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街の図書館

 この日の朝は仕事をがんばった。

 ちがった。この日の朝も、だった。


 目指せスイーツ。お昼からのスイーツを楽しみに、生みの苦しみを味わった。


 一応は物書きの端くれ。創作は、ときとして苦しみまくらねばならない。そしていまこの状態が、まさしくそれである。


 それでも、かならずペンは取るようにしている。結局、一文字も書けないなんていう日もある。だけど、頭をそっちの方に持っていく必要がある。


 書けないときは、資料を探したりまとめたりする。


 残念ながら、今日は書けない日だった。というのも、書きたいシーンの資料が手許にないからである。


 街の図書館に行く必要がある。


 わたしがこの別荘を買い戻した理由の一つに、近くにある街の図書館が大きいからである。


 この辺りは隣国とは湖をはさんだ国境地帯だけれども、昔からその境目がうやむやになっている変わった地域である。というのも、湖を共有している。したがって、どこからがこっちでどこからがあっちと明確に出来ないらしい。


 というわけで、アラニス帝国側の街と湖をはさんだ隣国モリーナ王国側の街は、両国民や商人や旅人などで溢れかえっていて栄えている。他の田舎とは違い、帝都もびっくりな栄えっぷりである。


 それはともかく、仕事をがんばった後カルラと街に向かった。


 荷馬車に二頭の馬を繋げ、のんびり向かう。


 馬、牛、ヤギ、ニワトリ。それぞれ数は多くない。近所に住む農家の人たちに教えてもらったり手伝ってもらいながら育てている。というよりかは、いっしょに生活している。それから、畑で作物も育てているし、森に行けば果実もとれる。湖では魚釣りが出来る。さすがに狩りはまだチャレンジしていないけれど、ゆくゆくはある程度自給自足の生活が出来ればともかんがえている。今年から小麦も育てているので、パンやパスタも賄えるかもしれない。


 二頭の馬は、二頭とも乗馬用である。四、五歳ころから乗馬をやっていて、そこそこ乗れる。ただ、太っていたときにはガマンしていた。グレンデス公爵家でも乗馬用の馬を何頭か所持していたけれど、結婚時のわたしの体型では馬が肢を痛めてしまうのでやめておいた。


 いまは、そういう心配は不要である。乗馬も満喫している。


 街に到着してから、わたしは荷馬車をおりて図書館に向かった。カルラは、買い物である。食べ物や小童用品等買い出しをし、図書館で待ち合わせをする。


 帝都でも図書館に行くことはあった。たいていはグレンデス公爵家の図書室で事足りたが、図書館にしかない資料などもある。


 そういうときは、街のスイーツを買いに行くふりをした。


 普段は自室にこもっているわたしが外出するほどだから、どんなスイーツを買いに行くんだろうとグレンデス公爵家の使用人たちは思っていたかもしれない。


 だけど、それも結婚した当初くらいのことで、じきにだれも関心を示さなくなった。


 とにかく、わたしは嫌な女だった。悪妻だった。だから、だれも関わり合いたくなかったのだ。



 帝都の図書館もびっくりなほどの街の図書館は、今日も来館者が多い。


 ここら近辺の街や村だけでなく、隣国からやって来る読書好きも少なくない。


「こんにちは」

「こんにちは」


 カウンターにいる司書や職員たちだけでなく、図書館の常連たちとも顔見知りである。だから、笑顔で挨拶をし合う。


 お目当ての資料はすぐに見つかった。


 隣国モリーナ王国の王都の図説が見たかった。


 ありがたいことに、アラニス帝国とモリーナ王国は何百年も前から超がつくほど仲がいい。だから、隣国の王都だけでなく、いろいろな地域の地図や文化、宗教等々様々な資料が豊富に出回っている。


 当然、モリーナ王国の図書館にはアラニス帝国の様々な資料が並んでいるらしい。


 胸元に資料を抱えながら小説のコーナーに行ってみた。


 歴史、恋愛、子ども向け、戦記物、冒険物、バイオレンスやハードボイルド系、ミステリー、自伝等々。様々なジャンルが何列もの書架に並んでいる。


 うーん。面白い小説はあるかしら?


 まずは、バイオレンスやハードボイルド系をのぞいてみた。



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