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エーテルの形

翌朝。  

金属を削る甲高い音で目が覚めた。リビングへ行くと、リズがプレートを加工していた。

「何してるんですか?」

「あ、起きたんだおはよう。今ヘビのプレートを自作しようとしてるんだけどなかなかうまくいかないのよ!もうなんでこんなにヘビの装飾って複雑なの……」

 足元には失敗したプレートが散らばっている。俺はそれを拾い上げながら、昨日のシャワーのことを考えていた。あのヘビのような動き。あれは明らかにエネルギーのロスだ。


「リズさん。いいアイデアが思いついたのでそれをためしたいんですけど俺もプレートを設計してもいいですか?」

 俺は作業台の切削機を指差した。

「良いけどあんたプレートの加工できるの?」

「すいません。加工だけしてもらってもいいですか?」

「あんたねぇ...はぁ...いいわやってあげる」

「ありがとうございます!」



「で、あんたは何を試したいの?」

「俺が線を引くので、その通りに削ってください。」

 俺は図面に定規をつかって直線を引いた。  俺の仮説が正しければ昨日水がヘビのようにくねくねしていたのはプレートがヘビの形をしていたからシャワーを浴びるだけでも苦労していたはずだ。それを無くせば直線状に水が出るはずだ。


「こんなただの線でいいの?こんなのただの線だしヘビの精霊でもなんでもないじゃない。こんなので水が出るの?」

「はい。余計な装飾は抵抗になるだけですから」

「まあいいけど絶対に失敗するからね?」

 リズは不満げだったが、器用に線を削ってくれた。 そして横のタンクにセットしてスイッチを入れる。


 ……チョロチョロチョロ。


「は?」


 ノズルから出てきたのは、水ではなかった。  タンクに入れたピンク色の液体エーテルが、そのままぬるりと垂れ落ちてきたのだ。曲がったりはしていないが変換されていない。


「ほーら失敗。言ったでしょ? 精霊の形にしてご機嫌を取らないと、魔法にはならないのよ」


 リズが勝ち誇ったように言う。  俺は顎に手を当てて考え込んだ。  なぜだ? 効率は最高のはずだ。なのに反応しなかった。  ……逆に考えるんだ。なぜ、あの非効率なヘビの絵だと反応したんだ?


 ヘビの絵……くねくねとした曲線。  液体がカーブを曲がる時、遠心力がかかる。  壁に押し付けられる。流れが乱れる。  ……そうか!


「衝突」が変換のキーポイントじゃないのか?


エーテルを水に変えるトリガーは、精霊への祈りじゃない。空気との撹拌だ。ヘビの絵は、カーブで無理やり液体を壁にぶつけることで、偶然にも撹拌を起こしていたんだ。 俺の作った直線は、スムーズすぎて反応が起きずに通り抜けてしまったんじゃないか?


「リズさん、もう一枚お願いします!」

「えー、また?」


 俺は新しい図面を書いた。  今度はただの直線じゃない。直線の溝の中に、無数の点を打った。


「何これ。ブツブツしてて気持ち悪いんだけど」

「これは柱です。溝の中に、微細な柱を林のように残して削ってください」

 そう、剣山だ。  川の中に杭を打てば、水流は激しくぶつかり、白く泡立つ。これなら直線で水が曲がることもないしスピードを殺さずに、液体を粉々に砕いて空気と混ぜるには、この形状がベストだ。

 「えーこれだいぶめんどくさいわねー。まあやってみるけど」  

 リズは文句を言いながらも、その神がかった手先で、高さ数ミリの微細な柱を次々と削り出していく。


「できたわよ。……ほんとにこれで出るの?」


 完成したプレートは、溝の中にトゲトゲが密集していて、見た目は凶悪なおろし金みたいだ。  俺はそれをタンクにセットした。


「理論上は、これでいけるはずです。スイッチオン」


 ズドォォォォン!!


