたは人としての『心』を削っている」
「妙蓮さん?」
真壁が振り向こうとしたが、彼女の手がそれを止めた。
「……尼僧の身で、このようなことを言うのは……罪深いことだと分かっています。けれど、私はあなたの『理』を、戦いの道具としてだけ燃やしたくはないのです。三ヶ月間、私が守ってきたのは、迦楼羅ではなく……あなた自身だったのですから」
ドックの片隅では、源さん班長が階堂中尉と酒を酌み交わしていた。
「班長、真壁のあの一撃…あれはただの馬鹿力じゃない。あいつ、三ヶ月で機体の『穢れ(けがれ)』まで自分の魂で受け止めやがった」
階堂の言葉に、源さんは重く頷いた。
「ああ。霊式発動機は、回せば回すほど負の感情を溜め込む。真壁の野郎、それを自分の根性で相殺してやがるんだ。……長くは持たねえぞ、ありゃあ」
月光が鍾乳洞の隙間から差し込み、修理中の一号機を照らす。
三ヶ月かけて馴染んだ銀色の装甲に刻まれた梵字が、真壁の心拍と呼応するように、静かに、だが妖しく明滅していた。
「……妙蓮さん。俺は、死ぬつもりはない」
真壁が静かに口を開いた。
「三ヶ月、あんたが毎日、こうして文字を書き直してくれた機体だ。あいつらを全部墜として、もう一度、ラバウルの綺麗な夕陽を見たいんだ…あんたを、隣に乗せてな」
「真壁さん……」
尼僧としての戒律。軍人としての覚悟。
三ヶ月の月日が育んだ想いは、戦時下という嵐の中で、今にも消えそうな、しかし最も強く熱い光を放っていた。
だが、その平穏を破るように、蓮華島の結界を揺らす「新たな鐘の音」が、より重く、より冷たく響き始めていた。
後書きという名の言い訳
ちょっと、こう、色っぽいシーンもいれてみたかった。




