黄金覚醒
全8話+エピローグ完結済みです。毎日19時頃に更新予定です。
あらすじや各話のタイトルや文章の精査にAIの力を借りています。
蓮華島の夜明けは遅い
明け方から夕暮れまで、島の中心の霊山より濃霧が発生し太陽光を遮ってしまうので、上空からでも全容を識別する事は難しい。
切り立った断崖に叩きつけられる波濤の音と、どこか遠くで鳴り響く読経の声が、真壁上飛曹の意識を強制的に引きずり出した。
「九十八、九十九、百!」
上半身裸の真壁は、ドック横の砂浜で、素振りをしていた。全身から湯気が立ち上り、昨夜の階堂中尉からの屈辱が筋肉の痛みとなって、彼を突き動かしている。
「真壁さん、そこまでです。次は滝行に移りましょう」
妙蓮の声が響く。彼女は軍服の上から袈裟を羽織り、冷徹なまでの厳格さで真壁の「修験」を管理していた。
蓮華島の中央にそびえる霊山の山腹。冷烈な水に打たれながら、真壁は座禅を組む。
「真壁さん、目を閉じて。機械を動かそうとする『欲』を捨てなさい。あなたは今、この島の霊素の循環、その一部になるのです」
妙蓮の手が、真壁の背中にそっと触れる。その瞬間、氷のような冷水の感覚が消え、真壁の脳裏に「島」の脈動が流れ込んできた。
地下を流れる霊脈、大マニ車の回転、そして隣のドックで静かに佇む『迦楼羅』一号機の鼓動
「……見える。理が、繋がっている……」
真壁が呟いた瞬間、彼の周囲に微かな黄金の燐光が舞った。妙蓮は驚きに目を見開く。それは、理に選ばれた者だけが見せる「覚醒」の兆しだった。
更に三ヶ月が過ぎた。
日々の修験によって、その眼光にはかつての焦燥に代わり、底知れぬ静寂が宿っていた。
「……九万九千九百九十八、九万九千九百九十九……十万!」
ドック横の砂浜。真壁は精神統一を兼ねた素振りを続けていた
「真壁さん、上がってください。霊素の循環が安定してきましたよ」
妙蓮の声が響く。この三ヶ月間、彼女は真壁の食事、座禅、そして機体との同調を片時も離れず見守り続けてきた。
「……三ヶ月か。随分と、妙蓮さんに世話になっちまったな」
「いいえ。あなたは、私の描く梵字を一番正しく燃やせるようになった。……もう、私の手助けなど不要かもしれませんね」
ふと見せた妙蓮の寂しげな微笑。真壁が何かを言いかけたその時、島全体を揺るがす咆哮が響いた。
「――哨戒中の潜水艦より報告! 南西三〇マイル、敵影あり! 艦上戦闘機二、および……未確認機一!」
伝令の叫びが、蓮華島の静寂を切り裂いた。
源さん班長が、煤けた顔でドックから飛び出してくる。
「真壁! 階堂! 敵の潜水空母から発進した『アロンダイト』一機だ。だが護衛がついてやがる。グラマンF4Fワイルドキャットが二機だ。この島の存在が気づかれたのかもしれない」
「チッ、グラマン(F4F)だと? あの鈍亀どもが魔導機の露払いか。皮肉なもんだな」
階堂中尉は悠然と二号機へ歩を進める。彼の迦楼羅は、既に淡い薄紅色の光を全身に纏っていた。
「上飛曹、お前は留守番だ。……と言いたいところだが、護衛付きの魔導機相手に一機では効率が悪い。後ろで震えていろ」
「……誰が留守番ですか」
真壁は滝から立ち上がり、濡れたままの体で一号機のコクピットへ飛び込んだ。
「源さん、回してください!」
「おうよ! 蓄電池全開放! 大マニ車まわせ!」
真壁が独鈷杵型のグリップを握ると、これまでとは違う感覚が奔った。
熱くない。痛くない。ただ、自分の指先が、機体の配管の隅々まで伸びていく。
「霊式発動機、回転数千八百で安定、霊素伝達に異常なし!迦楼羅、起動ッ!」
一号機の梵字が、真壁の咆哮に呼応して「鮮烈な黄金色」に爆ぜた。
ドックの動力隔壁が開ききるのを待ちきらずに二機の迦楼羅が蓮華島の水面へと飛び出した。
水平線の向こうから、あの「教会の鐘の音」が響き渡る。
敵編隊の中心に鎮座するのは、蒸気の翼を広げた魔導の騎士『アロンダイト』その左右を2機のF4Fが固めている
「階堂中尉、グラマン(F4F)が来るぞ!」
「分かっている、真壁、お前はあのアロンダイトを足止めしろ。『今義経』の八艘飛びをお見せしよう」
階堂の二号機が、水面を蹴って蒼空へと跳ねた。空中で三回転し、F4Fの放つブローニング6丁の嵐のような弾幕を紙一重で回避。独鈷杵の石突から放たれた衝撃波がF4Fの風防を叩き割り、墜落しかけている機体を足蹴に跳躍し、残りの敵機へと飛び掛かる
一方、真壁の前には、因縁のアロンダイトが槍を構えて立ち塞がった。
「…理が…見える、見えるぞ!」
真壁は操縦桿を引くのではなく、自らの意識を海面に叩きつけた。
轟音とともに
一号機の足元から巨大な水柱が上がり、それが霊力によって「楯」の形を成した。
「――っ!?」
水柱を突き破り、黄金の光を撒き散らしながら、一号機がアロンダイトの眼前へ肉薄した。
真壁は、全霊素を迦楼羅の主兵装である大独鈷杵の先端に集中させた。
「ラバウルの借りを……今、返すッ!」
真壁の一撃が、アロンダイトの胸部に刻まれたケルト文字の呪文を粉砕した。
理を失った騎士は、錆びついた鐘の音が悲鳴のように響き、真鍮の装甲が砂のように崩れ去った
海面に降り立った二機の迦楼羅。
真壁の肩が激しく上下している。配管の黄金色がゆっくりと収束していく。
階堂は、しばらく無言で一号機を見つめていたが、やがてフッと鼻を鳴らした。
「……フン、不格好な戦い方だ。だが、一機分くらいの働きは認めてやろう、真壁上飛曹」
「……最高の褒め言葉として受け取っておきます、階堂さん」
通信機越しに交わされる、初めての「共闘」の感触。
だが、蓮華島の入り江に佇む二機の背後、ドックの入り口で見守る妙蓮の表情は晴れなかった。
真壁が放った「黄金の理」の輝き
それは美しくも、操縦者の魂を削るほどに強大すぎる力だったからだ。
「真壁さん…あなたは、神仏の域に近づきすぎている……」
妙蓮の呟きは、再び激しくなり始めた潮騒に飲み込まれていった。
後書きという名の言い訳
登場したのは
グラマン社のF4F-4型
主翼が折りたたみになって、機銃が3型の4丁から6丁に増えた型です。
そこは英海軍のマートレットだろ?と思うかもですが、英空母は流石にドイツ相手に手一杯でしょうから不在です。M型潜水艦を改造したアロンダイト専用潜水空母が数隻、実験を兼ねて太平洋で米艦隊と行動している。という設定です。




