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北方環東記  作者: 守屋三
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天狗襲来

主人公の名前を博麗「桃花」→博麗「透香」に変更しました。

 射命丸文、先代巫女の好敵手兼親友であり、妖怪の山に住む天狗である。

 先代巫女の時には神社に頻繁に遊びに…ではなく決闘をしにきていた。

 まあ、返り討ちにあって、そのままお菓子とお茶を食べつつ談笑になってしまうのが定番であったが。

 ちなみに、とある事情で本名ではなくペンネームであるらしい。その理由と本名は一部の天狗と先代しか知らない。


 そんな射命丸文であるが、酷い怪我をしていた。

 全身を斬りつけられたのか、服は至る所が破れており、破れたところから切創がいくつも見える。

 特に目立つのは、左肩近くにあるえぐられた様な刺し傷と、背中に一文字に付けられた大きな刀傷である。今もそこから血が滴り落ちている。

 一目でわかる重傷具合ではある。が、天狗の頑丈な身体故か、傷は塞がってきており、見た目の割に出血の量は少ないようだ。

 しかし、傷の具合と失血したであろう量をみるに、あまり良くない状態であることは察せられた。

 どうしようか悩む透香であったが、そんな時に文の意識が戻る。


「ん…あ…ここは…」


「文さん!」


 そう言いながら、透香は急いで文の近くまで寄っていった。


「その声は…透香か。ということは…神社か。

 ふふ、無意識で来てしまうとは…

 やはりあいつを…ごふ」


 先代巫女を思い出し、苦笑する文であったが、言い切る前に吐血してしまっていた。

 それに焦りが増す透香。


「文さん!?待ってて下さい。今手当を」

「…いや、その余裕はないようだ」

「え?」


 治療を要する状況であるが、異変は待ってくれない。

 文の視線を追うように透香も背後を振り返ると…

 そこには、3匹の天狗が飛んできていた。


 先頭の1匹は狼のような耳と尻尾を持つ白色の短髪の白い上着と裾に赤白の飾りのついた黒いスカートを来た白狼天狗と呼ばれる妖怪。

 残り2匹は烏天狗だろうか?黒髪に黒い上下であまり特徴が見えない。団扇を持っているため、烏であろう予想しかできない。


 そして、先頭に立っていた1匹が持っている刀の切先を文に向けながら、こう話す。


「射命丸文!我らから逃げることなど叶わぬぞ!今ここで貴様を捕らえ、我らが主への手土産としよう!」


 彼女の名は犬走椛。千里先まで見通す程度の能力を持つ。

 山の見回りを主としており、山の外まで出てきてくるのは稀であった。


「ふん、その言い草。すっかりあちら側の言いなりだね。いや、飼い犬と言ったほうがいいか」


「…どうやら死にたいようだな。ここを貴様の墓場としてやろう」


「それは…こっちのセリフだ」


 文は重傷具合からは考えられないような俊敏さで、椛の背後へと周り込みつつ、後ろにいた天狗二人を吹き飛ばす。

 それに椛の意識が背後に向くが、次の瞬間には椛前方上空から文は現れ、扇を薙ぐ


「やった!?」

「甘い!」


 文のフェイントに椛は惑わされず、手にした大太刀を振り、扇ごと文を吹き飛ばす。

 文は、風を使って衝撃を和らげるも、うまく着地出来ずに態勢を崩し、膝を付いてしまう。


「ぐっ、やる」


「我が眼は千里先までの全てを見通す。風を操り偽ろうとも、その姿は丸見えだ」


 椛の能力は多角にわたり、近距離であれば背後を見ることも出来るのであった。


「やっかいな能力だ。隠れようにもその能力ですぐにバレてしまうか」


「降参し、我らに従うならば一考はしてやろう。だか、抗うならそこの巫女もろともだ」


「え!?私も!?」


「・・・そういうことか。最初から巫女が目標か」


「!?」


「流石は射命丸文といったところか。だが、わかったところで貴様の状況は変わらん」


「いや、そうでもないわ」


「きゃっ」


 文がぐっと足に力をこめると、透香の方に飛び、そのまま透香の体を抱きかかえて、大きく横に移動する。


「な、なにするの!?」


「注意不足よ。天狗の早さは見てからでは遅いわ」


 透香が先ほどの場所に目を向けると、先ほど文が吹き飛ばした天狗2匹がそれぞれ透香と文の背後に立っていた。

 その手には液体がぽたぽたと滴る短剣を握って・・・


「ちっ、失敗したか」


「あれは・・・」


「毒とは殺す気満々じゃないか。攫うんじゃなかったのか?」


 天狗たちが持っている短剣の刃に塗布された液体は麻痺毒。

 蛇や蜂などの毒を混合したものであるらしいが、その中でも強力な毒を持ってきており、かすっただけで全身が動かなくなってしまうほどであった。

(まともに刺されてしまうと死んでしまうくらいである)


「ふん、生死は問わんからな。それに巫女は殺すくらいでないと毒が効かないと聞く」


「・・・確かに、あいつは異常なくらいに頑強だったな」


「姉さんを基準にしないで!?」


 霊力とそれに付随する特殊な能力を持っている以外は普通な人間の博麗の巫女であるが、先代は先々代の異様な力強さから霊力の有用性に気付き、その使用用途を拡大していた。

 つまりは、肉体の強化、そして免疫強化である。

 天狗たちが話す毒の効きにくさはこれが理由であった。

 だが、これも強い霊力を以てしてのものなため、平凡な霊力しかない透香は先代ほどの強さはない。

 故に、先ほどの短剣で刺されたら普通に死んでいただろう。


「む・・・はあ、弱いな。貴様」


「やめて。悲しくなるから」


 近づいたことで透香の霊力保護が先代より弱いことに気付いたのだろう。

 文はそのことにがっかりしたのであった。

 勝手に失望されたことに若干いらつく透香であったが、事実であるために段々と悲しくなってくる。


「まあ、どうにかするしかあるまい。遅れるなよ、透香」


「それは無理!でもやるしかないわね」


 普通の巫女である透香が天狗に付いていくのは無理である。が、博麗の巫女は妖怪退治の専門家である。対処する術は持っていた。


 そうして、文は椛へ突撃し、それを援護するように透香が針を投げる。

 こうして、本格的な戦いが始まった。

犬走椛(襲名制:千里先まで見通す程度の能力を持つ白狼天狗)


先々代巫女から今代巫女の透香までの期間は短く、この3代同士の関係性も深い(詳細は後程

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