 爆音と共に、リズが悲鳴を上げた。  ノズルから放たれたのは、ピンク色の液体でも、うねるヘビでもない。  真っ白に泡立ち、一直線に収束した「激流のレーザー」だった。


 水流は空気を切り裂いて直進し、的のドラム缶を貫通。さらに後ろの鉄板をへこませて、ようやく霧散した。


「う、嘘でしょ……!? 何これ、私の知ってる水魔法と全然違う!それになにあの威力、プレートが大きいわけでもないし、エーテルの密度も30%よ!?」

「成功ですね」


 仮説通りだ。  ヘビのカーブによる「偶然の衝突」ではなく、計算された柱による「必然の衝突」。 これにより水の変換も効率よくでき、エネルギーも増している。

 リズは呆然と、穴の空いたドラム缶と、手元のヘビのプレートを見比べている。  俺はこの世界に来て初めて、心の底からの達成感を感じていた。  やっぱり効率化は最高だ。こんなに簡単なので良いのか……?

「あ、あんたの設計したプレート割れてるわ。威力は凄いけどプレート側もそれに耐えられなかったのかもしれないわね。」

「そんな……」

今までヘビの形にすることによって変換効率が悪くなりプレートも耐えられていたのか……

「だったら柱の数を減らせば良いんですよ」

「そうなの?やってみるわ」

 リズは新たにプレートをさっきよりも数を減らしプレートを加工した。

「これでできるの?」

「はい。試してみてください」

 リズは壊れたプレートを取り出し、今加工したプレートをセットしスイッチを入れ先程より威力が落ちた水が出た。

「ok 今度は壊れてないわね。」

「そうですね」

これで効率化には成功して、なおかつプレートが壊れる問題を解消出来た。もしかしたらこれって金儲けにも繋げられるんじゃないか?こんなに効率の良いものなんてみんなが欲しがるだろう。

「リズさんこれ売って金儲けって出来ないですかね?」

 それを言った瞬間リズは怒りに満ちた顔になった

「はぁ?あんた死にたいわけ?この国は聖刻ギルドしかプレートの販売はしちゃダメなのよ。販売なんてしたら異端技術者として殺されるわよ?」

「聖刻ギルドってなんですか?」

「昨日プレートに掘られているヘビだったり、ドラゴンが神聖な物って言ったのは覚えるわよね?」

「はい」

「それらは1度滅んだこの世界の救世主として言われていて神聖なものとして信仰されてるのよ。ただの一般人がそれらを売ったりすると汚れるとして販売は聖刻ギルドに独占されていて、国もそれに協力していているのよ。」

「そうなんですか!?」

 なるほどさっきの疑問が晴れた。古代は高度な文明を持っていて、いくら1度滅びたからといって初めてプレートとやエーテルといった存在を知ったようなやつが1日で効率化出来るようなものが何百年と続いているとは思えない。効率化を宗教によって封じていたのか。

 そうなるともしかして俺はとんでもないことをしているんじゃないか?プレートの形を変えるという禁忌を犯してしまったのか?

「え、じゃあ俺のは宗教で禁じられていることをやっちゃったんじゃないですか?とゆうかリズさんもプレート作ってたじゃないですか!それってダメな行為なんじゃないですか?」

「早とちりねー。言ったでしょ「販売」が禁止なんだって。売ったりするのが禁止なだけで個人で作る分には問題ないのよ。私が作ってたのだって仕事のために作ってたのよ」

「そうなんですね……ホッとしました」

 殺されるという言葉に反応しすぎて余計なことまで考えてしまった。個人で作る分には問題ないのか。ただ販売はしちゃダメで作るのはOKなのはどうしてなんだ?普通どっちも禁止するもんじゃないか?

「どうして作るのはOK何ですか?」

「まあプレートの資源が全部ギルドに管理されてるからね。作るのは良いかみたいなノリなんじゃないの?」

資源が管理されているのか...まるで社会主義だな

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