表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネクラ少年とハツラツ少女の異世界滞在記~キャンバス外伝・勇者の章~  作者: ぶーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

第1話 召喚される2人の勇者

「あ~あ。違う世界に生まれ変わったりしねえかな」


俺、蒼井あおい 悠人ゆうとことユウは、通学路の片隅で唐突にそう呟いた。

隣で黒髪ショートをなびかせていた幼馴染の陽向ひなた てる、皆がヒカリと呼ぶ少女は、いつものように呆れた顔で俺を見上げる。


「何よ急に?補習のせいで頭おかしくなった?」


「そりゃあ、なるだろ。毎日補習だぞ。良いよな、成績優秀者は」


俺は高校二年生。勉強もダメ、運動もできない、見た目もイマイチ。目標も夢もない、本当にどうしようもない人間だ。

一方、ヒカリは成績優秀、空手で全国制覇、将来はデザイナー志望で人生を謳歌している。


昔は俺の後ろを付いてきていたのに、今ではすっかり逆だ。俺が彼女の後ろを追っている。この差は一体どこでついたのか。


「いやなら勉強すればいいのに。いつもしないからそうなるの」


ヒカリはお母さんのような口調で説教してくる。俺にとって、ヒカリは家族のような存在であり、こんな俺と接してくれる唯一の存在でもある。


「じゃあヒカリまた明日」

「うんじゃあ勉強がんばってユウ」


いつものように別れようとした、その瞬間――足元の地面が、蛍光灯が爆発したかのように光輝いた。


目を瞑ると、今まで嗅いだことのないお香のような匂いが鼻腔をくすぐる。

重い瞼を開くと、そこは知らない石造りの部屋だった。視界にはキラキラと光るホコリのようなものが舞っている。

そして、周囲には、俺たちが立っている魔法陣の周囲に、怪しげなローブを着た老人が四人――倒れ伏していた。


「え?ここどこ?」

先に目を覚ましたヒカリが、すぐに異常を察して動揺する。俺も何が起きたか分からず、困惑のあまりヒカリを見つめることしかできない。


その時、重厚な扉が勢いよく開いた。魔女のような風貌の老婆が、急いで部屋に入ってくる。


「このバカものが。なんてことをしたんだ」


老婆は倒れている人たちの顔を一人ずつ確認し、怒りを露わにした。

「あれだけ禁止だと言ったのに勝手しおって。死んでどうするんじゃ」


「あのーここはどこなんですか?」ヒカリが尋ねた。


「ここはキャンバスの魔術都市ラギアス。お前たち召喚されてきたのか?その恰好異世界の物か」


老婆はユウとヒカリの足元に目をやった。地面には複雑な紋様が描かれている。


「困ったもんじゃ。勇者は祝福と災いをもたらすというのに。召喚陣には二人分の反応が出た。二人とも勇者ということになるが…」


老婆は深い皺の刻まれた顔をさらに歪め、倒れている者たちを指差した。


「あれは、勇者を召喚するための『にえ』じゃ。お前たちがいるその魔法陣は、彼らの生命力と魔力を根こそぎ吸い上げて完成したものじゃよ」


「な……贄!?」


顔から血の気が引いた。俺が望んだ「違う世界」への転生は、他人の命を代償にした、あまりにも残酷な結果だった。


「わしは、この都市の副学長、フィオナ。貴様らが何者であれ、勇者として召喚されたという事実は変わらん」


フィオナはユウをじろじろ見て鼻を鳴らした。

「お前、ユウといったか。体格は貧弱、覇気もない。どう見ても勇者らしい『祝福』は見えん。何をもって勇者なのか」


異世界に来ても、結局自分は「ダメな人間」扱いか。ユウは深く傷ついた。


次に、フィオナはヒカリを見た。

「対して、この娘…。魔力の波長が異常じゃ。まるで太陽のように、淀みなく力強い。召喚術が乱れていたにもかかわらず、その身に高レベルの『能力』を宿しておるな」


「能力?何ですかそれ?」 ヒカリは戸惑う。


「わからん。魔力が強大すぎて、わしの目では把握できん!しかし、おかしい…ユウ、お前のスキルも、存在しないわけではない。何か引き付けられるものがある…」


フィオナはユウとヒカリを交互に見る。

「…分からん。だが、お主がもう一人の勇者であることは確か。きっと、お主たち二人の『不釣り合いな対比』こそが、この世界が必要とした『勇者』なんじゃろう」


フィオナは急いで世界情勢を伝えた。

「今、キャンバス大陸は魔獣の脅威に晒されておる。勇者とは、その元凶となる魔王を討伐し、世界を救うために召喚される存在じゃ」


「魔王討伐…」ユウは震えた。ゲームや漫画の話だ。運動も勉強もできない自分が、そんな大それたことをできるはずがない。


「俺は…帰りたい。こんな世界で、誰かのために戦うなんて無理だ。俺は、ヒカリみたいに強くない」ユウはうつむいたまま、本音を漏らした。


ヒカリはユウの隣に立ち、ユウの手を強く握った。

「ユウ。私がいるでしょ。私は空手が強いだけじゃない。もし本当にデザイナーになるなら、この世界を、この世界の美しいものを守りたい。ユウは、私に頼って。私が前を歩くから、これからも、私の後ろを付いてきてよ」


ヒカリの真っ直ぐな瞳を見て、ユウは息を呑んだ。そうだ、ヒカリは自分のせいで巻き込まれたんだ。彼女にまでこの危険を押し付けて、自分だけ逃げるなんてできない。


「…分かった。俺はダメな人間だけど、お前の描く『キャンバス(世界)』を守るためなら、頑張れるかもしれない」


「そうじゃ。勇者は祝福と災いをもたらす。お前たちの存在は、魔王側に感知されたはず。魔術都市ラギアスにいるのは危険じゃ。二人とも、今すぐここを出るんじゃ!」


フィオナの合図と共に、二人は、異世界キャンバスでの冒険と、魔王討伐という過酷な運命に立ち向かうために、動き出すのだった。

読んで頂きありがとうございます。

新作勇者の章書いて見ました。

本編の英雄の逆鱗後の空白の1年を描いていきます。

毎週金曜日5時に更新していく予定です。

良かったら読んで下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても面白くて、続きが気になりました! ユウが、フィオナからの言葉で傷つくとこは、特に共感しました。 フィオナのまさに太陽のような性格と、その能力が合っていることも、すごいなと思いました。 ユウにいっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