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エーテル

「さ、お風呂湧いたから入ろ入ろ!」  リズに背中を押されて風呂場の扉を開けると、そこには俺の知る風呂場とは似ても似つかない風景が広がっていた。


 バスタブは、巨大なエンジンのシリンダーカバーをひっくり返して作られており、それを無骨なロボットの足が支えている。  そして何と言っても違うのがシャワーだ。ヘッド部分はガソリンスタンドの給油ノズルそのものだし、壁にはファミコンのカセットを挿すようなスロットがついている。  そして、部屋全体がガソリンスタンドのように油臭い。


「じゃあ服脱いで」

 「え、あ、はい……」

 リズはバスタオル一枚を巻いた姿で、仁王立ちして待っている。  俺は中身30歳のおっさんだぞ。めちゃくちゃ目のやり場に困るが、今の俺は8歳のガキだ。意識するほうが不自然だろう。  俺は羞恥心を殺して服を脱ぎ、リズと一緒に湯船に浸かった。


「ふー、やっぱり風呂は生き返るわねー! あんたも気持ちいいでしょ?」

「……はい。ただ、このお湯、少し油臭くないですか? 水面に虹色の膜が浮いてますけど」

「贅沢言わないの。ここはスラムだよ? 純水なんて貴重だからあんまり使えないのよ。これは工場で使われている冷却水を濾過したやつ。微量のエーテルが混じってるから、肌にいいのよ」


 なるほど、この世界の庶民は、工業用水みたいなのを飲んだり浴びたりしてるのか。ただエーテルってなんだ?


「さて、体洗おっか。すごいの見せてあげる」

  リズはいったん湯船を出ると、棚から「60%」と書かれたピンクの液体が入ったボトルと、手のひらサイズの金属のプレートを持ってきた。

  「よーく見てなさい」


 リズは基盤を壁のスロットにセットし、給油ノズルのタンクにボトルを接続した。 すると、プレートの表面がボウッと青白く発光し始める。


「いくわよー、スイッチオン!」


 リズがレバーを引いた瞬間、ノズルの先から液体が噴射された。だが、それは普通のシャワーではなかった。


 ノズルから飛び出した液体は、まるで生きているヘビのように空中でクネクネとのたうち回りながら水が出ている。

「どう? このウォーター・スネークのプレート、高かったんだから! これを使うと純水を使うことができるのよ。まぁ変換されてないエーテルも流れてきちゃうんだけど……ま、そんなことは良いから体洗うわよ。洗ってあげるから」

 俺は浴槽からでて椅子に座る。リズが石鹼で俺の体を洗い始める。水がくねくね動くのですごく洗いずらそうだ。

「どういう仕組みで動いているんですか?」

「よくぞ聞いてくれました!このプレートにエーテルと呼ばれる液体を流し込むことで水を作り出すことが出来るのよ。」

 青く光るプレートには、トグロを巻いたヘビの絵が彫り込まれていた。そして、エーテルがその絵の溝に沿って動き、水に変化し、それをホースでつなぎシャワーで出ている。

「どうしてヘビなんですか? もっと他の形でも良いと思うんですけど」

「いやいやそれじゃ出ないのよ。私もプレートを作ったりするんだけど、エーテルを流してもそのまま出てくるだけ。やっぱり水の精霊はヘビの姿をしているからヘビの形に回路を彫らないと水が出ないみたい」

か?

 精霊?この世界には前の世界にはいないものが存在しているのか?エーテルとかあるし魔法の世界みたいに精霊が存在しているのかもしれないな

「この世界には精霊が存在するんですか?」

「うーん分かんない私は見たことないのよ。エーテルは水、炎、氷、雷に変換できるのよ・水の精霊はヘビ、炎の精霊はドラゴン、氷の精霊はクイーン、雷の精霊は雷獣って言われていてその形にしないとエーテルがほとんど変換できないんだって。ほかの形にしても炎が一瞬ボッて出て終わったりするからダメなのよ。」

 なるほど当たり前のように精霊が存在するわけではなくて、精霊といわれているがプレートの形を伝えるために精霊と言われているのか。

 体がムズムズしてきた 前世のあの感覚に似ている。精霊じゃないと動かないといわれているが必ずその形にする必要はないんじゃないか?水の精霊のヘビの形でも変換しきれていないエーテルが出てきてしまっているから変換効率は良くない。今シャワーはヘビのような動きになっているがそれはヘビというよりもただくねくねしていて、その形にそってエーテルが動くからヘビのような動きになっていて、変換はまた別なんじゃないのか?ドラゴンの形じゃなくても一瞬ではあるが炎が出るって言ってるし必ずその形にしないといけない必要性が感じられないし、とにかくこの変換がちゃんとしきれていないのが気になる。

 つまり、この世界ではまだエーテルの研究が進んでおらずプレートを「動かすための計算式」ではなく、「神様への祈りの絵」のように描いてしまっているように思える。

 そのせいで、こんなに無駄な動きが生まれているんだ。

 俺は目の前でクネクネと非効率に踊る水のヘビを見つめた。

 ……気持ち悪い。

 壁にかかっている絵画が少し傾いているのを見た時のような、どうしようもない不快感を感じた


「さ、洗い終わったし先出てて、服は横に置いてあるからそれ着てね」

 俺はリズに体を拭いてもらい、用意してもらった服を着てリズが出てくるのを待つ

「フーお風呂気持ちよかったー。お、着てくれたんだー!!私の思った通り めっちゃ可愛いー!」

 リズの古着をであろう手が半分隠れるほどの少し大きめの白いシャツに、サスペンダー付きの半ズボンという作業着のような格好だった。可愛いがかなり恥ずかしい

「もー なんでこんな格好なんですか!」

「言ったでしょ 住むなら働いてもらうって。ま、明日は仕事が休みだから自由にしてて良いよ」

 

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