南海邂逅
全8話+エピローグ完結済みです。毎日19時頃に更新予定です。
あらすじや各話のタイトルや文章の精査にAIの力を借りています。
昭和十七年、1月。夕暮れのソロモン諸島の水平線は、吸い込まれるような濃い紫色をしていた。
「…異常なし。これより帰投する」
真壁順一上飛曹は、愛機『零式艦上戦闘機』の狭いコクピットの中から、南洋の夕暮れの美しさに感嘆のため息をもらしていた。
「戦争中とは思えないな…」
だが、その平穏は、唐突に響いた「鐘の音」によって引き裂かれた。
ゴーン ゴーン と
戦闘機のエンジン音をかき消すほど澄んだ、教会の礼拝を告げるような鐘の音。
「……なんだ? 幻聴か?」
高度三〇〇〇。周囲に雲はない。だが、右翼側の虚空から、陽炎のような歪みが生じた。
そこから現れたのは、真壁が知る「飛行機」の概念を根底から覆す異形だった。
全体に真鍮のような鈍い光沢を放ち、リベットの代わりに複雑なエッチングが施された重厚な装甲。プロペラはなく、機体後部のノズルからは煤けた黒煙ではなく、白く輝く「蒸気」が噴き出している。
「敵機ッ! どこの国の……!」
真壁は瞬時に操縦桿を倒し、旋回に入った。だが、敵機は信じられない挙動を見せた。
機体がガシャリと音を立てて折れ曲がり、翼が背中に畳まれる。現れたのは、巨大な腕と脚を持つ、金属の騎士だった。
敵機の手には、巨大な騎士の槍を思わせる長銃身の火器が握られていた。
「……馬鹿な、あれで飛んでいるのか!?」
真壁が叫んだ瞬間、敵機の槍の先端から、青白い雷光が放たれた。
「――っ!」
回避が間に合わない。愛機の左翼が、紙細工のように焼き切られた。機体が激しくスピンを始め、真壁の視界が赤く染まっていく。
墜落していく視界の端で、敵機の胸部に浮かび上がる黄金の文字が見えた。
『A-L-O-N-D-I-G-H-T』
古代ケルトの呪文のような、あるいは何かの銘のような光。それが真壁の見た、最後の景色だった。
次に真壁が目を開けたのは、白い天井の下だった。
消毒薬の匂い。遠くで聞こえる波の音。
横須賀海軍病院の特等室
「……気がついたか、真壁上飛曹」
重厚な声に顔を向けると、そこには軍服を乱れなく着こなした男が立っていた。
連合艦隊司令長官、山本五十六。
「長官……自分は、何を……」
「落ち着け。君がラバウル沖で撃墜されてから、既に二週間が経過している。救助されたのは奇跡だ」
山本は窓の外へ視線を逸らしたまま言った。
「――英国が、禁を犯した」
「禁?」
「魔導だ。あれは、科学の皮を被った呪いの塊だよ」
真壁は言葉を失った。荒唐無稽だ。だが、あの金属の騎士を前にした恐怖は、確かに現実だった。
山本は真壁の枕元に、一枚の辞令を置いた。
「真壁 君を、秘匿部隊『蓮華』へ転属させる。そこには、我が国が総力を挙げて建造した、新型の秘匿兵器がある」
「秘匿…兵器…」
「君の任務は、とっとと身体を治して、新型機への機種転換を済まし、英国の騎士達を御仏の力を借りて殲滅することだ」
真壁の胸に、あの「鐘の音」への激しい憤りと、得体の知れない高揚感が突き上げた。
「……了解しました。この命、捧げます」
一週間後。
真壁を乗せた潜水艦は、海図にない孤島、蓮華島へと辿り着いた。
上陸した真壁を待っていたのは、潮風に混じる、線香の香りと機械油の匂い。
「あんたが、空飛ぶ騎士を見たって噂の搭乗員かい?」
現れたのは、鼻に横一文字の傷を持つ、白髪混じりの男だった。部隊長であり整備班長の加納源技術中佐
皆は敬愛を込めて「源さん」と呼んでいるらしい
その背後から、墨色の衣をまとった一人の少女が歩み寄る。
剃髪はしていないが、その立ち居振る舞いは紛れもなく修行を積んだ尼僧のそれだった。
「初めまして、真壁さん、私は妙蓮と申します。あなたの機体の、魂を調える者です、以後お見知り置きを」
彼女が指し示した鍾乳洞の奥。
そこには、銀色に輝く巨大な「仏」が立っていた。
配管の一本一本に梵字が刻まれ、中央に鎮座する巨大なマニ車が、静かに霊気を放っている。
「これが…新型機?」
真壁は、己の運命がこの鉄の御仏と共にあることを確信した。
だが、その第一歩は、想像を絶する過酷な運命の始まりに過ぎなかった。
後書きという名の言い訳
始まりが、どう考えてもマ◯ロス0ですね。
はい、大好きなんで、すんませんです。




