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北方環東記  作者: 守屋三
8/20

初戦闘

勝ち筋が全然見えないため難産でした。

戦闘周りは設定の変更等で将来的に変わる可能性が高いです。

<透香視点>


 私が投げた針を椛が大太刀で弾くのを見る前に、右脚で地面を蹴り、横へと飛ぶ。

 これは予測、というよりはほぼ確信に近かった。


 その予測の正しさを示すように、私のいた位置には先ほどと同様に短剣が突き出されていた。一人の黒天狗が背後から来ていたのだ。


 しかし、避けられたことに安堵する余裕はない。

 飛んだ先に殺気を感じて目を向けると、そこにはもう一人の黒天狗が短剣をこちらに向けて飛んできていた。

 結果として、私からその短剣に向かって飛んでしまったような形だ。


 段々と凶刃の刃がせまってくる。

 横っ飛びになった体はもはや反応することも出来ず、刹那に近づいてくるはずの刃が永遠にも感じる。


 だけど、その刃が私に届くことは無かった。

 黒天狗の横から風刃が飛んできて、黒天狗を吹き飛ばしてしまったのだ。


 咄嗟に風刃の来た方向に顔を向けると、文さんが椛の少し手前で扇を振るった姿が見えた。

 なんと椛が私の針の対処で出来た隙を私を助けるために使ったのだ。

 何故、と感じてもそれを考える暇はない。


「私の目の前で背中を見せるとは余裕じゃないか!」


 椛が文さんに向けて大太刀を振り下ろす。

 それを文さんは見ずに、しかし、大太刀を避けるように宙返りしながら空中へと高く飛び上がったかと思うと、次の瞬間には、私の背後にいる黒天狗に突撃していた。


 吹き飛ぶ黒天狗とその反動を使い、くるっと回転して着地する文さん。

 文さんはちらりとこちらを見ると、こう強い口調で言う。


「黒天狗共は殺す。お前は撹乱と避けに徹しろ」


 返事をする間も無く、文さんは黒天狗に向かっていく。

 そして、竜巻のようにあちこちで暴風が起きる。

 文さんが姿が見えなくなるほど高速で動いているようだ。


 先ほど、黒天狗に何か因縁があるのか、文さんは強い殺気を向けていた。

 変に行動すると私ごとヤられそうなため、言われた通りに行動するしかなさそうだ。


 私はまず地面に御札を貼り、結界を貼る。

 これは、一瞬だけだが強力な結界で、背後から来ていた椛の大太刀を防ぐことも出来るものだ。


「!?固いっ」


「普通の巫女だけど、舐めないでよね」


 もう1枚、御札に霊力を通す。

 これは霊撃という御札で周囲に軽い衝撃波を飛ばすことが出来るものだ。

 ただ、よろけさせる程度で、吹き飛ばすことは出来ないのだけれど・・・

 隙を作ることは出来る。


 この隙で、振り向きざまに御札を3枚投げる。

 これは拘束能力のあるもので、動きを鈍くすることが出来る御札だ。

 軽く貼り付いただけで効果なのだが、千里眼で見られたのか椛は大きく避けていった。


 期せず椛との距離が離れたので、一瞬、文さんと黒天狗の方に目を向ける。

 けれど、やはり何も見えなかった。

 いや、何かが動き、風がそこら中で起こっているのはわかるけど、その動きが早すぎて目が追い付かない。

 天狗の高速戦闘。普通の人間ではそれを見ることは敵わないわ。


 ただ、見えないけれど、予測は出来る。

 先ほどより弱いが、持続時間が数秒ある結界を発動する。


「なに!?」


 それに阻まれる黒天狗が一人。

 こちらを狙っているのはわかっていたけれど、タイミングが分からなかったため、少し長めの結界を張ったのが功を奏したようだ。


 そして、その隙を逃す文さんではない。


「ぐあ!?」


 黒天狗の横っ腹に風弾がぶち当たる。

 圧縮された風弾だったようで、ゴリゴリゴリと黒天狗の体内が色々折れる音が聞こえてきた。


 風弾の勢いそのままに黒天狗が吹き飛んでいき、地面に叩きつけられる。

 そこに文さんが追撃するように上空からかまいたちを放つと、黒天狗は全身をずたずたに切り付けられ、地面に落ちていく。

 そして、血が流れていくようにその存在ごと空気に流されて、そのまま消えていってしまった。


「!?」


 突然の消失に驚く私と文さん。

 しかしそれは、大きな隙となってしまう。


「覚悟!」


 私の左右から椛と黒天狗が近づいてくる。

 それはもう数瞬のことであり、対処する余裕はない。


 私にできるのは・・・


「受けろ!巫女!」


 叫ぶように聞こえたその声の方を見ると、文さんが扇を振りかざすのが見えた。


 その次の瞬間、私は暴風に巻き込まれ、後ろへと吹き飛ばされる。


 敢えて身を任せて吹き飛ばされることで、挟撃を回避することは出来た。

 しかし、空中に吹き飛ばされ、暴風で回転する体は無防備になる。

 ゆえに、黒天狗が私を追撃してくるのは当然の帰結と言える。


 ここで、普通の人間ならば何もできず、そのまま刺されてしまうだろう。


 でも、私は博麗の巫女だ。


 手に持っていた陰陽玉を目の前に出し、霊力を流して大きくする。

 その陰陽玉を打ち出す要領でその逆方向に(黒天狗の方向になるように)自分の体を飛ばす。


 陰陽玉、代々博麗の巫女に受け継がれるもので霊力を持つため、重力を無視してあらゆる方向に飛ばすことが可能なものだ。

 そして、重力を無視するということは、空中で踏み台にすることも出来るということである。


 博麗の巫女は、空を飛ぶ。博麗の巫女の必須技能の一つだ。

(まあ、私は自力で飛び立つことは出来ないけれど・・・)


 黒天狗は、空中で方向を変えて向かってきた私に一瞬驚いたようだけど、すぐに短刀を構え直して、スピードを上げてくる。


 ここは間合いが重要。

 もう避けることが出来ないと確信させる間合いが一番だ。


「っ!」


 その間合いに入った瞬間に、靴裏にくっつけておいた陰陽玉を使って、上に飛ぶ。


「なっ!?」


 自分の直下を通り過ぎていく黒天狗、その顔には2度目の驚愕の顔が浮かんでいた、と思う。


 急に上に飛んだため、体が慣性に引っ張られるが、攻撃の機会は一瞬だ。

 腕を無理やり動かして、自分の両手を黒天狗に向ける。


「ここ!!」


 そして、手の内に溜めていた霊力を勢いよく放つ。


 とある場所では八卦と呼ばれる技。

 これは、妖怪の強靭な肉体に対して有効打として姉さん(先代)が開発した技であり、溜めた力の大きさ、放つときの勢いが大きいほど、その衝撃は大きいものとなる。


「がっ」


 背中にまともに食らった黒天狗は、その勢いのまま地面に叩きつけられた。



「いまいちぱっとしない評価を受けがちな透香だが、あれでも3年、巫女をやっているんだ。弱いはずがないよ」


 誰かのつぶやきが風に吹かれて消えていった。


没というかNGシーン


透香が咄嗟に避けた先に黒天狗が来ていたシーン


段々と凶刃の刃がせまってくる。

横っ飛びになった体はもはや反応することも出来ず、刹那に近づいてくるはずの刃が永遠にも感じる。


次の瞬間、全身が暴風に包まれていた。


「ああああああああ〜~~~~~!?!?!?」


突然なのと、暴風の勢いが強すぎて、前後左右がまったくわからなくなる。

気がつけば目の前に本殿の屋根が見えていた。

暴風で目を回していた私は受け身を取ることも出来ず、そのまま屋根に突っ込んでしまう。

屋根の瓦を砕きながら叩きつけられた私は、そのまま意識を失ってしまった。


「あ…ついいつもの癖で巫女を狙ってしまった…ごめん」


先代と何度も決闘を繰り返した弊害であった(完)

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